1-21 披露! これからやる事を教えます!

 まんまと、銃をせしめたヒーサはニヤニヤ笑いながら銃を眺めた。


 おそらく、兄の信頼のみならず、兵士の間でも評判になっているだろう。いずれ家督を継いであの軍を率いることになる際には、今日の出来事が大きく影響を与えるとも考えていた。


 そういう強かな一面を見せつつも、今は銃が手に入ったことを素直に喜んだ。



「テア、見事な銃撃だったぞ。さすが女神様だな」



「あのくらいならなんとかね。でも、これっきりにしてほしいわ。私はあくまで観察者で、転生者プレイヤーを見守るのが仕事なんだから」



「分かっている。これからの動きでお前にやってもらうことは、せいぜい荷物運びくらいで、手を汚す真似は絶対にないと断言しよう」



 信用ならない男ではあるが、神の定めた規則違反は破滅を意味するので、さすがに無茶なことを押し付けたりはしないだろうととも考えた。



「それで、これからの大まかな流れはどうなの?」



「父と兄を“毒殺”する。で、その罪をカウラ伯爵に押し付ける」



 しれっと述べたが、父と兄を殺し、義父を貶めると言い切ったのだ。


 まともな神経をしていたら、まず口に出すこともない台詞を顔色一つ変えずに言い放つあたり、やはり頭の中身がぶっ飛んでいるとテアは思わざるを得なかった。



「なんか、ヤバそうな言葉が聞こえてきたけど、気のせいとかじゃないわよね?」



「戦国ゆえ、致し方ない」



「またそれ……。ったく、物騒この上ないわね、戦国脳は!」


 テアは戦慄しつつもそれに付き合わされることが確定しており、暗い気分でため息が自然と漏れてきた。


 もう少し穏便な方法はないものかと考えつつも、さっぱり浮かんでこなかったので、目の前の外道に従うよりなかった。


 なにしろ、“魔王探索”のやり方に関しては一任しており、あらゆる手段を使うことを認めているため、どうしようもないのだ。



「戦国では何もかもが合法なのだ。安芸あき国の毛利元就も戦国的作法に則り、地元の豪族、吉川、小早川の両家を平和的に併合したではないか」



「あれ? そんな穏当な話だっけ、それ」



 テアは首を捻り、考え抜いたが、どうも感覚やら認識にズレがあると思わざるを得なかった。



「それに、婚姻とは他家を乗っ取ったり、隙を窺う好機でもあるのだぞ。ここは一つ、備前びぜん国の宇喜多直家を参考にして、気張っていこうではないか」



「なんかさっきから物騒な名前ばかり飛び交ってるんですけどぉ~? 大丈夫?」



 どうやら毒殺云々、擦り付け云々は訂正する気が欠片もなさそうであった。


 もう嫌な予感しかしなくなったテアは、どうか穏当に終わってくれることに期待するよりなかった。

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