007 有能な鳥に鳥かごは必要ない。パタパタパタパタ

「これがその資料だ。で、反逆を企てていた奴らは既に騎士団に突き出した」

「ははっ、エリオット、どこまで優秀なのだ?」

「そんなことない。所詮、淘汰される運命にあった男だ」

「嘘でもなく、本心でそこまで言えるとはな。その謙遜のなさは称賛に価する。娘の婚約者に相応しいかもしれぬ」

「いや、それは流石に申し訳ない」


 亡命から一か月が経過。

 俺は、点数・・稼ぎに翻弄していた。


 元の国で俺が消えたことが広まり、重ねて嘘でないことが分かったので、王都内では自由に動き回れるようになっていた。

 となりゃやることは一つだ。


 俺の居場所を確固たるものにする為、この国の悪い奴らをひっ捕らえていた。

 隠れて悪行をしていたやつら、私腹を肥やしていた貴族も。


 王からすれば俺ほど優秀な奴はいない。


 ソフィアが婚約者になってほしいといってきたときは流石に不満をあらわにしていたが、最近は認めてくれそうな雰囲気が出ている。

 確かに彼女はカワイイ。


 だが――困る。


 俺は彼女100人ほしいのだ。


 ソフィアみたいなすさまじく地位が高い女性を得ると、それができなくなる。


 最高の一人もいいが、100人だぞ、100人。


 それに俺ならそれが可能だ。


 街に出れば、俺はよく女性から「あの人かっこいいわ」と言われる。

 今はまだ大人しくしているが、時間の問題。


 今まで彼女なんていなことがないのでハードルは高いが、夢は大きく持ちたい。


「それでは」

「有無、ご苦労であった」


 その場を後にする。

 すると、廊下でドタバタと走るメイドを見つけた。


「走らないよ。シルク」

「は、はいい。あ、――エリ兄ぃ!」

「順調か?」

「難しい……けど、楽しい!」

「そうか。ご飯は食べれてるか?」

「うん! 最近、力もつよくなってきた!」

「いいことだ。夜にまた一緒にケーキを食べよう。本当はラーメンがいいんだがな」

「ラーメン?」

「気にするな。俺がいつかカロリー爆弾を作ってやる。メイドの仕事、がんばれよ」

「はい!」

「そいや、今から王都に出る予定だが、一緒に抜け出さないか?」

「え? 今から? ソフィア様の稽古じゃないの?」

「ま、色々な。どうする?」

「お誘いは嬉しいけど……まだ仕事あるから!」

「わかった」


 シルクも絶賛メイドとして頑張っている。

 いずれ俺たちと同じで王都学校に通う予定だ。


 色々忙しいだろうが、ちゃんとご飯は食べているらしい。

 安心した。


 いつもの時間になって中庭へ向かうと、ソフィアが剣を振っていた。

 そこまでしなくていいだろうに。


 というか、たぶんしてなかったはず。

 俺というイケメン特異点シンギュラリティと出会ってしまったせいで、更なる努力家になってしまった。


 だが俺が彼女より強いのも今だけだ。

 いずれ追い抜かされる。


 それまでに信頼を勝ち取っておくのは悪くない。


 ただ婚約者はちょっと束バッキーされるのでご勘弁願いたい。

 ワンナイトラブなら大歓迎だが、流石にそこまで非常識な男ではない。


 お互いにウィンウィンな状態でしかダメだ。


 まあ、女性経験はゼロだが。


「まだまだ先なのにがんばりすぎじゃないのか」


 俺に気づいたソフィアが、剣を下に下げる。


「……でもあなたから一本も取れないから」

「今だけだ。すぐ追い抜かすよ」

「そうかな……」


 そうです。そして俺を百連撃で刺殺する予定でした。


「たまには息抜きしたほうがいい。――ほら、着替えだ」

「……フード?」

「ああ、君は目立つからな。美味しい物でも食べに行こう」

「え、で、でも」

「大丈夫。バレるわけがないよ」

「……わかった」


 そしてフードに着替える。

 俺は彼女を抱えて飛んだ。


「すごい……」

「落ちるなよ」


 そしてそのまま王都へ向かう。


 可愛い女の子とデートしながら無意味な稽古をさぼりつつ、カロリーの高い食事を見つけつつ、未来の彼女候補を探すことができる。


 ――一石四鳥だ。素晴らしい。


「どうして私を婚約者にしてもらえないのですか?」

「俺は鳥だ。誰の鳥かごにも縛られない」


 まあ、鳥といっても、浮気鳥だけど。

 嘘はつきたくないからね!


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