第51話 属性魔法使いとの戦い方


 そして次の日、改めて獅子龍王流の道場を訪れた。昨日の午前中は街を回って、午後は道場の大掃除をしていた。


 休みの日といってもお金がないと特にすることはないから、今日は朝から道場へお邪魔させてもらっている。来週はリオネ先生が狩りができる場所に連れて行ってくれるから、少しくらいお金が手に入るといいな。


 もちろん日々の鍛錬も大事だけれど、息抜きも大事だ。僕は前世で自由に動けなかったということもあって、日々の生活の全部が楽しいけれど、オズやモニカは学園の午前中の授業が辛そうだし、遊ぶときは遊ばないと駄目だよね。


 それに僕も普段村では食べられない屋台の料理なんかにはとっても興味があるから、やっぱり多少自由にできるお金はほしいよね。


「よく来たな。みんなが綺麗にしたおかげで、昨日は綺麗になった部屋でぐっすりと眠ることができたぞ!」


「「「………………」」」


 というか今更だけれど、よく今まであのものすごく汚かった部屋で寝られたよね。


「それじゃあまずはいつもの型からいくぞ」


「「「はい!」」」




「よし、一旦休憩だ」


「はい」


「ふう~疲れたぜ」


「本当だね~」


 しばらくの間、型と技を繰り返して、いったん休憩となった。


 普段みんなで型や技を繰り返すのと違って、目の前にリオネ先生の綺麗な見本があるから、いつもよりも気が引き締まる感じだ。オズとモニカはだいぶ疲れているようだけれど、リオネ先生は息切れひとつしていない。


 やっぱりこれまでずっと鍛錬を続けていたから、このくらいの鍛錬だとほとんど疲れないんだろうな。僕はというと、今日は見本になるリオネ先生の型と技を意識しながら繰り返していたから、いつもより少しだけ疲れたかもしれない。


「そうだ、エフォート」


「はい!」


「属性魔法の使い手との戦い方について聞いていたな?」


「はい。学園でいろんな属性魔法の人と模擬戦をさせてもらったんですけれど、やっぱり遠距離から属性魔法を撃たれ続けると接近戦に持ち込むのが難しいんです……」


 昨日道場や部屋を掃除しながら、今週の学園での出来事をリオネ先生には話している。


 今週の模擬戦だとエルオくんにはなんとか勝てたけれど、次に戦う時にはもう分からない。一昨日のオズとエルオくんの模擬戦を見ると、僕たちの武術を使った戦い方に対応してきていたし、あの模擬戦を見た他の同級生も参考にしそうだもんね。


 他の人との模擬戦だと属性魔法の発動スピードと魔法自体のスピードがそれほど速くないから、かわしながら接近することができるけれど、オズやモニカやエルオくんを相手にしていると、接近する前にどうしても被弾してしまうんだよね……


「まあそうだろうな。実戦であればナイフなどの投擲術も多少は有効だが、盾などを並べられてはそれも厳しい。基本的には属性魔法を圧倒できる接近戦に持ち込むのが基本と思っていいだろう」


 やはり基本的に武術で戦う場合にはまず自分の戦う距離にまで持っていかないと厳しいようだ。やっぱり基本的に鍛錬を続けて懐に飛び込む速度を上げるくらいしかないのかな。


「近付く際には身体能力強化魔法を足と手へ集中して速度と防御に集中して接近するしかないだろうな。まあ地道に型と技を繰り返して――」


「えっ、ちょっといいですか! 身体能力強化魔法を足と手に集中するってどういうことですか!?」


「んっ? どういうもなにも身体能力強化魔法を足へ集中すればより強化されることは知っているだろう?」


「……いえ、聞いていません」


「初めて知ったよな」


「ゴード師匠から聞いていないよね」


 なんだかいきなり知らない情報が飛び出してきた。普段身体能力強化魔法を使う時には全身に掛けていて、特定の足だけを集中して強化できるというのは聞いたことがない。


「……ゴード殿はそれについてまだ教えていなかったのか。いや、確かゴード殿は道場に入ってすぐに別の場所に移動しなければならなかったのだな。それに村で武術を使うとしても、身体能力強化魔法を使っての組手などはまずしないだろうし、魔物を相手にするのならそれも不要か。なるほど、確かに当然と言えば当然か」


 何やらリオネ先生がひとりで納得しているみたいだけれど、僕たちには何を言っているのかよく分かっていなかった。


「まあ実際に見てもらった方がいいだろうな。……室内ではさすがにまずいから、まずは庭へ出てもらうとしよう」


 まだ分からないけれど、身体能力強化魔法には普段と異なる使い方があるみたいだ。


 僕たちはリオネ先生と一緒にこの道場の庭へと移動した。

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