021 腹ペコ幼女と悪口仮面
シルクは順当に試合を勝ち進んでいた。
やはりというべきか、予想通りだが、彼女は強い。
暗黒協会の雑魚四天王よりも遥かに高い戦闘力だった。
そう思っていた矢先、四戦目、身動きが取れなくなる魔法を相手に使われてしまい、シルクは動けずにいた。
「うぐぐ」
『おおっと、これは絶体絶命のピンチか!?』
「じゃあな幼女、悪いが勝たせてもらう」
相手は生粋の魔法使い。冒険者レベルだとA級はあるだろう。
そのまま遠距離攻撃で止めを刺すつもりだ。
シルクの怪力さを今までの試合で見ていたのだ。
余った時間で倒す方法を考えていたのだろう。
確かに彼女は遠距離攻撃を持っていない。魔法は使えないし、弓なんて使えもしないだろう。
敵から魔法が放たれる。ぐんぐんと伸びていく巨大で高密度な波動。
驚いたのは、俺から見ても高火力だとわかったことだ。
常人がまともに食らえば死に至ってもおかしくはない。
だがシルクなら死なない。それすらも計算に入れているのだろう。
男は、勝利を確信してニヤリと笑う。
「さようならだ」
「――んっ」
だが――笑うのはまだ早い。
『な、なんということだ!? シルク選手、魔法を――食べた!?』
シルクは魔法を吸い取った。
竜人族は魔法は使えない。だが魔法に弱いわけじゃない。
食べるほど強くなるのは、魔力を身体能力に変換する器官が存在しているからだ。
その特殊な人体構造は、食事の栄養を力に変換する。
そして魔法もだ。
といってもカロリーと同じで一気に得られるわけじゃない。
それでも一時的に強い魔力を食らった。
ということは――。
「――ごめんね」
「そ、そりゃないぜ……」
シルクは身体を覆っていた粘着力の高い魔法糸をぶちぶちと破るとそのまま駆ける。
そのまま近距離でお腹を一撃。
男は、悶絶しながら前かがみで倒れていく。
うーん、えげつない。
「勝者、シルク選手! 一見ピンチかと思いましたが、攻守ともに隙がありませんでした!」
次は俺だった。
敵は、最強の戦士ボディアス――と、名乗る男。
「俺の筋肉は、何よりも――」
「はいはい」
「――へ?」
2秒もかからなかった。
悪いがお前は眼中にない。
どれだけ大規模なコロセウムでも、所詮アマチュア大会みたいなもんだ。
エンドレスはイレギュラーだとして、まともな強者は面倒くさくてこんなところに出ない。
金にも困ってないだろう。
それは羨ましいが。
ということで――。
『最強幼女、魔法も食べるシルクvs謎の攻撃で敵をバタバタを倒していった謎の男、仮面マン!! 決勝戦です! これに勝てば、栄光と名誉、そして100万の賞金が手に入ります!!』
俺の目の前に、腹ペコ幼女が現れた。
「よろしくお願いします!」
「よォ、なんかちっこいやつだな」
「え? ち、ちっこくないよ」
「ちゃんとご飯食べてるのか? 親に食べさせてもらえてないんじゃないか?」
「……いっぱい食べてるよ?」
「そうは見えないけどなあ。そういえば王女のメイドだって噂聞いたぜ。ソフィアも落ちたもんだな」
「…………」
「あの女、ご飯終わりにほっぺたにパンくずがついてるらしいじゃねえか」
「ついてない!」
「ハッ」
『それでは準備はよろしいでしょうか! ルールは同じです。この試合が終わると、優勝が決まります!』
俺は、わざとシルクを怒らせた。
彼女はソフィアを慕っている。心苦しいが、本気を出してもらう為だ。
人質がとられたとき、彼女は冷静ではなかったはずだ。
戦闘中に焦りは禁物。
俺は本気で稽古をつける。
そして――本気のシルクがどれほどのものか、見せてもらおう。
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