第3話
大きな扉をヘルジールが開くと、人がたくさんヘルジールを取り囲んだ。
「陛下、後ろのお方がもしかして…」
「成功されたのですね!」
「あぁ、何と神々しい…」
じっくりと品定めをするように集まる視線はアキにとっては不快で、咄嗟にヘルジールの後ろに隠れるように動いた。
「シグ」
「ここに」
シグと呼ばれた男はヘルジールを取り囲む人の群れを掻き分けてヘルジールの目の前に出てきた。
「アキを客室に案内しろ」
「客室、ですか?」
「事情は後で話す」
「分かりました」
ヘルジールはアキをシグに託し、取り囲んでいた人全員を連れて行ってしまった。
アキは黙ってシグの後ろを着いて行った。
客室に通されたアキは部屋の装飾を見て頭が痛くなった。
「こちらが今日のお部屋でございます」
「あ、どうも」
「扉の前におりますので何かあればお申し付けください」
「あ、はい」
頭を下げて出ていくシグを見送り、大きなベッドに身体を投げる。
反発がよく体が2回ほど跳ねた。
「これが、ベッド」
前の世界では床に寝る事が多く、布団も人数分無かった。
長男だったアキはもちろん兄弟に譲ったが、兄弟が譲ってくれることは無かった。
いつでも『長男だから』の一言で我慢を強いられてきたアキにとって、ふかふかのベッドは憧れでもあった。
1人で広々と安心して寝れるベッド、誰も睡眠を邪魔しない、アキは直ぐに眠りに落ちてしまった。
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