最強で最凶の悪役に転生した俺は、原作主人公の為に暗躍す

菊池 快晴@書籍化進行中

001 さよなら、さよなら、さよなら

 エリオット・ハヴィラント。


 トルティア国の長い歴史の中でも、最強で最凶と呼ばれた男。


 剣を覚えたのは三歳、それからも目まぐるしい成長をみせ、五歳では既に大人を相手にしていた。

 十歳になると、自らの師だった騎士団長をも倒す。


 だが才能はそれだけにとどまらない。

 持って生まれた容姿に天才的な頭脳、王家直属はもちろん、トルティアの国民までもが彼の将来を楽しみにしていた。


 しかし彼には裏の顔が存在する。


 完璧すぎるがゆえの綻び。


 裏では暴虐の限りを尽くしていたのだ。

 使えないクズを無情に切り捨てるのはもちろん、逆らった相手には、ありとあらゆる手段を使って壊す・・


 最強と最凶を使い分けながら、エリオットは確固たる地位を確立した。


 だがそんなエリオットだが、たった一つだけ抗えない運命がある。

 それは、破滅だ。


 この世界は俺の知っているゲーム。

 名前は、ファクト・ファンタジー。


 その中の登場人物であるエリオットは、原作主人公・・・・・に処刑される悪人なのである。


 表も裏も全て引きはがされたあげく、一番自信のある剣でも叩き潰される。


 社会的にも肉体的にもボロボロになったあげく死ぬ。


 そんなエリオットは――いまの俺だった。


「無理だ……てか、あいつらクズすぎんだろおおおお」


 深夜1人、鏡の前で叫んでいた。

 

 あまりのカッコよさにうっとりしそうになったが、そんなことはどうでもいい。


 ちらりと部屋に視線を向けると、煌びやかな装飾、高級家具が置いてある。

 だがこれは今だけだ。いずれすべてを失う。


 俺が自身をエリオットだと気づいたのは数か月前、それから必死にこの国を良くしようとしたが、どいつもこいつもクズばかり。

 聞き耳を持たないどころが、俺のことを疎ましく思う奴らまで現れ始めた。


「……クソ、どうすれば」


 俺は鏡の中の自分を見つめ、うっとりしながら考え込む。


 こうなったら選択肢は――結構ある。


 生まれた国だから何とかしようとしたが、そもそも滅びる運命にあるのだ。


 鏡に映るカッコイイ自分をさらに見つめる。


 イイ感じの金髪、肌がきめ細かくて白い。

 鼻は高いし、二重も綺麗だ。

 そして俺は、ゆっくりとエリオット貯金箱まで歩く。


 中には大量の金貨が入っている。


 そのとき俺は、壁の一枚の写真に視線を向ける。


 将来断罪されるクズたちとの集合写真だ。


 この国の王家の奴らが揃っている。


 受け継がれた記憶がよみがえっていく。


 赤ちゃんのときから俺を育ててくれた人たちだ。


「よく考えると、全然未練ないな……」


 できるかぎりお金と服を鞄に詰め込むと外に出た。

 凄く重いが、そんなことは感じないほど身体が軽い。


 やはり俺は、エリオットのすべてを受け継いでいるのだ。


「二度と帰ってきませんので」


 俺はうっとりするほどのイケメンだ。そこそこ金もあるし、それに何よりも強い(はず)。


 バラ色の人生を歩むことは造作もない(はず)。


 よく考えると、まったく思い入れのない悪党たちとこの国にいる必要はない(真理)。


「さよなら、さよなら、さよなら」


 しっかりと三度の礼だけは尽くした後、満面の笑みで屋敷を後にした。


  ――――――――――――――――


 このたび新連載を始めました。

 異世界ガイドマップというスキルを得た主人公が、クチコミや様々なスキルで旅をするお話です。

 今までの培った面白い部分が出すことができたらなと思います。


 良ければ見てほしいです! 何だったらフォローだけでも! いや☆だけでももらえませんか!? 一人の力が大きいのです(^^)/


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