第56話 2属性持ちクラス
2属性持ちクラスの生徒たちとの模擬戦。それがどういうことなのかきっと他のみんなも理解しているんだろうな。入学試験の時に見せられた圧倒的な魔法の力を思い出す。
そもそも祝福の時点で2属性以上を持った子供はその時点から最高の環境で魔法を学ぶことができる。それがたとえ僕たちのような村出身の子供でも、国からの支援金によって、すべての費用を出してもらいながら魔法を学べるのは大きな違いだ。
しかもそれが入学してからたったの1月とちょっと後に開催されるということは、完全に2属性持ちクラスの生徒たちの力を周りの人を見せつけるだけの競技会ということは明らかだ。
まだ中学生くらいの年頃でも、みんなそのことはよく分かっているようで、盛り上がっていた空気が一気に静かになってしまった。
「……みなさんの気持ちもよく分かりますが、これは本当にチャンスでもありますからね。競技会にはこの国の騎士団や魔法研究機関の研究者、有名な冒険者、貴族の方々も多くいらっしゃいます。そもそも2属性を持っている生徒は本当にわずかです。たとえ属性魔法をひとつしか使えなかったとしても、十分にチャンスがありますよ」
周りのみんながざわざわとし始める。確かにクレイモア先生が言う通り、そもそも2属性を持った生徒はかなり少ないし、属性をひとつ持っているだけでこの国ではとても重宝される。
それに模擬戦では怪我をする危険なんかもないし、僕たちからしたら負けて当然と思われているわけだし、何のリスクもなく競技会に来ている人たちに自分の力を力を見せるチャンスでもある。
「なあ、どうする? 有名な冒険者の人たちに覚えてもらえれば、この学園を卒業した時にパーティやギルドの誘ってもらえる可能性もあるよな!」
「うん。即戦力として誘われるかは分からないけれど、少なくとも僕たちは新入生だし、顔を覚えてもらって来年以降も見てくれる可能性が高いかもね」
さすがに冒険者の場合にはすぐに誘われるなんてことはないだろうけれど、今後この学園では外部にアピールする機会も多くあるみたいだし、その時に覚えてもらっているだけでだいぶ有利な気がする。そのまま学園を卒業したら有名な冒険者パーティに誘われるということはありそうだ。
「う~ん、モニカはどっちでもいいかな」
モニカはこの学園を卒業した後のことをまだ決めていないから、競技会にそこまで参加したいというわけではないみたいだ。
「僕も見に来る人たちにはあんまり興味はないけれど、2属性持ちクラスの生徒と模擬戦ができる機会なんてないから、ちょっとだけ出てみたいかも」
僕たちのクラスは2属性持ちクラスの教室から離れているし、お昼の時間や実技の授業の教室も違うから全然接点がない。2属性持ちクラスの生徒が普段どんな授業を受けているのかすら僕たちは知らない。
入学試験の時にすごく綺麗な2属性の混成魔法を放ち、入園式の時に挨拶をしていたあの女の子は出てくるのかな? 競技会に参加できる生徒がどう選ばれるのかは分からないけれど、少なくともあの子が戦う模擬戦を見ることができるみたいだから、最悪出られなくてもそれでもいいかな。
「クレイモア先生、競技会の代表者はどのように決めるのですか?」
手を挙げてクレイモア先生へ質問をしたのはエルオくんだった。エルオくんはこの競技会に参加する気満々らしい。
さすがにこういう場だとエルオくんも前よりも丁寧な言葉遣いみたいだ。
「皆さんの中から希望者を募り、希望者が6名以上の場合にはその中から6名を我々教師陣で選出します」
「選出の基準はどのようになっているのですか?」
「基本的には実技の成績となりますが、もちろん普段の授業を受ける姿勢や意欲なども加味されます。こちらにいるクラス全員の中から6名が選出されるので、片方のクラスから6名が選ばれることもありますね」
「……分かりました。ありがとうございます」
どうやら代表者が多かった場合には実技の成績で選ばれるみたいだ。実技の成績なら僕にもチャンスはあるかもしれない。授業もちゃんと眠らずに受けているから、今のところは問題ないと思う。
「代表者の選出は来月の頭に代表希望者を集め、半ば頃に代表者を発表しますので、皆さんそれまでは精一杯頑張ってくださいね。それでは午後の授業を始めます」
クレイモア先生はそう言うと、そのまま午後の実技の授業が始まった。周りの同級生たちの大半は代表者に立候補するか悩んでいるみたいだ。エルオくんはとてもやる気のようで、友達のシュリオくんとガストくんと鍛錬を始めている。
模擬戦は怪我をすることもないし、実技の成績で判断されるのなら僕にもチャンスがあるかもしれない。立候補するだけしてみてもいいかもしれないな。
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