13-3 集中攻撃! 連携で皇帝を倒せ!
「かかれ!」
隊長の掛け声とともに、九騎が一斉に襲い掛かった。
むろん、同時に攻撃することは不可能であるので、先頭で斬り込む隊長に続行する者、あるいは逃がさないように回り込もうとする者、動きは様々であるが、連携は申し分ない。
「意気込みや、ヨシ! 練度もまた、ヨシ! 我が相手とするには、不足なし! 推して参る!」
皇帝・
当然、最初に激突したのは、義輝と隊長だ。
「「うぉぉぉ!」」
互いの怒声が響き渡り、すれ違いざまにこれまた袈裟懸けに剣を振り下ろした。
ガキィィィンという剣と刀がぶつかり合う金属音と、火花が飛び散る衝撃が発生した。
(む……!?)
ヨシテルは感じた衝撃が想定以下である事に怪訝に思ったが、すでに次の一手を打たれていた。
この激突は見せかけであり、隊長はまともに斬り合うと思わせて、すれ違いながら流したのだ。
力の行き場を流されて失ったヨシテルの刀は振り下ろす体勢となり、次の騎馬がそこへ駆け込んできた。
若干、体のバランスを崩したヨシテルに向けて、馬を走らせつつ、突きをヨシテルの顔面に向けて放った。
だが、ヨシテルは慌てず強引に剣を振り上げ、放たれた突きの軌道を弾き飛ばした。
そこへさらなる一撃。さらに一騎が剣を振り上げて脇を晒したヨシテルに、すれ違いざまの斬撃を繰り出してきた。
ヨシテルは大きく体を傾け、この斬撃もかわした。
(まだ来る……!)
体勢を崩したヨシテルに、今度は矢が飛んできた。一人がいつの間にか得物を
体勢を崩してかわしようがなく、命中したと誰もが思った。
だが、ヨシテルはこれにも対処してみせた。
なんと飛んできた矢を手綱を持っていた手で掴み、顔に命中するギリギリで止めてみせたのだ。
「なんだと!?」
体勢が崩れている上に、素手で矢を止めると言う離れ業に、勝ったと確信していた隊長が、思わず焦燥の声を漏らした。
しかも、そこからも常人離れしたヨシテルの一撃が繰り出された。
手綱を持つ手を放してしまったため、崩れた体勢のままに馬から落ちたのだが、重たい鎧を着こんでいたにもかかわらず、クルリと軽業師のように宙返りをして、何事もなかったかのように軽やかに着地した。
「返すぞ。受け取れぇい!」
ヨシテルは先程掴んだ矢を、騎射を放った相手に向かって投げた。
弓で放ったのと変わらぬほどに猛烈な勢いで投げ、馬で走っているにもかかわらず、相手に見事にお返しをした。矢は
皇帝を落馬させたとは言え、ダメージはゼロ。どころか、一つしかなかった弓を破壊され、後は近接戦での勝負を強いられることとなる。
一連の流れで討ち取るつもりでいた隊長にとっては、完全に読みが外れた格好となった。
自分の腕前もさることながら、部下の腕前にも自身を持っていた。連携は完璧であり、“普通”の猛者であれば討ち取れていたはずなのだ。
だが、目の前の皇帝は二本の足でしっかりと大地に立ち、楽しそうに笑みを浮かべるほどに余裕な態度を見せていた。
「良い腕だ。さすがに冷やりとしたぞ。特に最後の矢は絶妙な機を狙ってきたな。我でなければ死んでおったぞ」
勇者、豪傑には敬意を惜しまず、心の底からそう思っているようであった。
だが、まだ戦闘の最中である。
隊長も容赦はしなかった。すでにヨシテルは馬から落ちて徒歩の状態であるし、逃げるのは不可能。再び騎乗しようとすれば、その隙に斬撃を叩き込めばいいだけの話だ。
少し距離を置きながらヨシテルの周りを、九騎でグルグルと回り、隊長の次なる指示を待っている状態であった。
「さて、そちらの連携と、技の冴えは見せてもらった。今度は我の一撃を見せてやろうぞ」
そう言うと、ヨシテルは刀を両手持ちに切り替え、しかも頭上に振り上げた。
徒歩の剣士が騎馬九騎に対し、真っ向から斬り合うとの宣言に他ならない。
かかって来いと言わんばかりの大上段の構えを取り、自身を取り囲む騎馬が突っ込んでくるのをヨシテルは静かに待った。
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