第32話 寮生活


「おお、すっげ~大きい部屋だぜ!」


「本当だね! それに自分たちの部屋があるなんて本当にすごいね!」


 ゴード師匠と別れて、イーサム学園の寮へ入る手続きをして、寮の部屋へと案内された。ありがたいことに寮は2人部屋で、僕とオズは同じ部屋だった。その辺りは身分や同じ出身地とかを配慮してくれているのかもしれない。


 モニカは僕とオズが同じ部屋で、自分だけが違う部屋だったことにとてもガッカリしていた。そもそもこの学園の寮は男女で別だからね。僕たちは12歳だし、モニカも少し女性らしく成長してきたから、僕たちと一緒の部屋じゃなくて少しだけほっとしている。


「すっげ~! ベッドが2段になっているんだ! エフォート、どっちがいい?」


「僕はどっちでもいいよ。オズが好きな方を選んでよ」


「よっしゃあ、それじゃあ俺は上の段だぜ!」


 そう言いながら、オズは嬉しそうに上のベッドへと上る。オズは大きな部屋と言っていたけれど、それは僕たちの村の基準で、前世の部屋でいうと2人で4~5畳くらいの部屋だった。


 家具は2段ベッドと服を収納するクローゼットくらいしかなかった。それでも村にいた時は自分たちの部屋なんてなかったから、オズがとてもはしゃいでいる気持ちもよく分かる。


 それにこれくらいの広さがあれば、多少身体を動かしても問題はなさそうだ。さすがに両隣にも同じ寮に入った子がいるから、あんまり大きな音は出せないけれどね。


 トイレなんかは同じ階にあるトイレを共用で使って、当然お風呂なんかもなく、基本的には村と同じで桶に汲んだ水で身体を拭くくらいらしい。それでも、学園の授業料やこの寮のお金や食事なんかの費用をすべて出してくれるなんて、この国の教育システムは本当にすごいんだと感心してしまう。


 というのも、この世界には属性魔法という才能みたいなものがあるから、優れた人材を早くに集めることができることは関係しているんだろうな。属性魔法を持っていて、学園を卒業した人はいい仕事にも就けるみたいだしね。


「オズ、そろそろご飯の時間だよ。食堂に行こうか」


「おう。それにしても、3食も食べられるなんて最高だよな!」


「うん! どんなご飯が食べられるのか楽しみだよね!」


 村にいた頃は1日2食の生活で慣れてしまったけれど、この学園では朝昼晩の3食もあるみたいだ。しかもそれが無料で食べられるんだから本当にすごい。どんなご飯が出てくるのか今から楽しみだ。




「うん、すっげ~うまいぜ!」


「本当だ。それに量もとっても多いね」


 寮の食事は朝晩の決まった時間の中、各自で食事を取るみたいだ。お昼は学園の方に食堂があるから、そっちで食べるようになるらしい。寮は男女で分かれているから、ここには男子生徒しかいないけれど、お昼の食堂は男女共用だから、モニカと一緒に食べられるみたいだ。


 寮の食堂には上級生もいるみたいで、大勢の生徒がいた。この学園の制服のローブにそれぞれ色が付いているから、それで学年を区別できるらしい。


 寮の食事は村で出る食事よりもとても豪華で量も多かった。村では貴重で、お祝いの時にしか食べることができない香辛料がふんだんに使われていた。……それでも僕はお母さんが作ってくれた料理の方がおいしいと思うけれどね。




 食事を終えて寮の部屋に戻ってきた。


「よし、それじゃあ食後の鍛錬をしようかな」


「……エフォート、明日からもう授業が始まるんだし、今日は早く寝た方がいいんじゃないのか?」


 オズの言う通り、早くも明日からはこの学園での授業が始まる。そのためにも早めに身体を休めておいた方がいいのも事実だ。


「うん、そうだね。だから今日は早めに切り上げるつもりだよ」


「……本当に昔からエフォートは変わらないよな。昼にあれだけ動いたのに疲れてないのか?」


「さすがに今日は新しい技を習ったし、さすがに疲れたよ。でも寮の手続きをしたり、ご飯を食べている間にもう疲れは取れたかな」


「本当にタフだよなあ。……よし、俺も付き合うぜ! 世界最強になるって父ちゃんと約束したし、エフォートにも負けないからな!」


「望むところだよ! ……でも、隣の部屋の迷惑にならないように静かにやろうね」


「お、おう……そうだったな」


 村ならそれぞれの家が結構離れているからよかったけれど、この部屋のすぐ隣には他の生徒のいる部屋がある。お隣さんの部屋には迷惑を掛けないようにしないといけない。


 そのあとはオズと一緒に獅子龍王流の型を繰り返して、静かに鍛錬をして、いつもより早めに就寝した。


 この部屋の床はあまり大きな音が出なかったから、獅子龍王流の型を繰り返す分には問題なさそうだ。ただ、激しい踏み込みを必要とする技なんかはこの部屋で鍛錬をすることは難しい。


 それに今日教えてもらった獅龍双蹴の技は結構なスペースを必要とするから、外じゃないとできないな。う~ん、どこかで鍛錬できる場所があればいいんだけれど。

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