第2話 それはまさに勇者のようで…

実地検証 No.01


イカリ・レイ(ホムンクルス)パイロットとし、新型機動ゴーレム[kp-S Karma Node]を戦場に投入。敵魔導兵器[魔導人機]並びに[指揮所]を破壊。戦果は上々なり。しかし、想定外とされる超高機動域の出力を出した為パイロットのイカリ・レイは重症を負う。検証再開は翌月末に再調整。


以下、戦闘記録となる。





その日の前線はかなりの激戦だった。攻め込まれ蹂躙される味方。ゴーレムがいとも容易く破壊されていく。


運が無かった。居ないとの報告だったのに居たのだ。敵の魔導人機が。


どんな攻撃も受け付けない巨大な悪魔。見下される恐怖で俺は動けなくなってしまっていた。


全滅を覚悟したその時。突如として攻撃を受けて体制を崩し、横転した魔導人機。そこへ凄まじい勢いで格闘戦を行った白銀の機体。


見たこともない装甲を身に纏うゴーレム。伝説の勇者のような神々しさを俺は感じた。


天を穿つ轟音。大地を割る衝撃。そして、自身を吹き飛ばすほどの爆風が起こり。砂埃が晴れる頃には魔導人機は粉々に砕け散っていた。もはや原型すら無い。


英雄だ。白銀の英雄はそのまま地上の魔族を蹴散らし、大地の更に奥。敵地へと突進していった。


周りの兵士が皆歓喜していた。


俺も含めてみな口々にこう言った。


『白銀の英雄、万歳!!』





***





遠くから出撃した際。彼女の脳内ドーパミンは正常だった。しかし、魔導人機を見た際に異常なまでの感情の起伏が発生し、自我を失った。


すぐさま停止を行おうとしたが、どれだけボタンを押しても停止しない。最終的に我々はただ黙って見送り、データを収集する他なかった。


彼女が戦闘に介入する。その瞬間またもや異常なまでの魔力を感知し、想定外の出力を擬似筋肉繊維体へ伝達していた。瞬間最高速度は148m/s。パイロットの内臓はミンチどころではないだろう。


しかし、その後の戦闘には特に問題が無かった。命令を無視して指揮所まで潰しに行った時は機体の回収まで諦めそうになったが、なんとか成功してみせた。これによって一つの戦線が押すことが出来たわけだが、こちらとしては想定外の戦果に上層部への報告にかなりの労力を費やした。即座に量産しろと言われても今の我々ではなぜあんな事が出来たのかわからないのだ。


多重複合装甲に解析不能なまでの高度な魔法防御壁を持つ魔導人機を倒すなどとは考えていなかった。データは取れたがそこから解析できるのは理論上不可能だった事が可能になったとだけ。理由がわからない。


そしてその後の指揮所だ。指揮所には何千もの魔族が居たはずだ。それをどうやって突破したのかはわかっている。ホムンクルス特有の超能力だ。


ホムンクルスには人間より超えた知覚を持ち、人間より低い学習能力がある。今回は単純にだけであり、普通の人間には不可能。ましてやホムンクルスなどそう簡単に作れるわけではない。機体と同じほど重要なのだ。


そういった課題点を総合すると量産しても常人には扱えず資源の無駄遣いになるだけだとなった。普通ならここから常人用に直すのだが、いかんせん元から常人用にしていたのでこれ以上下げると次世代機ではなくなるのだ。


最低限の世代性能をやっと満たしたのだ。技術者として最高の機体に仕上げたと自負している……のだが。それをわざと弱体化して遅れなどとしてみろ。パイロットが毎日枕元で教習内容を復唱し続けるぞ。


それだけは勘弁だ。早く原因を調査して再調整を施さなければ………その前にホムンクルスを解剖したほうが良いのだろうか?

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辺境伯の研究ウサギ デルタイオン @min-0042

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