第4話
今日は私の好きな漫画の発売日だ。あー、早く学校終わらないかなー。と思いながら終礼の話を聞き流していると気になる話を耳にした。学校の近くのアンダーパスで不審者が出るらしい。「みんな気をつけるように。」という先生の顔は緊張していて、「ああ、そんなに危険なのかな。」とどこか人ごとのように思っていた。私も通学の時にアンダーパスを通る。しかし私にはドアがある。ドアさえあれば危険な外なんか通らずとも家に帰れるのだ。挨拶を終え、純香の席に行くと「刃物とかも持ってるんだって。怖いよね。」と言って怯えているようだった。「でも噂になるぐらいだったらすぐ捕まるでしょ。」と軽く流し、「じゃあね。」といって学校を出る。最新刊楽しみだな、どんな展開になるんだろ。とワクワクしながら本屋に向かう時、ふと気づいた。本屋に行くためにはアンダーパスを通らなくてはならない。昼間とはいえ、流石にあんな話があった後だし、少し怖い。アンダーパスの前で少し立ち止まるが、すぐスタスタと早足で歩き出す。なんだ、誰もいないじゃんと思っていると後ろに人の気配がする。荒い呼吸音と、ずりずりと足を引き摺りながら歩く音が暗いアンダーパスに谺する。
弾かれたように振り向くと、猫背で下を向いている人が目に入る。その人の手に、きらりと光る何かが、、、
「きゃぁぁあ!」と叫びながら脱兎の如く駆け出す。走るのに向かないローファーを必死に動かし、少しでもその人物から距離を取ろうとする。後ろから走る音が聞こえる。アンダーパスが無限に続いているような錯覚に陥る。それでも必死に駆け抜け、階段を駆け上がってようやく陽の光の元に出る。後ろを向いても、もう追ってきてはいないようだった。
「なんなの。もう嫌ぁ。」泣き出しそうになるのを必死に堪えて、交番に駆け込む。不審者の話をして、家まで付き添って帰ってもらう。
「怖かったね。」と慰めてもらい、家に入ってしっかりと鍵をかける。玄関でずりずりと腰が抜けてしまった。新刊を喜ぶ気持ちはもう微塵も残っていなかった。
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