009 何度も胸を張って言いたい。俺は、幸せになりたい。
安定した衣食住、日々の平穏を手に入れた俺は、次の目標に向かっていた。
まずソフィアを王都学校に入学させる。
とはいえこれ自体は特に問題ない。
頑張りすぎているくらいだし、原作でも合格していた。
本当の目標は、卒業まで完璧に護衛することだ。
主人公である彼女には、数々の災難が降りかかる。
学園内でも、学園外でも。
それを全て振り払い、幸せになってもらう。
そして――俺も幸せになりたい。
というか、めちゃくちゃ幸せになりたい。
何度も胸を張って言いたい、幸せになりたい。
彼女はまだできていないし、言葉を選ばずに言うならばキスもまだだ。
せっかくイケメンなのに、考える事、やることが多すぎた。
早く全てを終わらせて、このイケメンをふんだんに使いたい。
老いてもイケメンだろうが、若いイケメンのままなんとか楽しみたい。
その為には急いでやるこべきことをやる。
頑張れ、エリオット、頑張れハヴィラント!
◇
「学園内で力を隠す? どうしてそんなことをするのですか?」
「無能だと思われていたほうが、都合がいいからだ」
「そうですか? 優秀な護衛だと思われた方が近寄れないと思うのですが」
少し早いが、入学後のプランをソフィアと話し合っていた。
俺は側近護衛、シルクはお付きとして同時入学する予定だ。
だが俺は強さを隠すと決めていた。
ソフィアの言うことも一理あるが、悪い奴ってのは基本的に卑怯だ。
俺が強い護衛とわかれば、敵は俺を遠ざけたり、無効化する方法探すはず。
だが無能だと思われていたら? 相手は油断するだろう。与しやすしと思うだろう。
そうなれば勝ちだ。
原作でも俺みたいなやつは隣にいない。
未来を変えない為にも、この工程は必要不可欠だ。
「ということだ。シルク」
「わかりました!」
メイドカチューチャのシルクがびしっと敬礼した。
魔眼で確認してみたが「あれこいつ、ワシより強くね?」 と声が出そうになった。
でもまだギリ俺のが強い。たぶん。
ちょっと食べさせすぎたかもしれない。
あくまでも俺たちは護衛とメイド。
それも強いからではなく、ソフィアのお目に敵った善人だと思わせておく。
だが裏では翻弄し、彼女を守り続ける。
しいてば俺の幸せの為。俺の未来の彼女200人の為(増えた)
といっても、王都学校は普通の学校と違って入学してからの登校自体はそこまで多くない。
貴族は意外にも忙しい。最低限の授業や訓練、作法を学ぶことになる。
箔をつけることが何よりも大事だからな。
「とはいえまだ入学式まで時間はある。しっかりと対策を練ろう。俺とシルクも試験はほとんど同じだ。全員で合格するぞ」
「わかりました。ありがとうございます、エリオット」
「はい! エリ兄ぃ!」
それから同じような日々が続いた。
幸せで、なおかつ楽しい日々が。
「シルク、ちょっと最近食べ過ぎかもしれない」
「え!? ええ!?」
「ほら、お腹がぷにぷにだ」
「うう……美味しくて……」
「運動不足も天敵だからな。夜に手合わせするか」
「はい!」
ちなみにめちゃくちゃ強かったので、一回だけしかしなかった。
めちゃくちゃ疲れるからだ。
「ソフィア様、行きます!」
「――おいで」
二人の手合わせもみたが、とんでもなかった。
原作を遥かに超える勢いで強くなるソフィアを見ているのは楽しかった。
いずれ俺は必要なくなるだろう。
今のうち偉そうにしておけなければ。
それから早いもので数か月が経過し、俺たちは、王都学校の前に居た。
「ようやく来たな」
「ええ、頑張りましょう。ドキドキしてきました」
「絶対合格!」
「行こうかソフィア、シルク。おっと、ソフィアは様付けしなきゃ駄目か」
「そこまでしなくていいですよ。護衛っていっても、私はあなたを顔と性格で選んだ王女、という設定でしょ? だったら、仲良しでいいんじゃないんでしょうか」
「ああそうか」
ソフィアの言う通り、そういう設定にしておいた。
俺が無能に見えるからだ。
といっても入学試験は合格しなきゃならない。
ギリギリのラインを責める。
それは俺でも大変だろう。
気を引締めよう。
ここからが、本番スタートだ。
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