1-34 驚天動地! 謀られたカウラ伯爵家の人々!(3)

 キッシュ死す!


 この報告はすぐにシガラ公爵、カウラ伯爵、双方の屋敷に届けられた。


 というのも、キッシュは案内役のカイの他数名の随員を連れてシガラ公爵の屋敷へと馬を走らせていたのだが、その途上の山道で突然の“落石事故”に見舞われ、落石に潰されてしまったのだ。


 また、カイもこれに巻き込まれ、同じく命を落とした。


 しかし、随伴していたお供はどうにか助かっており、その助かった者達がそれぞれの屋敷に知らせに走ったのだ。


 そして、シガラ公爵の屋敷にその報告が入ると、ヒーサはただちに人を派遣した。公爵領の内側であったし、本当に死んだのがキッシュであったのかを確かめるため、面識のある者を選んで送り出した。


 現場に付いた者達は早速、遺体の確認と周辺の調査に乗り出した。


 まず、遺体の方は間違いなくキッシュとカイのものであった。


 石に潰され、顔が半分になっていたが、残り半分には見覚えのある顔であり、二人で間違いないと判断された。


 二つの遺体は布で包まれ、ひとまずは邪魔にならないよう道路わきに安置された。


 また、付近の調査、特に石が転がり落ちてきた崖上も調べられた。


 結果、何者かが石を集めていた痕跡が残っており、故意に落とされたのでは、という疑惑が持ち上がった。


 そんなこんなで調査を進めていると、今度はカウラ伯爵の領地の方から騎馬が数騎駆け込んできた。伯爵の屋敷から派遣されてきた者達で、こちらもまた遺体の確認、及び回収にやってきたのだ。


 道路わきに安置された遺体を確認し、キッシュとカイの両名であることが確認されると、伯爵側の人間は大声で泣き始めた。


 なにしろ、暗殺の嫌疑で伯爵自身は捕らわれの身であり、それを救うべく動いていた息子のキッシュは帰らぬ人となった。


 これでカウラ伯爵家は終わってしまうかもしれない。そう考えると、いくらでも涙が零れて来ようものであった。


 だが、その顔色が一気に変わることも告げられた。なんと、この落石事故が何者かの手によって故意に引き起こされた可能性があると告げられたからだ。


 伯爵家側の者達も崖上を確認すると、確かに石が用意されたような痕跡が残っており、一気に怪しく感じ始めた。


 一方で、公爵家側が仕組んだことでは、という疑いは薄れていった。というのも、事故現場の情報開示が速やかで的確であったし、しかもキッシュの遺体も丁重に扱って、すんなり引き渡してくれたからだ。


 犯人が公爵側の人間であるならば、なにかしら隠匿を試みるであろうが、それが一切ないのだ。


 とはいえ、現場で得られそうな情報はこのくらいであり、なにより遺体を速やかに回収しなくてはならなかった伯爵家側は、物言わぬキッシュと共に引き上げていった。


 公爵家側もまた、何名かを現場に残して調査を続行させると同時に、残りは得られた情報をもって屋敷へと引き上げていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る