第9話 マサムネ

ここは月野夜つきやよ市。昔ここで夜の月が一番綺麗に見えて、周りに森などが無い平野だったことからそう名付けられたとされている。

あくまで昔なだけで東京の一部であるこの市には建物が乱立し、住宅街になっている。背の高い建物が少ない影響か…


ウゥゥゥゥゥ~

「止まれ!速度違反だ!」

空をかなりのスピードで駆ける魔導車を追いかける警察がいる。

他に目を移すと、魔導具の靴を履いて空を走る会社員。


ビュン!

空に作られたフィールド内で魔導具の箒にまたがり練習をする学生。

遠くにあるビルの外には魔導具にまたがった作業員が手入れをしている。そんな感じに人が空に当たり前のようにいる。そんな世の中になったが、じゃあ昔、空で自由に飛んでいた鳥たちはどうなったかというと…


『おい。飯』

「はいはい。毎回思うけどその口調どうにかならないのか?」

『口調などどうでもいいだろう?飯』

「これでいいでしょ。で、物は?」

『これだ』


こんな風に現在もいる。会話ができているのは翻訳機のおかげ。鳥としゃべることができる鳥の獣人種によって作られた翻訳機なので精度は100%に近い。これにより人の言うことが理解できた鳥はルールを理解し、事故をほとんど起こさなくなる。ペットとして飼う人がかなり多い。


コイツは俺の家で飼っている鷹、マサムネだ。今は出された肉をついばんでいる。口調がきついが餌さえ渡せば指示には従ってくれる。


『満足。次は水浴びだ』

とマサムネは飛んで風呂場まで向かっていく。マサムネ自身で勝手にシャワーを使うことができるので放置しておく。それよりも…


ガサガサ

「うん、ちゃんとあるね」

マサムネに頼んだのは配達の受け取り。軽いものであれば鳥類に限り近くの配送所から運ばせても良いという規則がある配送会社に頼んでいるのでいつもマサムネに頼んでいる。


今回は本を持って来てもらったのでそのまま読む。


====


しばらく読んでいて少し休もうとして気づいた。


「あれ?まだ帰ってきてないのか」

マサムネが帰ってきてないことに気づき、下に降りると…


『あぁ。母上。そこがいい』

「おお~。ここがいいんだね。よしよし」

マサムネは俺の母親の佐藤おぼろのマッサージを受けていた。


「…何やってんの?」

『シャワーの最中さいちゅうに母上に会ったのでな。気持ちよくしてもらっているのだよ』

「いいじゃない。マサムネ君も気持ちいいみたいだし。ねぇ?」

『うむ』

「はぁ~」


マサムネは母の言うことは無条件で聞くし何でもやる。俺とは大違いだ。


====


ちなみに…


「露骨に隣(澪の家)を避けるよね。まだ怖いの?」

『あぁ、今でも震える』


マサムネが怖がっているのは…


『…』

「征人おはよう!マサムネもおはよう!元気?」

「元気だよ。マサムネは今元気を無くしたけど」

「…あぁ、やっぱり?」


龍人種である澪ではなく…


ぴょん

「こらこら、危ないよこのみ」


澪のペットであるウサギのこのみだ。空中で蹴りを食らって以来、トラウマになっている。


『…怖い』

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