第10話 校長

「この小説のここは…」


今は授業中である。


「…と悲しみを表していますが、この前の段落では全く…」


もう一度言う。二時限目の授業中である。


「…「あなた」は彼女ではなく、生き物…」

『チキン食べたい…』


授業中である…。


「では、ここに…」

『草wwww』


うるせぇ。


自分の頭の中に響いてくる声に悩まされている。が、どうしようもない。この学校に所属する以上…


この声の主はこの学校の校長、中野なかの勇次ゆうじ校長の心の声だ。俺が人の声が聞くことができる能力で聞いている訳でなく、。校長の能力によって聞かされている。


『くぁwせdrftgyふじこlp』


なんかミスったな…。


迷惑に思うかもしれないがこれにはちゃんとした事情がある。というのも校長は能力を無意識に使い、ある範囲にいる全員に自分の心の声を伝えてしまうという。幼い頃からで病院にかかっても治せず、時には「能力をろくに使えもしない屑」などひどい言葉を言われたそう。当然就職も不利だったが中学生の時、田舎で思いついたそう。


「一人に集中させれば良いんじゃね?」


そうして範囲内の一人にだけ集中して声を届けることで他の人に届かなくなるようにできたらしい。


校長になれたのも学校内の人の同意が得られるような環境であったことや、集中させないと心の声がダダ漏れであったことが功を奏し誠実であることが証明できたからだ。


毎年、新入生にこのことを伝えてその対象にしていいか聞いてる。もちろん最初はほとんど許可する新入生はいなかったが…


『今日はハンバーグかな…小さくないといいんだけど…』


大人としてどうなんだと思うが、マジで聖人なので噂が広まり2~3ヶ月で8割ぐらいの新入生が許可を出す。


『疲れた~飴でもな~めよ』


アンタはちゃんと働け。


『分かりましたよ~』


ちなみにこっちの声も校長が集中している間は伝えることができる。


====


こんなんでも全体に指示が必要な時は役に立つ。

一気に先生たちに伝えられるので避難訓練はいつもスムーズに進む。もちろん伝えられるのは先生に限った話では無く、生徒もだ。


『避難訓練です。生徒の皆さんは先生の指示に従って避難指定場所まで行ってください。先生方は完了したら私にすぐに報告してください』


こんな風にだ。正直非常時に放送器具を使わずに情報を伝えられるのは強い。


『本当は長話をしたくないんだけど、話さなきゃいけないんだよな~』


校長の話って強制だったんだな…

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