第55話 競技会


「……よし、今日はこのくらいにしておくとしよう」


「「「ありがとうございました!」」」


 夕方くらいになって、今日の鍛錬が終了した。


 あの後も身体能力強化魔法を集中する鍛錬をみんなで行っていた。とはいえ、身体能力強化魔法も属性魔法ほどじゃないけれど、多少の魔力を使用するから、ずっと鍛錬をできることはできない。


 そのため、身体能力強化魔法の訓練は途中で切り上げて、リオネ先生と組手などの鍛錬などへ移行した。


「今日もよく頑張ったな。ゆっくりと道場で休んでいる時間はなさそうだから、こいつは寮へ持っていって食べるといい」


「うわあ~リオネ先生、ありがとう!」


「昨日の甘いお菓子じゃん! 先生、ありがとう!」


「リオネ先生、ありがとうございます!」


 リオネ先生が持ってきてくれたのは包みの中に入った甘いお菓子だった。昨日もリオネ先生から貰ったお菓子だけれど、村では食べたことがないような甘くて美味しいお菓子だった。


「……部屋や道場をあれだけ綺麗にしてくれたからその礼だ。来週は狩りにも連れて行ってやるからな。それまで今週はちゃんと鍛えておくといい」


「「「はい!」」」


 少しだけ顔を赤くしてそっぽを向いてしまうリオネ先生。みんなでお礼を言ったら少し照れているみたいだ。


 本来なら道場や部屋の掃除くらいでこんなにいろいろと教えてくれるリオネ先生から、さらにお菓子をもらうなんてとんでもないことだけれど、ここで断るというのもおかしいよね。


 ここはリオネ先生の厚意に甘えよう。……あんなに甘くて美味しいお菓子をもらうのを断るなんて罰当たりだし。


 そのまま3人で寮へと帰った。明日からはまた学園の授業が始まるけれど、身体能力強化魔法を身体の一部に集中するという新しい武術の可能性も見えた。明日からは今までの型や技に加えて身体能力強化魔法も一緒に鍛えていこう。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「……あ~あ、やっぱり座学の時間は最悪だぜ」


「モニカも嫌……」


 今週の学園の授業が始まって、午前中の座学の授業が終了した。


 相変わらずオズとモニカは座学の授業が苦手らしくて、まだ学園生活が始まって2週目なのに大丈夫なのか少しだけ心配になってくる。昨日のみんなで一緒にリオネ先生の稽古を受けていた時は本当に楽しそうにしていたんだけれどなあ……


「ほら、2人とも。午後は実技の授業だから頑張って! お腹もすいたし食堂に行こうよ」


 ぐったりとしている2人に声を掛ける。ご飯を食べて午後の実技の授業なったら元気が出るといいな。


 オズとモニカと話して、模擬戦をすると魔力をかなり使ってしまうからしばらく模擬戦をせずに各自で鍛えるようにした。僕はともかく、オズとモニカは属性魔法も鍛錬していくから、やることが本当にいっぱいあって大変だ。


 僕は身体能力強化魔法と獅子龍王流の武術の鍛錬だけだから、ある意味やることがはっきりしていていい。今週は教わったばかりの身体能力強化魔法と第参の技である獅龍双蹴を中心に鍛錬していこう。




「ええ~皆さん、午後の実技の授業を始める前に皆さんへお知らせすることがあります」


 食堂でご飯を食べて、実技の授業の演習場へ行くと、最初にクレイモア先生と他の先生の前に集合させられた。いつもの実技の授業の前に何かお知らせがあるみたいだ。


「この学園の定期試験につきましては半年後ですが、来月末にオリエンテーションという言いますか……皆さんの実力を見せる競技会のようなものが開催されます。競技内容はいつも皆さんが行っている模擬戦と同じで2本先取したものが勝者となります。こちらで使用されている模擬戦のフィールドで行われるため、怪我をする心配はありません」


「「「おお~」」」


 クレイモア先生の説目に同級生のみんなから歓声が上がる。よく分からないけれど、学園の外へ自分の実力をアピールするチャンスみたいなのかな?


「へえ~競技会だってよ! 誰かと模擬戦とか楽しみだな!」


「うん! 模擬戦ならモニカも頑張れるよ!」


「今度はモニカとエフォートには負けないからな!」


「僕だって負けないよ!」


 ちょうど今日からしばらく模擬戦を止めて鍛錬をするつもりだったし、ちょうどいいかもしれない。今回は正式な競技会みたいだし、オズとモニカにも負けたくないな。


 ……視線を感じてそっちの方を見てみると、エルオくんたちが僕の方を睨んでいた。きっとこの競技会でリベンジをしようとしているのかもしれない。


「今回の競技会ではこちらの2クラスの代表者6名と2属性持ちのクラスの代表者6名が模擬戦を行うことになっておりますので、皆さんの力をぜひ見せてください。また、2属性持ちクラスの皆さんの実力を見て、いろいろと学んでくださいね」


「「「………………」」」


 盛り上がっていた同級生たちが一気に静まり返った。

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