第3話 四家 樹理

百野びゃくの高等学校、俺が通う高校の名前だ。

この高校のカリキュラムには魔法の授業が含まれており、特に百野高校には魔法分野の成績優秀者の為の推薦制度がある。


「ムニャムニャムニャ…」


そんな制度を使って入学してきたのがコイツだ。


四家しけ~。寝るな!」

「…~う~ん?寝てませ~ん」

「寝てるだろ!ここの問題を解け!」

「え~。分かりませ~ん」

「は~。じゃあ村野、解け」

「はい」


四家しけ樹理じゅり。俺の席の隣の女子で数少ない百野高校のある東京の外の出身の子である。普通の科目の勉強はそこそこ、理系科目は苦手で数学の授業は寝ている。そんなだからいつも赤点ギリギリである(流石にテスト前は必死に勉強している)。

そんな彼女だが特筆すべきなのは…


バキン!

「うん。流石の威力ね。今回もたぶん一位ね」


天才という一言では言い表せられないほどの魔法の才能。現在一般に公開されている魔法のほとんどが使えて、魔力の貯蔵量も学生ではトップクラス。魔法理論も人に教えられる程度にはできる。魔法においては一流といって過言ではない。


今回の授業の魔法の威力計測も氷魔法で当たり前の様に機器を壊している。

「良し!OK!」

「ふむ。四家君、今日も素晴らしい魔法だね!」

「…素晴らしいの?」

ちなみに五十木は三から六位ぐらいを行ったり来たりしている。

その五十木とは違い、四家は別に魔法にこだわりがあるわけではなく、できるからやっているだけだ。そんな四家の将来の夢は…


「ケーキ屋さんになるためにはどうすればいいかな?やっぱり作り慣れないとなれない?」

「それはそうだろ。売らないといけないんだから味や見た目は大事だろ」

「え~~。自分で食べる為なんだけど…」

「ならケーキ屋をやる必要は無いだろ」

「ほら、ケーキとかお菓子とかに囲まれる生活って…夢じゃん?」

「金持ちになれよ。そうすれば一人でやり放題だぞ。お前の魔法ならいくらでも稼げる仕事につけるだろ?」

「魔法…つまんない。得意だけど仕事はいいかな」


「甘いものに囲まれて人生を過ごしたい〜」

「今でも高級菓子は食べてるだろ?」

「ちっちっち!高級菓子だから自分に合うとは限らないのだ!」

四家の家は金持ち。友人として実家に招待されたが、大きな庭がついた屋敷だったのを覚えている。また今、こいつ自体は一人暮らしをしている。みおいわく、「いいもの食べて生活しているよ」だそう。


「四家!いるか?」

「なんですか?先生」

「ちょっと来い」

「は~い」


====


数分後、四家が帰って来た。


「なんかあったか?」

「…再試だって」

「なにが?」

「…体育」


四家の運動神経はほどほどだろうから筆記のテストの再試験だろうけど…、体育に再試ってあるんだな…。

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