第35話 実技の授業
「それでは算術の授業を終わります。定期的に試験があり、あまり良くない成績だとこの学園を退学させられることもあるので、皆さんちゃんと学んでくださいね。続いて次の授業の講師が来るので、しばらくこのまま待っていなさい」
最初の算術の授業が終わってクレイモア先生は教室を出ていった。どうやら授業ごとに先生が異なるみたいだ。
「また試験なんてあるのかよ……」
「モニカもう無理かも……」
「2人ともまだ大丈夫だよ!」
オズもモニカもまだ1時間目の授業が終わっただけなのに、もう心が折れている……
この学園では定期的に試験があって、あまりにもひどい成績を取った生徒はこの学園を退学させられることになる。とはいえ、よっぽどひどい成績を取らない限りは大丈夫だと聞いている。
でもそれを言ったら僕の実技試験の方が危ないんだよね……この学園の入学試験の時と同じで、教育施設は充実している分、ついてこれない人には結構シビアらしい。
道理で補欠合格の人の大半がこの学園を去ることになるわけだよ。僕も本気で頑張らないといけない。
「はあ……疲れたぜ……」
「最初からこんなに大変なんだね……」
午前中の座学の授業が無事に終わったけれど、すでにオズとモニカは疲れ切っている様子だ。僕は勉強することが結構好きだったけれど、勉強が嫌いな人にとってはやっぱり辛いのかもしれない。
「でもこの学園の食堂は本当にすごいね。朝ご飯とお昼ご飯まで食べられるなんて本当にすごいよ」
「確かにご飯はおいしいぜ。それに量もこんなに食べられるのはすげえよな!」
「村で食べるご飯よりもおいしいね!」
午前の座学の授業が終わると、お昼休憩を挟んでから午後の授業になる。今は食堂でオズとモニカと一緒にお昼ご飯を食べている。お昼ご飯はパンに野菜や燻製肉なんかを挟んだものだ。朝ご飯よりは少し少なくて軽食みたいになっているらしい。
このパンも村で食べるパンよりも上質なパンだし、昨日の夜ご飯や今日の朝ご飯は量も多かった。やっぱりこの学園で出てくるご飯は村のご飯よりも量が多くて栄養がありそうだ。
「それでは午後の実技の授業を始めます」
食堂で昼食を取ってから実技の授業を行うとても広い体育館のような場所へ移動してきた。
「この学園の実技の授業は属性魔法を伸ばしていったり、相手の攻撃からの防御方法を学んだり、魔物や対人戦を想定した模擬戦などを中心に行っていきます」
実技の授業の説明をしてくれているのは担任のクレイモア先生だ。そしてクレイモア先生とは別に他の先生も何人かいる。
「またこちらにはそれぞれの属性魔法の実技担当の教員がおりますので、基本的には同じ属性魔法の教員から学ぶのが良いでしょう」
属性魔法には火、水、風、土、雷の5つの属性があると、ちょうど午前中の魔法学の授業で学んできた。それぞれの属性ごとに担当の教員がいるなんて、本当にすごいな。やっぱりここ名門のイーサム学園はそれだけ教員もいる大きな学園のようだ。
……あれ? でも属性魔法を使えない僕はどうすればいいんだろう?
他のみんなが自分の属性と同じ属性魔法を持った教員の元へ集まっていく。
「エフォート君、エフォート君はいるかな?」
「はい、僕です!」
途方に暮れていると、担任のクレイモア先生が僕の名前を呼んだ。
「君がエフォート君だね。君は属性魔法を持っていないということで合っているかい?」
「はい、僕は基本的な身体能力強化魔法しか使えないです」
「ああ、話は聞いているよ。入学の実技試験を武術による一撃で通過した受験生はここ10年近くいなかったらしいからね」
担任のクレイモア先生は僕の事情についてを知っているらしかった。
でも武術で実技試験を合格したのが10年近くいなかったのは初めて聞いた。獅子龍王流の道場は誰もいなかったし、やっぱり武術はそこまで廃れてしまって、武術での受験生はほとんどいなかったのかもしれない。
「午前中の座学でも察したかもしれないけれど、この学園では基本的には属性魔法を授かった生徒を中心に考えて授業を行っている。だから申し訳ないけれど、この学園には武術を教えられる教員はいないんだよ」
「そうなんですね……」
それについては午前中の座学でも魔法学なんかの授業の際、属性魔法を持った生徒に向けての授業であることは少しだけ理解できた。
さすがにリオネさんみたいな獅子龍王流の武術の使い手はいないだろうなとは思っていたけれど、もしかしたら他の流派の武術を教えてくれる教員がいてくれるのではと、少しだけ期待していたんだけどな。
うちの村には武術を学んでいたゴード師匠がいたけれど、やっぱり他の場所では武術は完全に廃れてしまっているらしい。
「だけどここには的があったり、他にも模擬戦をする設備なんかは数多くあるから、君でも十分に学べることはあると思うよ。教員や同級生たちと模擬戦をすることによってたくさんのことを学べるはずだ」
「分かりました。教えていただきありがとうございます」
武術を教えられる教員がいなかったことは残念だけれど、この街にはリオネさんがいるから大丈夫だ。それに僕はひとりでも十分に鍛錬ができるからね。
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