第8話 3年後
「もう仕事は終わってたのかよ、エフォート」
「こっちは朝早くから起きて畑仕事をしていたからね」
3年前と比べてオズはだいぶ身長が伸びた。僕も身長はだいぶ伸びたけれど、オズのほうが大きい。身長で負けているのは悔しいけれど、こうやって背の大きさを競い合うような男友達がいること自体には感謝している。
「エフォートはいつも仕事が早いね!」
「って言ってもお父さんの手伝いだけだからね。モニカはいつも村のために頑張っていて偉いよ!」
「えへへ~」
僕が褒めるとモニカは嬉しそうにはにかんでいて、その笑顔はとても眩しい。モニカもこの3年で子供から女の子に成長した。その茶色いボブカットからはモニカの可愛らしい笑顔がのぞいている。
オズとモニカは属性魔法を使えるようになってから、村長からいろいろと魔法について教わっていた。モニカは村長と同じように水魔法を使って村の飲料水を確保し、オズは風魔法を使って草や木の伐採という仕事を子供ながらに任されている。
2人とも魔力量は常人よりも多いらしく、特にモニカはすでに村長と同じくらいの水を出すことができるようになっているらしい。……やっぱり属性魔法が使えるのは羨ましく思ってしまうな。
「エフォートお兄ちゃん、アルルも一緒に組み手する!」
「アルルに組み手はまだ早いから、いつもの型を一緒にやろうな」
「むう~」
可愛らしくほっぺを膨らましているのは3つ下の女の子のアルルだ。アルルは少し前に俺たちと同じくゴード師匠に弟子入りした女の子だ。一応は僕たちの妹弟子ってことになるのかな。僕たちが毎日門の前でゴード師匠と一緒に鍛錬しているのを見て仲間に入りたくなったみたいだ。
彼女もすでに街で祝福を受けたが、俺と同様に属性魔法はなかった。ちなみにアルルが僕たちの次の年齢の子供で、その下はまた2つ離れてしまう。僕たちの村の人口はそのくらいの数ってことだね。
「おい、エフォート。その前に俺と組み手しようぜ!」
「さっきゴード師匠と組み手をしたばっかりだから、ちょっと待って。オズもまずは型をやってからにしようよ」
「んっ、それなら公平じゃないもんな……わかった、まずは型からやるよ。今日の組み手は負けないぞ!」
「僕だって負けないよ」
「私だって負けない」
どうやらオズだけではなくモニカもやる気満々のみたいだ。最近はモニカがちょっと女っぽくなってきたから、少し組み手がやりづらくも感じているんだよね。
ちなみに僕たちの組み手の成績で言うと、僕が一番強くてその次にオズ、モニカの順番になる。もちろんこれは魔法を使わずに行っている組み手の結果だ。属性魔法はともかく、身体能力強化魔法も使用していない。
というのも、ただでさえ未熟な僕たちが魔法を使用してしまうと相手に怪我をさせてしまう可能性が大幅に上がってしまうからだ。オズとモニカは万一の時のために攻撃用の魔法を練習している。何度か見せてもらったが、確かにあれは怪我じゃすまない威力だった。
そうなると属性魔法の訓練をしていない僕が一番鍛錬をおこなっているわけで、僕の勝率が高いのも当然なんだよね。だけど負けず嫌いなオズとモニカは僕に負けるとものすごく悔しそうにする。僕も負けるとものすごく悔しいから気持ちは分かるんだけど。
「はっは、みんなやる気でなによりなこった。それじゃあ今日も壱の型からいくぞ」
「「「はい!」」」
「だあ~ちくしょう、また負けた!」
「僕の勝ちだね」
「ちぇっ……」
今日のオズとの組み手の結果も僕の勝ち越しで終わった。でも、オズはいつも属性魔法を使えないことに対して不満を言ったことがないのはすごく偉いと思う。
「エフォート、次は私の番!」
「……うん」
次はモニカの番だ。モニカも女の子とはいえ、ずっと僕たちと一緒に鍛錬を続けていたおかげで、中途半端に手加減するとこちらが負けてしまう。組み手は両手と両足に分厚いプロテクターのようなものを付けて行うから怪我をすることはない。
「うう~」
「僕の勝ちだね」
モニカとの組み手も無事に勝ち越して終わった。最近は2人に負けることがだいぶ少なくなってきたな。僕の方が圧倒的に鍛錬の時間は長く、2人は属性魔法を持っているんだから、これで負けたらいくら僕でもへこんでしまうところだよ。
「アルルも組み手する~!」
「アルルはもう少し基本の型ができるようになってからにしような」
「むう~」
「ほら、怒らない。僕も一緒に付き合うからね」
「うん!」
さすがにアルルはまだ型を鍛錬し始めてまだ間もないから、組み手は危険だ。その代わりに型を繰り返すことに付き合ってあげるとしよう。
「「「………………」」」
「どうしたの、みんな?」
「……いや、なんというか。エフォ坊、お前疲れていないのか?」
「えっ?」
「朝から親父さんの畑仕事へ付き合ったあとに俺と組み手、いつもの型の鍛錬を挟んでオズとモニカと組み手をしてからまた型ってまったく休んでねえじゃねえか」
「う~ん、ちょっとは疲れたけれど、まだまだ動けるよ」
「マジかよ……」
そういえば型の鍛錬を始めたばかりの時はずっと筋肉痛になって休憩を何度も挟んでいた。でも最近だと1日中身体を動かしていても疲れることはめったになくなった気がする。
前世だとまともに運動することができなかったから知らなかったけれど、この年でこれだけ動けるのは普通じゃないのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます