010 ち〇この終わり、新しいはじまり。

「次、エリオット・ブラック」

「はい」


 王立試験は様々だ。

 座学、面接、課外授業と多岐に渡る。


 エリオットはよくあり名前だが、ハヴィラントを名乗る事はさすがに控えておいた。

 魔眼を発動させなければただのイケメンくらいで問題はない。


 そのイケメン度も、背骨を丸めたり、前髪を垂らしたりしてできるだけ落としている。

 まあ、それだけで俺のイケメン度が下がって、俺のイケメンがなくなるわけじゃないが。


「ソフィアの従者の割にはぱっとしない感じだな」

「確かに、背は高いけど、逆に姿勢の悪さが目立つ」

「ふうん、なんかいまいちだな」


 黙れこの貴族どもが!

 なんていかんいかん。

 

 男たちはまだしも、レディも見ているのだ。

 俺はギリギリで勝ったり負けたりを繰り返せばいい。


 点数は何となく把握している。それでいいのだ。


「次、クルーヴァー・プラトス」

「うぃーす」


 長髪をくくった気だるそうな男が、前にでてくる。

 デカい体躯に、デカい二の腕。


「うわ、クルーヴァーだ」

「あいつもいたのか、やべえな」

「あーあ、エリオットとかいうやつ終わったな」


 俺はこいつのことを知っている。

 ものすごく――嫌な奴だ。

 プラトスは入学後、ソフィアに色々と嫌なことをしまくる。


 そりゃもうとにかく小さなことから大きなことまで。


 とはいえそれは未来だ。


 原作では腹の立つ男だったが、今は何もしていない。


「よォ、なんだお前きっしょいな」


 はい殺すー! 殺す殺す!


 ぶちころ確定ー!


「立てなくなったほうの負けだ。武器破壊も可能とする。正々堂々、王立学校にふさわしい戦いを」


 先生の言葉通り、相応しいのを見せよう。


 だがあくまでも、俺流でな。


「死ね、ヒョロガキが!」


 上段振りかぶりの一撃。

 当たればそれなりにダメージを負うだろうが、そんなもの当たるわけがない。


 だが回避しすぎるのは良くない。

 こいつは名前が売れている。勝つにしても、偶然を装う。


「ひひいいい」

「――バカが!」


 俺はしゃがみ込む、だがそのまま左を突き出す。

 悲鳴は周りには聞こえない程度だ。

 攻撃を回避、そのまま俺の攻撃がこいつのち〇こに直撃した。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああ」


 殺してやるといっただろう。

 男としてだ。


 だがクルーヴァーは俺が思ってたよりも強かった。

 やつはち〇こに治癒魔法を掛ける。


「ク、クソ……てめえよくも」

「ご、ごめん」


 ち〇こが光り輝いている。

 これはこれで地獄だな。

 ギャラリーは笑いそうになっているものと、怯えているものに綺麗に分かれている。

 共感性の差だろう。


 人間観察も捗る。


「もう偶然はねえぜ!」

「――そうか?」


 ふたたびクルーヴァーにしか聞こえない、音速でち〇こを蹴る。

 二激目だ。


 これは重いぞ。


「がぁっああああ」

「ど、どうしたんだ?」


 流石にわかったのだろう。

 ふたたびち〇こに治癒魔法しながら、俺を睨む。


「お前、そういうことか」

「え?」

「だがもう許さねえ!」


 治癒魔法した後、思い切り魔力を漲らせた。

 ほう、入学前からこのレベルとはなかなかやるな。


 ――このままだと、ちとキツイな。


 魔眼を発動させる。

 

 だが一瞬だけだ。バレてはいけない。


 遅い、遅すぎる。


 攻撃をかわす。こいつ、禁止魔法を使おうとしてたな?


 ――ち〇こ破壊の刑に処す。


「――があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 そのまま倒れこむ。


「しょ、勝負あり!」


 そのまま俺は勝利、偶然のように見せかけたおかげで、周りは笑っていた。


 先生が、恥ずかしそうに勝敗を書いている。

 ち〇こ負けと書かれるだろう。


 社会的にも終わりだな。


「て、てめえ覚えてろよ!」


 捨て台詞は聞こえない振り。


 次の試験は座学だった。

 俺はクルーヴァーに向かって何度も殺気を放つ。

 人間が反射的に後ろを振り返ってしまうほどのだ。


「カンニングですか、クルーヴァーいい度胸ですね」

「ち、ちが!?」


 それからも俺は邪魔をし続けた。


 そして最後、魔の森で目的に向かっている時、目の前にクルーヴァーが立っていた。


「こらてめぇ、許さねえぞ!」

「……何がだ?」

「わかってんだよ、お前がやったんだろうが! 全部!」

「そう思うか?」


 周囲を魔力感知したが、誰もいない。

 なら、手加減する必要もないだろう。


「殺してやるよ。もう試験なんてどうでもいい!」

「そうか――お前のち〇こも終わりだな」


 クルーヴァーは魔力を漲らせた。

 それが視覚化されて見える。


「どうだ、俺の本気は!」


 俺は魔眼を発動させた。

 そのまま、魔力を爆発させる。


「バカが。お前が相手にしているのは、1000日以上生きた男だ」

「な、そんな当たり前のことを――」


 そのまま俺はち〇こに蹴りを入れた。

 悲鳴が響いた。


  ◇


 数週間後、無事試験が終わり、俺は合格通知を受け取った。

 

 ドアを開けて外に出ると、誰かとぶつかる。

 ソフィアだ。


「大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます――受かかりましたよ、エリオット!」

「当たり前だろ。誰が指南してたと思うんだ」

「本当に、良かったです……」


 ソフィアは本当に嬉しそうだった。

 試験はほとんど満点だったと思うが、気が気でなかっただろう。


 彼女は王女だ。そのプレッシャーは凄まじい。


 それをもっと考えてあげるべきあった。

 申し訳なさから、少し頬をかく。


「でもこれで準備は整った。これから俺はお前の護衛として学校の中でも外でも火の粉を払い続ける。ま、俺の幸せの為だがな」

「ふふふ、よろしくお願いします」


 そのとき、カチューシャメイドが走ってくる。

 シルクだ。


 あまり走らないでほしい。カロリーが消費されてしまうから。


「私も受かりましたああああああああああああ」

「ああ、よくやったシルク」

「えへへ、ありがとう」


 当然シルクも合格だ。

 これで完璧――。


 と言いたいところだが、まだまだ。


 彼女は主人公だ。

 とんでもない災難が多く降りかかる。


 放っておいても死ぬことはないだろうが、悲しい出来事もたくさんある。

 もちろん、この国にとっても。

 それを防ぐには俺とシルクだけじゃ難しいだろう。

 だからこそ俺は、裏の軍団を創ると決めた。


 血を血で洗えるような、本当の最凶軍団だ。


 これは保険でもある。もし俺の正体がバレてしまい、この国にいられなくなったとき、武力で誰にも負けないように。


 やってやる。


 彼女300人の為なら、何も面倒なことはねえ。


「シルクちゃん、今日はご馳走にしよっか?」

「ええ!? やったあ嬉しい!」

「いいことだな。シルク、いっぱい食べるんだ。もちろんソフィアも」


 まあでも、今日ばかりは喜ぶとするか。



 一方、クルーヴァー・プラトスの家。


「ふ、不合格だとおおおおおおおおお。この俺様、俺様があああああああああ」

「坊ちゃま、まだち〇この治癒が終わっておりませぬ」

「クソ、あのエリオットとかいう奴め、絶対に許さねえええからなあああああああああああああああ」


 あっちが立てばこっちが立てぬ。

 エリオット・ハヴィラントは幸せを手に入れることができるのだろうか。

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