幼馴染のえっちな交渉術の前に敗北しよう!
「服を脱ぎ続けるって……ばっ、馬鹿! ふざけたこと言ってないで、さっさとズボンを履け!!」
「い~や~で~す~! 幸ちゃんが布団を使うって言うまで、私は折れませ~ん!!」
焦る幸太郎の意見を一刀両断し、大きな胸を支えるように腕を組むかすみ。
ふんす、と鼻息を荒くする彼女の表情と声色から本気具合を感じ取った幸太郎は、昔からこうなった幼馴染が意地でも折れなかったことを思い出して戦慄する。
「待て! 落ち着け!! 一旦、その手を止め――」
「止めませ~ん! 止めたければ、お布団を使うって言ってくださ~い!」
「ぐおぉぉぉぉぉ……っ!?」
そう言いながら、上のパジャマに手をかけるかすみ。
目を閉じて彼女の痴態を見ないようにしようとした幸太郎であったが、かすみは彼のその行動を読んでいたかのように声をかけた。
「目、閉じていいの? いつの間にかすっぽんぽんになった私が、幸ちゃんに抱き着くかもしれないよ?」
「なっ……!?」
「ちなみにだけど……私、寝る時ブラジャー着けてないから。パジャマの下は何も着てないよ~! このまま脱いじゃったら、おっぱい丸出しのかすみちゃんが爆誕しちゃうわけだけど~……それでいいの?」
「ぬっ、ぐぅぅぅぅ……っ!!」
「あ、ちなみに私はGカップです! 大きいでしょ~!?」
「報告すんなっ! お前、ホントにさぁ……!!」
無視を貫けなくなった幸太郎が目を開けながらツッコミを入れれば、かすみは嬉しそうに悪い笑みを彼に向けてみせた。
羞恥で顔を真っ赤にする幸太郎は、頭を抱えながらそんなかすみへと言う。
「ぐぅぅ……! お前、馬鹿じゃねえのか……!?」
自分を犠牲にし過ぎているかすみの交渉手段に、幸太郎はそう呻くことしかできない。
尊厳だとか恥じらいだとか、そういう乙女として大事な物をどこに置いてきたんだとツッコミたくなったが、ここでかすみを刺激したら更に不利になる気しかしない彼は状況を打開する方法を懸命に模索するも、かすみはそんな幸太郎の選択肢を潰すように解説を始める。
「さて、こうなると幸ちゃんにできることは、諦めて布団を使うか、この家を出ていくか、完全に私を無視するかのどれかだね。その内、後ろの二つを取った場合、私は全裸のまま、布団も使わずにここで過ごすから。寒い冬の夜、服も着ないで寝転がったりしたら、絶対に体調を崩すよ? 幸ちゃんは、大好きな幼馴染がそんな目に遭ってもいいの?」
「ズルいぞ、お前……! 自分を人質に取るんじゃねえよ……!!」
「幸ちゃんが強引過ぎるから悪いんだよ? 私だって、幸ちゃんに負けないくらい幸ちゃんのことが大好きなんだからね?」
自分がかすみのことを大切に思っていることを利用したやり口に対して、幸太郎が恨み言をこぼす。
それに対して、自分もまた幸太郎が大切だからこそ、こんなことをしているんだと答えたかすみは、にっこりと笑みを浮かべながら彼に究極の選択を迫ってみせた。
「さあ、どうする? このまま私が裸になるまでそこで見てる? それとも、観念してお布団を使う? 私はどっちでもいいんだよ、幸ちゃん?」
(ま、マジでどんな状況だよ、これ……!?)
普通の男ならば狂気乱舞するシチュエーションなのだろうが、幸太郎からすればかなりマズい状況でしかない。
まさか、ただ布団を幼馴染に譲ろうとしただけでこんな展開になってしまうなんて……と困惑しながら、幸太郎は必死にかすみを説得しようとする。
「ま、待て! わかった! 一度話し合おう!! とりあえず、冷静になって服を着ろって! なっ!?」
この提案は半ば時間稼ぎではあるが、同時に幸太郎自身が冷静になりたいがための提案でもあった。
目の前にパンツ丸出しの幼馴染の姿があっては、まともに思考が回るはずもない。
まずは落ち着いて話をするために服を着てくれという彼の提案を黙って聞いていたかすみは、大きなため息を吐くと共に口を開く。
「……わかったよ。幸ちゃんの意見はよ~くわかった」
「そ、そうか、わかってくれたか……!!」
そう言いながら、くるりと振り返ったかすみの姿を見て、安堵のため息を吐く幸太郎。
とりあえず、最悪の事態は回避できたと安心する彼であったが、そんな彼の想いを打ち砕くかすみの一言が響く。
「うん。幸ちゃんが何もわかってないってことがよ~くわかった」
「は……? っっ!?」
バサリ、と宙を舞ったパジャマが畳へと落下する音が聞こえた。
幼馴染の言葉に驚いて顔を上げた幸太郎の目に、パジャマを脱ぎ捨てた彼女の綺麗な白い背中と、その脇から覗く大きく柔らかそうな二つの球体が映る。
「か、かす、み……?」
「幸ちゃん、私はね……お話がしたいんじゃなくって、要求を呑んでほしいんだ。その時点でまず、何もわかってないんだよ」
見返り美人のように振り向いたかすみが、淡々とした声で幸太郎へと言う。
拘束から完全に解き放たれた彼女の大きな二つの山は、そのほんの少しの動きだけでたゆんたゆんと揺れを見せ、されど最も刺激的な部分は見せないようにうまく隠されている。
「幸ちゃんが何もわかってないっていうなら仕方ないよね。わかってもらうために、私の本気を見せてあげる」
「ま、待て……! お、落ち着いて――!!」
ゆっくりと、後ろ姿を見せつけるかすみが足を肩幅に開いていく。
ぽよんぽよんと胸を弾ませていた手をショーツへと伸ばしていった彼女は、下着の腰骨に当たっている部分に指を引っ掻けてからお尻を幸太郎へと突き出しながら、蠱惑的な笑みを彼に向けながらそれをずり下ろしていった。
「のあっ!? ぬぐぃ……!?」
細いうなじと綺麗な背中。その両脇から見える綺麗な形をしたかすみの胸が、柔らかさを主張するようにかすかに揺れ続けている。
上半身だけでも十分過ぎるくらいに刺激的だというのに、彼女は今、小柄な体躯に見合わないほどに大きな丸い尻をこちらへと突き出し、最後の砦である下着を脱ぎ捨てようとしているのだ。
「……さぁ~ん」
「か、かすみ? ちょっと待て! おいっ!」
尾てい骨を過ぎ、尻の谷間が少しだけ見えるヒップトップの位置までショーツをずらしたかすみが、そこで一度手を止める。
幸太郎が自分を見ていることを確認した彼女は、浮かべている蠱惑的な笑みを更に強めながら、意味深なカウントダウンを開始した。
「……に~い」
「待て! 待てって! 頼むから!!」
幸太郎の中では、あのカウントダウンを止めなければならないという自分と止めない方がいいのではないかと考える自分が存在していた。
かすみが何をしようとしているのかなんて、比較的鈍い自分にだってわかる。
彼女にそれをさせてしまったが最後、何かとんでもない事態に発展していくことは明らかだ。
「……い~ち」
「~~~~っ!!」
ふりっ、ふりっと目の前でかすみの大きなお尻が左右に振られた。
試されているのか、挑発されているのか、今の幸太郎にそれを判断する余裕はない。
かすみの腕の筋肉が僅かに収縮し、腕を伸ばすための予備動作をしたことを見て取った瞬間、幸太郎は自分でも驚くくらいの反射速度で叫んでいた。
「わかった! 俺の負けだ!! 布団を使うから、マジでストップ!!」
「……にしししししっ! 私の勝ちぃ! じゃあ、お布団に入って」
言われるがまま、匍匐前進で布団の中に潜り込む幸太郎。
恥ずかしさや動揺で動揺しっぱなしの彼が布団の中で顔を覆う中、その腹にドスンと重い何かがのしかかってくる。
「うぐえっ! お、重……っ!!」
「失礼な! あっ、もしかして身持ちが固いって意味でお尻が重いって言ってくれてるわけ? それだったら許~すっ!」
どすっ、どすっ、と幸太郎の腹へと大きなお尻を浮かせては落とし、また浮かせては落とし……と繰り返したかすみが笑顔で言う。
しっかりと服を着直した彼女は幸太郎の上に乗ったまま顔を近付けると、試すような笑みを浮かべながら彼へと尋ねた。
「それで? 私はどうすればいいの? 床で寝た方がいい? それとも――」
かすみの問いかけに対し、呻くこともできなくなった幸太郎が口から悶絶の吐息を漏らす。
もうどうにでもなれ……という投げやりな思考を抱いた彼は、自分を見つめる幼馴染が望んでいるであろう答えを返してやるのであった。
「使えよ、布団。もうどうにでもなれだ……!」
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