辺境伯の研究ウサギ

デルタイオン

第1話 辺境伯の研究所

約10年前から魔族と人間はいがみ合っていた。


人間は角を折り、魔族は皮膚を裂いた。


人間は翼を切り落とし、魔族は腕を切り落とした。


人間は魔族を嬲り殺し、魔族は人間を喰い殺した。


それでもまだそこまでであったと言えた。しかし、時間が進むにつれて遂にがその内なる欲望の壁となる魔族を殺した。


魔王は恐れた。このまま人類が増え続ければ手遅れになるのではないかと。


そして、人類と魔族の全面戦争が勃発した。


しかし、最初から人類は劣勢であった。生まれ持ってして体が大きかったサイクロプスや、あらゆる魔法が効かないバンドッグ。3つの頭を持つケルベロスといった大型魔族の攻撃は攻城兵器として大いに有効であった。


これに対抗して人類はカタパルト投石機バリスタ大型弩砲といった対抗する手段を開発した。これで3年は均衡を保っていたが、魔族はそれに更に対抗するように新兵器と呼ばれるものを開発した。


その名は魔導人機。魔族側だとゴーレムと呼ばれているそうだ。なので開発者に敬意を表してゴーレムとここからは書くべきだろう。そのゴーレムは岩をもろともせず、矢が刺さっても痛がらず、刃は黒曜石のように良く切れ、盾は傷一つ付かない。そんな兵器だ。


その後もこれに類似したものが現れ続けた人類は死に損なった。いくつもの都市が落とされたが、それでも諦めずに足掻いた。


そして、首の皮一枚繋がったのだ。


魔導エンジン。詳しく説明するとこの紙の余白は少なすぎるが、少し説明するだけなら足りない事も無いだろう。


魔導エンジンはその実変換論理は単純で、魔力を魔導円陣フィルターに通し、エネルギーに変換させて各部へ伝達させるという物凄く簡単なこと……に聞こえるが、それを実際に再現するとなると様々な問題が起きるのだ。なにせ魔力は炎、水、風、雷、土と大量の変換先があるのだ。どれが一番効率が良くて安全なのか実験するだけで35人の死傷者を出したのだ。どれだけ危険で難しいかわかるだろう。


ちなみに一番効率が良かったのは土だった。が、その他で色々な問題を起こしたせいで使われていない。


現在使われているのは雷だ。あのゴーレムも同系統の魔法だとわかっていたのでこれを軸に進める事が決定した。


その後も様々な課題をクリアした結果誕生した人類の救世主たる新兵器。その名はゴーレムと言う。


ややこしいのでこっちを魔導人機にしよう。この魔導人機は魔族側のゴーレムとは違い万物を斬る剣も全てを防ぐ盾も持たない。代わりに機動力がある。


そして、様々な兵器を使用可能とする万能の手がある。これだけでなく、魔力をそこそこ使えれば誰だって操作が可能なのだ。


こんな新兵器が誕生し、また拮抗し始めたこの大戦も早くも2年。


さて、そろそろこの本の本題である私の新兵器についてだ。この新兵器は今までとは違う。別次元の性能を持っている。我ながら恐れる物を作った。超兵器と言っても良いかもしれない。


轟音の代わりに絶大な熱と風を生み出す薬と、小型化に成功した変換機構を搭載した勇者の剣に近しい剣。


それを作り出したのはそう!!この私!!第17403辺境伯のメリエッタ・シルバー研究所所長メリエッタ・シルバーである!!


そしてテストパイロットであるイカリ・レイ。この子の能力さえあれば実地検証もデータ収集だってなんだってできる!!しかし、問題が一つあるとすれば彼女がホムンクルスだということだ。


レイはホムンクルス故に耐用年数や耐久性に難がある。まあでもそんなのを見越して運動時の高速機動に合わして身に掛かる圧力を分散させる装着に専用のスーツを着てもらう事で一般のパイロット以上の性能が出るはず!!


久しぶりの実験………あまり魔族に恨みは無いけど、良いデータ採れるといいわぁ!!

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