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1 僕という人間

雨が続く日だった。

僕はペンと紙を持って椅子に座っている。時々足を組み換え、ペンを回し紙をじっくり眺めている。

昨日から続いている雨は街を濡らし、服を濡らし

髪を濡らしている。

机には水割りと封筒が置かれている。ビルのガラス張り窓からは忙しく動く車と人の流れが見え、

街頭の光が揺らめくようにふつふつとしていた。

雨粒の数はどのくらいなのだろうか。

ふと疑問に思った。

一つ粒あたりの水の量で降水量を割れば大体の数が割り出せる。

あまり意味のない計算なのだが、

落ち着かないときは必要のない計算をしている。


3日前のことだった。アパートのドアポストに

とある封筒が入っていた。

手のひらから少しはみ出るくらいの

小さな封筒だった。

厚みが少しあり差出人の名前はなしで

間違いと思ったが、裏にカードがついていた。

カードには僕の名前と文が添えられていた。


水は雨となり川となり海へ還るが

人が何になりそしてどこへ還るのだろうか


よく分からないが危険はなさそうだった。

テープで仮留めされた封筒を開けると、

数字の羅列とよく分からないデータが並んでいた。

アナグラム…?謎の数字と謎のデータ

送り主は何を自分に望んでいるのかまるでわからなかった。


3日間悩み何も思いつかないまま今に至る。


僕は文章を書き、暮らしている。

元々数学をしていた事からは考えられないが

代数や解析は頭を責めあげるだけで

あまり必要なものとは思えなかった。

大学を中退し知り合いの小さな出版社に入った。

僕には人を指導できるような頭も経験もなかったが、仕事には精を出していた。

だがそれも数年でやめ、引き篭もった。朝日が目に刺さるようになるまで日はかからなかった。

PCモニターのブルーライトを浴びながら打ち込んでいくと、別の生き物になっていく気がしてくる。

金が足りないときは、バイトをし生活用品を買う。


こうして25歳を過ぎ26歳の冬を迎えようとしていた。 

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