幼馴染とちょっとドキドキの展開
「……お前、何言ってんだ? ふざけてるなら、今すぐ止めろ」
「ふざけてなんかないよ。私……幸ちゃんになら、何されてもいい」
僅かに俯きながら、恥ずかしそうに顔を赤らめながら、幸太郎へとそう告げるかすみ。
自分を落ち着かせるように呼吸を繰り返した後、顔を上げた彼女は潤んだ瞳で彼を見つめながら更に言う。
「男の子の家に転がり込むんだもん。何もされないだなんて思ってないから。幸ちゃんも少しは期待してたでしょ?」
「してねえよ、そんなこと」
「うわっ、即答だ。そうなると逆に傷付くんだけど」
家賃を体で払うというかすみから視線を逸らしながら、呆れた様子の幸太郎が答える。
どうやら本気でそういったことをするつもりがなさそうな彼の態度にちょっとだけ傷心しながらも、そんな幸太郎の気持ちを変えさせるためにか、かすみは更に過激な真似をし始めた。
「ねえ、こっち見てよ。かわいい下着を選んできたんだからさ、私の努力に応えてくれてもいいんじゃない?」
「………」
「……誰も、幸ちゃんのことを怒ったりしないよ? だから、ほら……こっち、来て」
たわわな胸と愛らしい下着を彼に見せるようにシャツをはだけさせたかすみが、腕を開いて幸太郎を呼ぶ。
上気した頬と潤んだ瞳。そして、甘く蕩けるような声……半脱ぎになった服から覗く白い肌も合わさった幼馴染の蠱惑的な姿を一瞥した幸太郎は、小さく息を吐いてから彼女へと近付いていく。
「……っ」
かすみには、ドクン、ドクンと脈打つ自分の心臓の鼓動がうるさいくらいに大きく感じられていた。
身勝手な頼みを持ち掛けた時点でこうなることは覚悟していたが、それでも実際にその時を迎えると少し怖い。
それでも……こんな自分を事情も聴かず受け入れてくれた幸太郎に報いる方法はこれくらいしかないと、そう自分に言い聞かせた彼女がごくりと息を飲んだ瞬間、緩い手刀が頭に打ち込まれた。
「あてっ……!?」
「馬鹿か、お前。もっと自分を大切にしろ」
その声に顔を上げたかすみは、自分を真っ直ぐに見つめる幸太郎と目を合わせる。
今度は視線を逸らさずに自分のことを見てくれている彼と見つめ合う彼女へと、幸太郎はこう続けた。
「この部屋の家賃は一万、二人で折半したら五千円だ。お前は、五千円で好き勝手できちまうような安い女なのかよ?」
「それは……そうじゃない、けど……」
「だったらもっと自分を大事にしろ。俺は、お前に手を出せるから同居を認めたわけじゃねえんだからな」
「……ごめん」
真面目に自分のことを思って説教してくれる幸太郎へと、小さな声で謝罪するかすみ。
先の自分の発言は、幼馴染が邪な気持ちを理由に自分を引き取ったと思われかねない、それこそ彼を傷付ける言葉だったと猛省する。
純粋に、真剣に……五年ぶりに再会した自分が、何か深刻な事情を抱えている様子だから手を差し伸べてくれた。
今の自分の行動はそんな幸太郎の優しさを否定するものだったと、そう反省するかすみに対して、やり切れない表情を浮かべた幸太郎が言う。
「……そういうこと、してたのか?」
「え……? そういうことって……?」
「だから……体で支払うとか、そういうことをその……」
「ちっ、違うよ! 本当に違う!! こんなことしたのは幸ちゃんが初めてだし、そもそも私、これまで彼氏だって作ったことないんだから!!」
自分の不用意な発言から悪い方向に想像を働かせる幸太郎の言葉を、かすみが大慌てで否定する。
確かにそう思われかねない言動だったし、家を出た他人に言いにくい事情がこれに関連するものなのではないかと邪推されるに十分過ぎることをしてしまったと、その部分に関しても反省する彼女が必死に幸太郎へと自身の潔白を訴えかければ、彼は安堵した表情を浮かべながら頷いてくれた。
「そっか……まあ、安心したよ」
「……信じてくれるの?」
「一応、幼馴染だからな。お前が嘘を吐いてないってことは何となくわかるよ」
幸太郎の返事に、嬉しさと申し訳なさを同居させた複雑な表情を浮かべるかすみ。
そんな彼女を一瞥した幸太郎は、視線を逸らしながら話題を変える。
「とりあえず、服着ろよ。今から出掛けるぞ」
「今から!? 帰ってきたばっかりだっていうのに、どこ行くの?」
帰宅早々に出掛けるという幸太郎に対して、当然の疑問を投げかけるかすみ。
ニヤッと笑いながら彼女の方を向いた幸太郎は、どこか得意気にその質問に答えを返した。
「銭湯。ひとっ風呂浴びに行こうぜ」
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