019 お前の優勝は俺のもの、俺の優勝は、俺のもの

「……凄い。人がいっぱいだ」

「ああ、今日はメインイベントだからな」


 王都から馬車で半日ほど。そのままダルゴス国に到着し、宿で一泊。

 思えば皇帝陛下が俺たちを外に出してくれるなんて凄いことだ。

 心から信頼してくれているのだろう。


 俺なら王城の秘密を漏らすこともできるだろうしな。

 ま、そんなことはしないが。


 シルクは、大きなコロセウム闘技場に驚いていた。

 目をまんまるさせている。その横を屈強な男たちが通っていく。


 人だかり、というレベルじゃない。


 もはや人の波だ。


 それもそのはず、今日は他国から集まってくるほどの注目の闘技の大会なのだ。

 

 タイミングよくやってくれていたのはありがたい。


 そしてもちろん――。


「優勝を目指すんだぞシルク」

「が、がんばる!」

「お前ならできる。朝ごはんもしっかり食べたしな」

「うん! 食べ放題で良かった!」


 宿もちゃんと食べ放題を選んでいた。

 食事=魔力に直結する彼女にとっては凄く重要だ。


 宿の人が涙を流していたが、別にルール違反ではない。


 シルクは強い。だが足りないものがある。

 それは、実践経験だ。


 もちろん俺自身にも言えることだ。

 魔眼があるとはいえ、俺ことエリオットはあくまでも偽物。


 原作知識のおかげで戦えているが、もしかしたら知らない強者が出てくるのかもしれない。


「シルク、あの道からが出場者の場所だだ。1人でいけるか? 怖いお兄さんがいっぱいいても、胸を張れるか?」

「頑張ります!」

「頑張ります師匠と言え」

「がんばます師匠!」

「うむ。修行の成果を見せるのじゃよ」


 そういって頭をなでると、シルクは精一杯胸を張りながら会場に入っていく。


「おい、あの子も出場するのか?」

「嘘だろ? ガキどころか幼女じゃねえか」

「ったく、ある意味で当たりたくねえな」


 まずは予選からだ。

 そして俺も、仮面を装着して、ゆっくりと時間をかけてから入る。


「仮面マンだ」


 受付に伝えると、不思議そうにリストを眺めていた。

 ちゃんと予約はしたはず。そう、事前予約必須なのだ。


 ちなみに俺ことエリオットことブラックこと仮面マンは、同一人物である。


 今回俺は、シルクの保護者だ。

 だがライバルでもある。そして師匠でもある。


 もし彼女と当たれば全力で戦う。

 それが彼女の為にもなるし、俺の為にもなる。


 修行はあくまでも訓練で、実践が一番重要だからな。


 更になんと、優勝者は賞金をもらうことができる。


 つまり、つまりだ。


 俺が勝てば俺のものだし。


 シルクが勝てば俺のもの。


 つまり確率は二倍。


 そんなの参加しない理由がはないだろう。


 後、副賞・・もあるしな。


「ムフフ、ムフフ」


 夢がいっぱいだぜ。


「おいなんだあの変態仮面、笑ってるぜ」

「こええな。いろんな意味で当たりたくねえ」

「きっと脱ぐたびに強くなるはずだ」


 さあて、今回も全て掻っ攫ってやる。

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