第5話 佐藤 征人(澪視点)

佐藤さとう征人ゆきとは私の一番の幼なじみと言ってもいい。それぐらいに付き合いは深い。

幼稚園の頃に私の家族が征人の隣に引っ越してきてから交流があり、プールなんかも一緒に行ったし、ピクニックやクリスマスパーティーなんかも一緒にやった。運動会なんかはいつも親がビニールシートを隣に敷いていたりした。今はお互い高校生ということもあり、そういう機会は減った…


「ねぇねぇ。ここ行かない?今度の週末に。ねぇ!」

「なになに?…温泉街ねぇ。いいじゃないか!」

「お前の目的は旅館とのコラボだろ?」

「それもあるが、やはり温泉というのはいいものだよ。征人」

「澪も行こうよ!交通費浮くし!」

「なんで私に乗る前提なのよ…。ちょっと見せなさい」


今は私含めた四人組でいろいろなことをやっている…というか私が巻き込まれている。まぁ、楽しいからいいけど…


「へぇ、あんみつねぇ。美味しそうね」

「だからいいでしょ!一生のお願い!」

「樹理の一生はいくつあるのかなぁ~」

「ひぇ!」

「じゃあ、そのあんみつ、おれがおごるから」

まぁ~

「…分かったわ。後で集合時間は連絡するから」

「やった!」


こういった場面ですぐさま頭が回るのが征人のいいところだ。私だって樹理のことを悪くは言えなくなる。


家は隣同士であるので下校は何か無い限りはいつも一緒だ。

「本当に良かったのか?受けて…」

「あんみつおごってくれるんでしょ?」

「まぁ、そうだけどよ」

「征人はこれ狙いでしょ?」

私が見せた端末には…


『戦国の世の発掘品の大展示会』

『魔導具の歴史的発明品が見られるのはここだけ!』


「そうだな」


征人は大の歴史などの過去のものが好き。小学生のころから博物館に行き、発掘品の展示会があれば長蛇の列に並ぶ。もちろん私もついていったけどほとんど分からなかった。今では電子版の歴史書を読んでいる程だ。


「予約あるか見ておこうか?」

「あぁ頼む。予約自体は俺がするよ。…そういえば泊まりがけでいいんだよな?」

「あ~そういえば聞いていなかったなぁ」


ガチャ

『はいはい!なに~』

「あ、樹理。そういえば今週末って泊まりがけ?」

『うん!それでいいよね?』

そうじゃないのかい?という声が電話越しに聞こえた。樹理は海斗といるのか…。

『旅館のURL送るからそこで。じゃ!』

ガチャン


「もういきなり切るんだから」

樹理から送られてきたURLをそのまま確認せずに征人に転送する。


「…ここでいいのか?」

家に着いた。

「うん、いいよ」

玄関を開け入ろうとしたとき


「混浴だぞ」


「え!ちょっと待って!」

すでに征人は家に入ってしまった。

混浴もあるというだけで男湯、女湯に別れている温泉もあるということを後で知った。


征人は時々いじわるになる。

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