第43話 早すぎる再戦
「………………」
そしてこのイーサム学園へ入学した次の日、今日も昨日と同じで午前中は座学の時間になる。この学園の教室は決まっているけれど、座席は決まっていなくて、朝この教室に来た順番で座っていく。
今日僕とオズとモニカは真ん中あたりの席に座っているんだけれど、後ろの方からものすごく視線を感じる。視線の相手はすでに分かっていて、朝の授業開始からずっと僕を見ている。……いや、見ているというよりも睨んでいるみたいだ。
視線の相手はエルオくんだ。やっぱり、昨日の模擬戦のことで怒っているのかなあ……
カラーン、カラーン
「今日の午前中の授業はここまでですね。午後の授業は昨日と同じ演習場で行いますので、各自で昼食を取ってから遅れないように集合してください」
「「「はい」」」
鐘の音が鳴って、午前最後の授業の魔法学の先生が授業の終わりを告げて教室を出ていった。
「はあ~やっぱり勉強の時間はつらいぜ……」
「モニカも勉強は嫌い……」
まだたった2日目なのに、オズもモニカも午前の座学の授業についていけていないようだ。僕は前世の知識があってちょっとズルをしているみたいなものだし、あんまり2人に強くは言えないんだよね。
「おい、そこの属性なし!」
「……エルオくん」
学科の授業が終わるとエルオくんが僕の方にやってきて声を掛けてきた。
属性なしとはたぶん僕のことなのだろう。でも昨日は無能と呼ばれていたから、それよりはまだいいことになるのかな?
「エルオ様と呼べと言っているだろうが!」
「これだから平民のやつは分かってないな!」
そして当然のようにエルオくんと一緒にいる2人。
「おい、あいつって昨日エフォートに負けたやつだろ?」
「う、うん。火の魔法を使っていた人だよね……」
「んなっ!? こいつ!」
「あ、あんなのまぐれに決まっているだろ!」
オズがエルオくんの気にしそうなことを言ったため、隣にいた2人が怒る。モニカは戦えば強いんだけれど、普段は怖がりだから大声を出す2人に驚いて僕とオズの後ろに隠れる。
「……いい、お前たちは下がっていてくれ」
「は、はい……」
「わ、分かりました」
その2人をエルオくんが止める。やっぱり昨日のことだよね……
「おい、今日の午後の授業で俺ともう一度戦え!」
「えっ? 実技の授業の模擬戦ってことだよね?」
「そうだ! いいな、午後の授業が始まったらすぐに始めるぞ!」
「あっ、ちょっ……!」
「エ、エルオ様!?」
「ま、待ってくださいよ~!」
エルオくんは言いたいことだけを言って、教室の外へ出ていった。
「な、なんだったんだよ、あいつは……」
「うう……怖かった……」
「たぶん昨日の再戦がしたかったんだと思う。オズもエルオくんたちは貴族だからあんまり怒らすことを言っちゃだめだよ」
昨日エルオくんを怒らせて模擬戦をすることになった僕が言えたことじゃないのかもしれないけれどね……
「げっ、あいつらは貴族だったのかよ! 面倒なやつに絡まれちまったけれど、大丈夫なのか?」
「……うん、たぶん」
正直に言って、僕も昨日負けた腹いせに何かされるのかと思ったけれど、エルオくんはそんなことをしなかった。模擬戦をもう一度したいということだし、貴族の権威を使う気はないのかもしれない。
でも、これは僕の単なる予想だ。それにもしも今日の模擬戦でも僕が勝ってしまったら、今度は本気で怒ってしまうかもしれない。かといって手を抜くのは僕も嫌だし、エルオくんも喜ばないよね。
「おや、今日も模擬戦ですか?」
「はい。よろしくお願いします、クレイモア先生」
「……よろしくお願いします」
昼食を取って、昨日と同じ演習場へ移動して午後の実技の授業が始まった。午後の授業も昨日と同じで、最初はそれぞれの属性魔法の教員に教えてもらうのが基本みたいだけれど、僕とエルオくんたちはクレイモア先生に模擬戦のお願いをしに来た。
エルオくんの友達2人はまた見学するようだ。オズとモニカもこっちの模擬戦を見たかったらしいけれど、最初は先生に教えてもらった方がいいと僕が勧めた。
「……ええ、分かりました。ただし、エルオ君、シュリオ君、ガスト君は今日この模擬戦が終わっても帰っては駄目ですよ。いいですね?」
「ああ、分かっている!」
「「はい」」
「よろしい。それではフィールドの魔道具の準備をしてきますので、準備運動をしながらスタート位置で待っていてくださいね」
……まさか2日連続でエルオくんと模擬戦をすることになるなんて。
昨日は僕が2本連続で取れて勝てたけれど、2本目は結構危なかった。それにもしかしたらエルオくんは昨日の僕との模擬戦を参考に僕との戦い方を考えてきているのかもしれない。
絶対に油断なんかしないぞ!
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