002 スーパーロリラッキーガール
ただひたすらに目的の国まで向かっていた。
身体が軽くて驚いている。
大量の金貨を鞄に詰め込んでいるというのに、まるで重さを感じないのだ。
「少し、近道するか」
俺は山を深く突き進む。
この世界は原作と何も変わらない。
もしかしたら魔物や、何かとエンカウントするかもしれない。
その予感はすぐに的中した。
「よお、ここは通行止めだぜ兄さん」
「こいつ貴族だ」
「当たり当たりぃ!」
山から出てきたのは、冒険者崩れと思われる男たちだ。
全員が武器を持っている。
だが俺は、こいつらがいることもなんとなくわかっていた。
会えればいいとさえ思っていた。
その理由は――。
「バカどもがよく
「ああん!?」
エリオットの能力の確認だ。
ずっと使うタイミングがなかった。
原作で俺ことエリオットは能力を持っている。
神の寵愛を受けているのだ。
それは中二病大好きよろしくの――魔眼。
「な、なんだこいつの目、気持ち悪いな」
「……どこかで見たことあるぜ」
「どうせ貴族だ。パレードかなんかだろうよ」
エリオット自体は周知されているものの、まだ子供だ。
誰だって同じに見えるだろう。
だがこの目に関しては知っている奴は少ない。
なぜならエリオットもできるかぎり秘匿にしていたからだ。
しかし俺は能力の確認をしておかねばならない。
俺自身が、本当に揺るぎない力を持っているのかどうかを。
「――かかって来い雑魚ども」
あえて挑発する。
心が穏やかなのは、前人格と同期しているからかもしれない。
「ガキが。金むしり取って、裸にしてやるよ!」
「――殺す気はないのか。少しは良心があるんだな」
この目は特別だ。
世界が遅く視える。
更には魔力の流れまで。
男たちが向かってくる。だが何もかもはっきりと視えていた。
確信した。
俺に勝てるやつは――いない。
いや、いいすぎた。
ちょっとぐらいはいるかもしれない。
「おらああっああ!」
「――それで本気か?」
遅い、遅すぎる。
エリオットが強い理由は、この魔眼にある。
すべてを見通す力。
魔法を放つ際の溜め、攻撃を仕掛ける動作、属性にいたるまで全てが視える。
――はっ、最高じゃねえか。エリオット・ハヴィラント。
「殺さないでやるよ」
そして俺は、3人を瞬殺した。(生きている)
◇
「や、やめろおお。むき出しにしないでくれええ」
「ひえええええ」
「は、はずかしいい」
俺は、ものすごく丁寧に亀甲縛りをしていた。
こいつらは俺を殺すつもりはなかった。
だが裸に剥くといっていた。
目には目を、裸には裸を。
「だまれ、殺さないだけありがたくおもえ」
とはいえ急いでいる。
本来はこだわるタイプだが、尻に一凛の花を添えるだけにしといてやろう。
「や、やめろ刺すなあああああああああああ」
――ブスブスブスブス。
ふう、出来上がり。
皮肉だね、悪党の生け花は綺麗だ。
恥ずかしく悶えているが、どうせ誰かに見つけてもらえるだろう。
その場を去ろうすると、猿ぐつわされた状態の怯えている少女を見つけた。
長い黒髪、華奢だが、それは幼いからだ。
……ロリだ。
「何してんだおまえ」
「むぐ……むぐぐぐ」
「名前を言え」
「むぐぐぐ……むぐ」
「名も名乗らないとは、失礼だな」
「むぐぐぐぐぐ」
会話にならない。
俺はその場を後にしようとした。
しかしふと、瞳の下の星型のホクロに気づく。
――もしかして、シルク・ファリストじゃないか?
俺は急いで猿ぐつわを外した。
あ、そうか。これで会話ができなかったのか。
生まれてきてこの方、猿ぐつわにされているやつをみたことなかったのでわからなかった。
「はあはあ……あ、ありがとう」
「名前はシルクか?」
「……え? な、なんで知ってるの?」
ものすごい偶然だ。
いや、偶然か?
彼女は原作で非常に価値を持つ少女だ。
それはなぜか。
王国をも破壊する力を持っているからだ。
確か原作では王家直属の誰かの奴隷として飼われていた。
そこであんなことやこんなことをされ、暴走したシルクは国を崩壊させるきっかけになる。
いつ捕まったのか知らなかったが、まさか今日だったとは。
「ふむ。シルク、俺は王都へ行く。行くところはあるのか?」
「え、な、ない……」
「――ならついて来い。一人分くらいなら、衣食住を用意してやる。後、たまになら夜におしゃべりもしてやる」
この格好良さ、さすがエリオット。
「……どうしてそこまでしてくれるの」
「お前の事は知ってる。――竜人族だろう」
「な、なんで知って……」
「俺の目は特別でな、すぐわかった」
彼女はロリだが、それはまだ成長してないからだ。
竜人族である彼女は食べるほど強くなる性質を持っている。
原作でそれを知らない王家の1人がご飯を無理やりたべさせ、強くなっていく。
つまり俺も同じように彼女にご飯をいっぱい与えればいい。
おやつだってあげよう。
俺は強い。強いが、もう一人強いのがいれば楽ができる。
もちろん、信頼を勝ち取った上で。
――ラッキーすぎる。
彼女をラッキーロリガールと名付けよう。
そのとき、ロリのお腹がぐぅとなった。
いい音だ。
レベルアップの音に聞こえる。
「着いてきたらご飯を食べさせてやる。だが決めるのは俺じゃない、お前だ」
「……い、行く」
「なら来い」
そのとき、後ろから声がした
仲間がいたらしい。
倒してもいいが、もう面倒だな。
「乗れ」
俺は背中にラッキーロリガールを乗せると、そのまま駆けた。
いいものを拾った。
「――ぐぅ。わ、ご、ごめんなさい!?」
「安心しろ、胃袋がパンパンになるまで食べさせてやる」
「……ありがとう。お兄ちゃん、優しいんだね」
「エリオットと呼べ」
「エリオットにいちゃん」
「ああ、行くぞラッキーロリガール」
「え、な、なにそれ!?」
そのまま俺は、闇夜を掛けた。
「た、たすけてくれええ」
その後ろで、尻に刺さった一凛の花を見てしまった仲間がいた。
薔薇のトゲのせいで、引き抜くたび、叫び声がする。
「なんてひどいことを……」
「お、おい抜くぞ!」
「ひ、ひとおもいに頼む」
その夜、山賊の声が何度も響き渡ったという。
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