今のところ、小説家

色葉みと

今のところ、小説家

 こんなことを聞かれた。


「将来の夢はなんですか?」


 これは一番困るやつ。

 すぐには答えられなかった。だが、聞いてきた大人に引き下がる気配はない。

 高校2年生の冬、大人からしてみれば卒業後の進路を決めてほしいときなのだろう。

 返事は一旦保留にした。


 私の将来の夢……。とりあえず、過去を振り返ってみるか。


 小学校低学年の私:

「しょうらいの夢? どうぶつのお医者さん!」

 犬猫アレルギーがあり、諦めた。


 小学校高学年の私:

「私の夢はパティシエになることだよ!」

 親戚料理人の話を聞いて自分には無理だと思った。かなりきついらしい。


 中学校前半ぐらいの私:

「うーん、……心理系の何か?」

 周りの人に勧められていたが、正直そんなに興味はなかった。


 中学校後半ぐらいの私:

「夢? 未来のことなんて考えられるわけがないよ……」

 暗黒の時代(自分史)だ。このときは日々生きるので精一杯だった。


 高校1年生の私:

「夢かー。科学者とか興味あるなー」

 理科が楽しい。考えても考えつかないようなことを研究する科学者に憧れた。だが、進路として考えれば考えるほど何かが違うと思うようになった。


 見事にばらばらだ。それに変化が多い。

 さて、どうしよう?

 そういえば、学校の先生は「自己分析が大切だよ」とよく言っている。

 自己分析、やってみるか。……頭の中で。

 本来は好きなものや興味のあることをことが大切なのだろうが、かなりめんどくさい。手っ取り早く色々な仕事が載ってるサイトを見ながら、頭の中で自己分析しても、いいよね? 


 仕事、仕事、興味のある仕事〜♪

 あ、この仕事、興味がある。……実現できたらすごいだろうな。まあ見るだけ見てみよう。


 ……やっぱり狭き門だ。

 他の仕事も見てみるか。


 〜30分後〜


 興味があると思える仕事がない! 唯一興味があるのは最初に見たあの仕事だけ。

 でも、あの仕事をやりたいって言ったら笑われるかもしれない。反対されるかもしれない。無理だって言われるかもしれない。

 ……待てよ。「かもしれない」って何だ? 可能性を可能性で潰してどうする。それに、これはあくまでだ。誰かに迷惑をかけるわけでもない。ただ、自分が可能性の道を示すだけ。

 それなら、興味があると、自分の夢はこれだと言っても良いのではないだろうか?


 そうと決まれば、将来の夢はあの仕事をやることだと返事をしよう。

 そして、過去の私に言おう。


 高校2年生現在の私:

「将来の夢? 今のところ、小説家になることかな」

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今のところ、小説家 色葉みと @mitohano

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