第42話 魔力切れ
「よっしゃあ!」
「むう~」
どうやら1本目はオズの先取で終わったようだ。
僕たちはお互いの手の内を知り尽くしているから、モニカは魔法で、オズは武術とお互いに勝っている部分で勝負しているんだな。僕の場合はそもそも属性魔法が使えないから、いかに2人の懐に入り込んで、武術で勝負するかがカギになりそうだ。
「「「………………」」」
あれ、周りで見ている同級生たちの反応がまったくない。ああ、たぶん2人の模擬戦が凄すぎて声が出なかったんだな。みんなポカンとした表情をしている。
ちらっともうひとつの方の模擬戦を見ていたけれど、向こうの模擬戦だとエルオくんと同じで、スタート位置の白い円から一歩も動かずにお互い魔法を撃ちあうという戦闘を行っていた。
武術による鍛錬を行っていると身体能力強化魔法の効果が上がって、元のスピードの倍以上の速さで動くことができるから、動きながら魔法を撃つさっきの2人の戦法がよさそうに見える。だけど武術をやっていないのなら、白い円から一歩も動かずに魔法を撃つ方がいいのかもしれない。
きっとみんなは武術と属性魔法を合わせた戦闘を見るのは初めてなんだろうな。
「……これは驚きましたね。それでは次になります。開始!」
ビーッ!
「それまで! 今回はモニカさんの1本です」
「やったあ!」
「ちくしょう!」
2回戦目はモニカの勝利で終わった。
1回戦目で接近戦はオズの方が有利だと思ったモニカはこの試合の最初からオズを自分に近付けさせないように徹底して遠距離から魔法攻撃を繰り出した。オズも攻撃魔法でけん制しつつ、モニカの懐になんとか入ろうとしていた。
そしてなんとか懐に入って、1回戦目と同じように獅子龍王流の武術による戦いになったけれど、それまでにモニカがオズにだいぶダメージを与えていたみたいで、すぐにオズの戦闘不能のブザーがなった。
「これで2人とも1本なので、次回に勝利した方の勝ちですね。……ただ、その前に2人とも自身の体調の方を確認してください」
次に勝った方が模擬戦の勝者となるというところで、審判をしているクレイモア先生が一度試合を止めてオズとモニカの体調を確認するように伝えられた。
「……えっと、ちょっと胸が苦しいかな」
「……モニカもちょっと息苦しいかも」
なぜかダメージを受けないはずのフィールドで戦っていたはずの2人が少し息苦しそうにしている。いったいどうしたんだろう?
「やはりですか。その症状は魔力切れになりますね。2人とも短い間隔で魔法を使用し過ぎました。今まで魔力切れの症状が起きたことはありませんでしたか?」
「あっ、そういえば前になったことがあるぜ!」
「モニカもある!」
「やはりそうですか。皆さんも覚えておいてほしいのですが、魔法を短い間隔で使いすぎると魔力切れという症状を引き起こすことになります」
クレイモア先生がオズとモニカだけでなく、フィールドの外にいる他の生徒にも話しかける。
「午前中の授業でも教えましたが、個人の魔力には総量が決まっております。魔力は時間を置くと回復していきますが、魔力が少なくなった状態で魔法を使用すると、連続で運動した時と同じような症状が現れます。それを無視して魔法を使用過ぎると危険ですので、決して無理をしないようにしてください」
魔法を使用し過ぎると魔力切れを起こすことになる。僕も身体能力強化魔法を使い続けた時に何度か経験したことがる。確かに全力疾走をした時のようにとても息苦しくなった。
「このフィールドは怪我をすることはないのですが、魔力切れにはなりますので、少しでも魔力切れの症状が起きた際にはそこで模擬戦を終了してください。なのでオズ君とモニカさんの模擬戦も今日はここまでです」
「ええ~そんなあ! 先生、俺まだいけるよ!」
「クレイモア先生、モニカもまだ大丈夫!」
「明日からも毎日模擬戦はできるので、2人とも焦る必要はありませんよ。本来ならば模擬戦を1試合行っただけで魔力切れを起こすことはないのですが、2人とも同じくらいの力を持っていたので、普通の試合以上に魔法を使用していましたからね」
「う~ん……分かった。モニカ、決着は明日つけるぞ!」
「うん、望むところだよ!」
よかった。オズとモニカは先生の言うことをちゃんと聞いて今日はここまでにするようだ。2人とも負けず嫌いだから、ちょっとだけ心配していたんだ。
そしてそのあとの実技の授業は3人で獅子龍王流の型や技を繰り返したり、的に向かって攻撃をする練習をした。もちろん明日は2人と模擬戦をする約束もしてある。
このイーサム学園に入学してからまだたったの1日目だけれど、この学園がすごいことはよく分かった。怪我をせずに模擬戦ができるだけでもこの学園に入った意味はある気がする。
ここで鍛えれば、僕たちは今まで以上に強くなることができそうだ。明日からも頑張ろう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます