第22話 混成魔法


「以上で入学試験を終了します。試験の結果は明後日の朝この学園の掲示板にて発表するので、各自で確認するように」


 この場にいた全員の実技試験が終了した。この場にいた全員の実技試験を見たけれど、オズとモニカの魔法に敵うような魔法を撃った者は一人もいなかった。これなら筆記試験でよっぽど酷くなければ、2人は合格できそうな気がする。


 入学試験はこれで終了し、試験の結果は明後日にこの学園の掲示板に番号が張り出されるらしい。


「それではこれで解散となりますが、少し時間がありますね。これから2属性の魔法適性を持った受験生による実技試験が開始されます。見学をしたい方はこちらに集まってください」


「2属性持ちだってよ、どうする?」


「モニカは見てみたい!」


「うん、僕も見てみたいな」


 僕たちの入学試験は無事に終わったけれど、どうやらこれから2属性の魔法適正を持った受験生の試験が開始されるみたいだ。学科試験も僕らとは別の部屋だったみたいだし、やはり2属性持ちは何かと優遇されているらしい。


 魔法適正を2属性持った子供たちは国からの支援によって特別な教育を受けてきたはずだ。そのため、村や街などで独学で学ぶよりも優れた環境で属性魔法を学ぶことができる。正直に言うとものすごく気になる。


 結局ここで実技試験を受けていた子供の大半はそのまま試験官の人の指示に従って、2属性持ちの受験者の試験を見学することになった。




「うわ、すごい……」


「こんなんじゃ私は絶対に無理だよ……」


 周りの子供たちから、羨望と同時に諦めの言葉が漏れる。


 今実技試験を受けている子供たちのほとんどはオズやモニカと同等レベルの魔法を放つ者が数多くいた。確かにこの人たちと比べてしまうと少し自信がなくなってしまう。同程度の魔法を撃てるのなら、2属性持ちを合格させるのが普通だもんね。


 唯一の救いがあるとすれば、2属性持ちは20人ほどしかいないということだ。このイーサム学園ではもっと生徒を取るはずだから、たとえ2属性魔法の使い手が全員合格したとしてもまだ合格枠はあることになる。


「やっぱり貴族の人たちしかいないね」


「みんな立派な服を着ているぜ」


 2属性持ちの受験者はその全員が立派な服を着ていた。村長から聞いていたけれど、属性魔法を授かる可能性は普通の人よりも貴族の方が高いらしい。詳しいことはまだ完全に分かっていないらしいけれど、2属性持ち同士の両親を持つと、その子供が属性魔法や2属性を授かる可能性が上がるらしい。


 貴族同士の結婚には属性魔法を持ったいわゆる血統を重視するのが常識みたいだ。そのため、2属性持ちは貴族や身分のいい者が多くなるらしい。それと家庭教師を付けたりなど、単純に属性魔法を学ぶ環境の方が整っているもんね。


「それまで! では次、キャロル=ステイフィア殿」


「はい!」


 続いて前に出てきたのは薄紫色の綺麗な長い髪をした貴族の女の子だった。どうやらこの異世界では基本的には茶色や金髪の人たちが多いけれど、稀に様々な髪の色になるらしい。村にはいなかったけれど、街には赤色や青色や緑色の髪をした人も見かけた。


 それに瞳の色も透き通った青い目をしていて、本当に綺麗な西洋人形を見ているようだ。装飾の付いた立派な服を着ているし、間違いなくいいところのお嬢様に違いない。


炎雷弾えんらい弾


 彼女が放った魔法は今までに見たことも聞いたこともない魔法で、ものすごい速度で的にまで激突した。


「うわっ、少しだけど、的にヒビが入ったぜ!」


「すっご~い!」


「うん、あんなにすごい魔法は初めて見たよ!」


 彼女が放った魔法はほんの少しだが、的にヒビを入れた。試験官の人の話では、よっぽどの力じゃないと、あの的にヒビを入れることはできなかったはずだ。それに初めて見るあの魔法は……


「あれが魔法属性を2種類以上持った者だけが使える混成魔法というものです。たとえ魔法属性を複数持っていたとしても、この年で混成魔法を使えるとは本当に恐れ入りますね。彼女の合格は間違いないでしょう。この学園には彼女のような才ある者が大勢おります。皆さんもこの学園に入学しましたら、彼女と競い合えるよう頑張ってくださいね」


「「「………………」」」


 すぐに試験官の女性の言葉へ返事をできる子供はこの中にはいなかった。もしもこの学園へ入学できることになれば、彼女のような才能のある人たちと渡り合っていかないといけないのか。


 でもそれ以上に、僕はあの強くも美しい魔法にとても興味があった。本当にすごい、きっとあの魔法はただ属性魔法を授かっただけで撃てる魔法じゃないと思う。試験官の人が言っていたようにとても努力したんだと思う。


 その努力の結晶があの混成魔法になるわけか。もちろんオズやモニカも毎日鍛錬をして、努力を積み重ねてきている。だけど、それでも彼女の魔法は他の者が放った魔法とは一線を画する魔法であった。

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