第5話:私が好きな人は悠ちゃんだけだよ。

その日は朝からデート。

僕は彼女の家に軽トラで迎えに行った。

ツーシーターのスーパーカーで・・・。


彼女の家の前に軽トラを横付けして待っていたら音色ちゃんが玄関から出てきた。

家の前に停まってる軽トラを見て、彼女は首をかしげた。


で運転席の僕を見つけて笑いながら手を振った。


「おはよう悠ちゃん」


「おはよう音色ちゃん」


音色ちゃんは軽トラを見て笑いながら言った。


「あはは、スーパーカーね・・・たしかにツーシーターだね」


音色ちゃんはイヤな顔ひとつせず軽トラの助手席に乗り込んだ。

音色ちゃんが


「わ〜可愛い」


彼女がそう言った。


「私、軽トラになんか乗らない」


って子じゃ なくてよかったと僕は思った。

まあ、そんな子じゃないことは分かってたけどね。


僕と音色ちゃんはそれぞれに用事がないかぎり休みの日は普通にデートを

重ねるようになった。


ある日、僕と音色ちゃんは一軒のカフェにいた。

お店の名前は「南風」(みなみかぜ)

町外れの河川敷の堤防の少し高台にあって壁に蔦が絡まる洒落たカフェ。


デートの最中よく立ち寄るようになったお店だ。


音色ちゃんはミルクティーを飲みながら窓の外の河川敷で サッカーの

練習をしてる子供たちをなにげな〜く眺めていた。


今更だったけど僕はひとつ気になってたことを音色ちゃんに聞いてみた。


「あの~今更だけど・・・」


「音色ちゃん、今付き合ってる人とか・・・彼氏とかいないよね」

「まさかね」


音色ちゃんは僕のほうを振りむくなり


「いるよ」


って言った。


僕はコーヒーを口元まで持って行こうとして手が止まった。


「・・・・・」

「うそ、まじで・・・いるの?・・・誰?、どこの人それ」


パニクりそうになった僕にとっては聞き捨てならない音色ちゃんの答えだった。

すると音色ちゃんは自分の眼の前にいる人を指さして


音喜多 悠真おときた ゆうま


って言った。


「・・・・・」

「え?、あ・・・え?・・・」


僕は確かめるように自分を指さした。

音色ちゃんは「うん」ってうなずいた。


「あ~、あはは、そうなんだ」

「そういうこと・・・なんだもう、まじでびっくりした」

「誰か他に好きな人がいるのかと思ったじゃん」


「びっくりしなくても、大丈夫だよ」

「私が好きな人は悠ちゃんだけだから・・・」


僕は胸をなで下ろすと同時に喜びが湯水のようにあふれだした。


これって、まぎれもなく音色ちゃんの僕に対する告白だったからだ。

僕はお店にいるお客さん全員に吹聴して回りたかった。


「この子が僕の彼女」ですって。


僕たちは自然とお互いの愛情という好意を寄せるようになっていた。

もっとも僕ははじめから音色ちゃんに一目惚れしてたけどね。


今はその想いが、より一層強いものになっていた。

駅のホームでただ音色ちゃんを見ていた時のことを思うと

今は彼女といっしょにいることが夢のようでならなかった。


その反対にこの理想的な展開がうまく行きすぎることが不安でもあった。


(音色ちゃんが目の前ににいる・・・僕の眼の前に)


僕と音色ちゃんの恋愛は、はじまったばかり。

この幸せな関係を壊さないよう大事にしていかなくちゃ。


また窓の外の河川敷で サッカーの練習に目を向けている音色ちゃんに

僕はそう誓うのだった。


つづく。


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