2 僕と紙の切れ端

自分を振り返るのもほどほどに、もう一度紙を見てみる。本当に何をさせたいのかよくわからないのだがひとまず数字を眺める。

よく観察していると中央で少し分かれているようだ。前側と後側で桁数は全く同じようで、

どこか見覚えのある羅列の仕方だった。

思い出せそうで思い出せない、少し息を深く吸う。

アルコールの匂いと紙のざらつきが伝わってきた

だけだった。


物事の始まりは案外シンプルなもので、高尚な理由があるわけでもなくぼんやりとしているものだ。

ある日いきなり何か始めようとなる人もいるだろうが僕に関してはあまり当てはまらない。雪かきをするように息を吸うように文章を書き始めた。

ただ書いている。ただ生きている。

何者にもなっていない何かだ。

そんな何者でもない僕に与えられた数字達はモーセのように道を切り開くのか。はたまたキリストのように僕をはりつけにするのか。

夢想家の自分にはどうにも妄想癖がある。だが油絵のように重ねて錯覚させることや、檸檬が店を爆発させることはできない。そんな才能もおそらく文才もない。


横にあるデータに目を移した。これもまた見覚えがある。エクセルで作られたであろう表は格子で区切られていて左端から1桁 2桁 2桁そして地方名が横にメモされていた。1桁は上から順に4,5,6~1.2.3でと終わっていた。

おそらくだが、1桁は月 左2桁は気温 右2桁は湿度だろう。

地方都市が並んでいたが、一つだけ特殊なのがあった。

この街の名前である。

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