第28話 補欠合格
「補欠合格?」
もしかして、このイーサム学園の入学試験に落ちた僕にもまだチャンスはあったりするの?
新たに貼り出された紙の前には大勢の不合格だった人が集まっていて、僕の身長ではその番号を見ることができなかった。
「おお、エフォートの番号があったぞ!」
「本当!?」
身長の高いゴード師匠がその紙に書かれていた僕の番号を見つけてくれた。
「ほら、自分の目で見てみろ!」
「あった、僕の番号があった!」
ゴード師匠に肩車をしてもらって、ようやく貼り出されれていた補欠合格の番号を見ることができた。
確かに10個ほどしかない補欠合格者の番号の中に僕の番号があった。
「やったぜ、エフォート!」
「エフォート、よかった!」
「うん、やったよ。オズ、モニカ!」
ゴード師匠の肩車から降ろしてもらって、オズとモニカと抱き合った。僕の番号があったのがよっぽど嬉しかったのか、モニカはまた泣いてしまっている。
「……でもゴード師匠、補欠合格って何かな?」
「……俺にも分からん。この学園の人に聞いてみるか」
補欠合格でも合格は合格だと思って喜んでいたけれど、この学園の補欠合格って何なんだろう……
もしかしたら、イーサム学園に入れるけれど、授業料は自分たちで払えとか言われるわけじゃないよね? もしそうだとしたら、村にはそんな余裕があるわけないから、不合格と一緒なんだけれど……
「皆さま、まずは合格おめでとうございます」
オズとモニカとゴード師匠と一緒に合格の手続きをする場所へやってきた。そこにいた職員さんにオズとモニカの合格と僕の補欠合格を伝えた。
「エフォート様ですね。こちらの学園での補欠合格につきましては一般の合格者と同様に扱われます。もちろん学園での費用は他の合格者と同様に国の援助によって支払われますので、ご安心ください」
「本当ですか!」
よかった、それなら僕もオズやモニカと一緒にこの学園に入ることができる! あれっ、でもそれならなんで補欠合格なんてあるんだ? 合格者が辞退した時の人数を補充するために補欠合格者がいるわけでもないみたいだし……
「……ですが、こちらの学園での補欠合格者にはこの学園への入学を辞退することを勧めているのです」
「えっ!? どうしてですか?」
「実はこちらの学園での補欠合格者は合格者の下から数えて10番以内の者に通知がされるのです。こちらのイーサム学園はこの辺りではかなりレベルの高い学園となっております。そのため、ギリギリの合格者の大半はこの学園のカリキュラムについていけず学園を去ることになります。事前に補欠合格として、自らの実力を知らせることで、ご自身での辞退を進めさせていただいております」
「………………」
なかなか厳しい学園みたいだ。だけどある意味ではこの補欠合格は受験者への親切心なのかもしれない。きっとこの学園の授業についていくことができずに中退する人も多くいるから、事前に自分のレベルを教えてくれているのだ。
そう考えると、実技試験の時に試験が終わった後に2属性持ちの受験生の試験を見せてもらえたことにも納得がいく。あれだけの凄い魔法を見て、自信を失わない受験生なんてほとんどいなそうだからね。
「だってよ、どうするエフォ坊?」
ゴード師匠がそう聞いてくるけれど、僕の答えはもう決まっている。そもそも僕には他の学園に行くなんて選択肢はない。この辺りで属性魔法を持たずに受験することができる学園自体がここしかないもんね。オズとモニカと一緒にこの学園へ入れるのなら、補欠合格だって全然構わない。
たとえ今の僕の実力がこの学園に見合わなくても、これから頑張ってこの学園に見合うくらい強くなればいいんだ!
「いえ、辞退はしません。僕もこの学園に入る手続きをお願いします」
「手続きは明日まで大丈夫ですので、一度ゆっくりと考えてみてはいかがでしょうか?」
「その必要はないので大丈夫です!」
僕には悩む余地はない。そんな時間があるなら、その時間を使ってもっと鍛錬していたい。
「……そうですね、お友達2人と一緒ということであれば、お互いに励ましあいながら頑張れるかもしれません。承知しました、このままオズ様とモニカ様とご一緒に手続きを進めさせていただきます。もちろん入学の際には補欠合格であることは他の者には知らされませんのでご安心ください」
「はい、よろしくお願いします!」
よかった、どうやら補欠合格でもオズとモニカと一緒にこの学園へ入ることができるみたいだ。
とはいえ、素直に喜ぶこともできない。学科試験は手ごたえがあったのに、ギリギリの合格だったということは、やっぱり僕の実技試験はまだまだだったみたいだ。
ただでさえ僕は属性魔法を使うことができない。この学園に入る人は属性魔法を使えるのが普通みたいだし、僕も他の人に負けないくらい頑張らないといけないな。
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