「私がサンタであるということを漸く察したのは、数分後でした。しかし、彼女が戻ってくるまでの間に気づくことができたので、何とか容赦いただきたいものです。彼女が、私が彼女の仕合わせのためにできる分かりやすい行動例の示唆をくれたことも同時に察しました。彼女が確実に喜ぶことを彼女のほうから教えてくれるのですから、こんなに賢くて有難いことは在りません。へやに戻ってきた彼女の手の内には、先ほどより一回り小さな火鉢が――そういえば、昔使っていたものが押し入れにあったことを思い出しました――静かに温もりを灯していました。私はそれを見て、自分自身の仕合わせを感じました。兎も角、私は今暫らくは、彼女を信仰して生きていくことに決めたのです。

 此処まで稚拙ながらも懇切丁寧にご説明してきたのは、貴方が折角語り継いでくれた嘗ての話を、私にはどうやらちゃんと語り継ぐことは出来なさそうであるということを、あなたに受け入れていただけることを期待してのことです。私の弱い部分、不甲斐ない部分、恥ずかしい部分、御嬢さんへの想いも含めて、在りのままをすべて曝け出したつもりです。期待に応えられないながらも、すべて話してくれた貴方への感謝と返礼の想いもあります。

 貴方が話をしてくれたことは、私の人生にとって有意義な経験でした。このような彼女との語り合いも、私の胸中の変化も、貴方の話を端にしなければ凡そ有り得なかったか、有り得たとしても、ずっと先の未来、もう私が成熟しきって、自分の考え方を変えるには容易でなくなったころだったかもしれません。本当に感謝しています。しかし、恐れ入りますが、語り部に関しましては、適役を見つけてそちらにお任せください。私は私の仕合わせのために、この選択をしました。貴方の期待に応えられず恐縮ですが、最後に、これだけは云わせて下さい。貴方の仕合わせを願っています。メリークリスマス。どうか、お身体には充分気を付けて、仕合わせな休日を過ごして下さい」

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返書 友人と彼女 森音藍斗 @shiori2B

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