第65話 強化人間少女的人材引き抜き対策
エーヤ先輩とイーダミフくんを引き連れ、会社ならぬ開発課案内をしていた私達。シスとアウラの可愛らしい協力もあって、どうにか二人の協力を取り付けることに成功したのだった。
その後は雑談まじりに、ここ数日の私の活躍をお話していたのだが……キャラバンの護衛はいいにして、大森林深部のほうに話題が向いたあたりから、なにやら二人の顔が引き攣り始めたような気がしてきた。
まあ……それもそうか。
講義を欠席しまくった首席生徒の私が、輜重課の遠征のお手伝いで出掛けていたかと思ったら、じつは未知の集団との遭遇ならびに異なる文化との邂逅を果たしていました……などと聞かされたのだ。
見たこともない種族、聞いたこともない文化が存在していた、など……そうそう信じられることじゃないのかもしれない。
……まあ、信じてもらうしか無いわけだけど。ご覧のありさまですので。はい。
「…………とイウワケで、
「帰りは決まったら、またファオが送ってくれる聞いたヨ。偉いポイ『ヨシャーエ』の者、ソウ言てたネ。そのトキは頼むヨ」
「は、はぇー。……んう、わかりま、したっ」
「ウム。では、失礼スルヨ。……ナカナカに良い宿を取ってクレた、
「……夜更かしスルでナイヨ、フィーデス。借りた寝床を汚すも、湿らせるも駄目ネ」
「ナ、な、ナ、ナニヲ言うネ! 出先でそんなハシタナイはシナイヨ! 相変わらず失礼なヤツネ!」
――――なるほどお……やっぱフィーデスさん、寝るときは全裸派なのかな?
(エッ!? あっ…………えっ!?)
……あぶない、えっちな気分になるところだった。
そんなこんなで、その未知の集団『シャウヤ』の交渉人が、現在シュトを訪れている……なんていうお話をしていた丁度そのタイミングで、フィーデスさんとトゥリオさんが帰ってきたのだ。
どうやらお食事の場でヨツヤーエのダレソレと意気投合したらしく、滞在をもう何日か延ばしてあちこち視察して回るのだとか。
しかもその間の滞在に関しては、そのダレソレ高官が全額持ってくれるとかで……よほどごはんがお気に召したのだろうか、シャウヤのお二人はとてもいい笑顔で延長を告げ、いい笑顔のまま今夜の宿へと去っていった。
いやまあ、量産型が完成しないと本格的な交易は始まらないのは事実だし、交渉人たるフィーデスさんが『いい』というなら『いい』んだろうけど。
また彼女らの帰国日時が決まったら、私達にお呼びがかかるということで……そっちも軍部からの指名依頼として評価対象になるおシゴトなので、べつにぜんぜん構わないんだけど。
そっかあ…………寝るとき……
――――やっぱえっちな気分になっちゃってるんじゃん。
(そりゃえっちな気分にもなっちゃうでしょ、フィーデスさんの
――――ほかのひとをそういう目で見ないようにね、失礼だから。
(はいすみません)
――――それよか、イーダミフくんたちだよ。ほら、完全に硬直しちゃってるじゃん。
(ほんとだ。しんだかな?)
――――あっ、エーヤ先輩は生き返った。立ち直るのはやいね。
(さすがだぁ)
ああ、かわいそうなイーダミフくん。荒唐無稽に思えるビー◯サーベル……改め、ラ◯トセーバーにびっくりしていたところに、小柄たわわ美少女竜娘たちの襲撃を受けてしまうなんて。性癖こわれちゃったかもしれないな。
というか今更だけど、ライトセー◯ーは商標とか権利とかで危ないかもしれないけど、もしかしてレーザーソードとかならセーフなのだろうか。
おお、これは大発見だ。
……いや、そもそもビーム◯ーベル自体、わざわざ伏せる必要があったのだろうか。商標とは……無とはいったい。うごごご。
――――
(ええ!? だめ!?)
長いことヒトのみの国で生きてきた彼らにとって、さすがに別種族の女の子、しかも可愛らしくて正直えっちな彼女らの存在は、色んな意味で刺激が強すぎたようだ。
そういえば確かに……この世界はファンタジーな感じの異世界だとは思うのだが、エルフやら獣人やらをお目にかかったことがない。
もちろん、この世界のどこかに存在するのかもしれないが……少なくとも私の身の回りでは、このシュト近辺では見かけたことがない。
若い身空で、そんな貴重な体験をしてしまったのなら、まぁ弁護の余地は無いでもないが……しかし、今は私の
いくらあのふたりが可愛いくておっぱい大きいからって……満を持してのアピールとなる私達(の研究テーマ)をないがしろにされるのは、ちょっとだけ
「んむむ……エーヤせんぱい。イーダミフくん」
「お、おう!」「はっ……な、何だ!?」
「フィーデスさん、トゥリオさん。……おっぱいおっきい、好き、なった?」
「ぶっは!? いや!」「そんな、ことは……!」
「……あの、ふたり、とは……また会える、からっ! ……なので、今は、私のこと! ……ちゃんと、私達の、を……お手伝いを、する。わかった? いい?」
「も、もちろん!」「…………ぁ、あぁ」
「むふー。…………なら、よし」
――――ね、ねぇ、ファオ……あのね?
(うん? なあに、テア)
――――それ、いまの言いかた……とっても『しっと』に聞こえる、とおもう……けど……いいの?
(……………………はっ!?)
ふと我に返り、ぐるりと周囲を見回すと……イーダミフくんとエーヤ先輩は、なんというか気まずそうに目を逸らしたり、こめかみをポリポリと掻いてみせたり。
また……私の身内であり、立場上は忠実な部下であるはずの技術主任や設計班長も、なにやら『ほっこり』したような目で私のことを眺めており。
トドメとばかりに……私の直感というか、お得意の『他者の意識を感じ取る』魔法さえも――正直いって事実だと認めたくないが――私のまわりの人々が皆「また〜この子は〜可愛らしい嫉妬しちゃって〜」みたいな感じの感想を抱いているということを告げているわけで。
「ゆ……ゆるさない! から!!」
「「「「なにが!?」」」」
「ちがうし! ぜったい、違う、ので!」
「「「「だから何が!?」」」」
もちろん私だって、フィーデスさんのことは好きだが。かわいいし賢いし色々と協力してくれるし、そりゃ仲良くしたいが。
しかしながら……彼らは、私達に協力を表明してくれているのだ。だから貸してあげないし、
……うん、せっかく唾つけた優秀な人材を手放すのは、さすがに惜しいからな。彼らがよそに
「むー…………ふたりとも、いい?」
「お、おう」「……何だ?」
「私に、してほしい、あったら……ちゃんと、言って、ねっ?」
「「……………………」」
「……あの、わかった? 私、なんでも――」
「待て待て待て待て待て待て!」
「わかった! 理解したから!」
「う、うん。……なら、よし」
「「………………(はぁー)」」
そうとも。優秀な人材であるふたりに、我が社に対する興味感心を、もっともっと深めてもらう。それこそ……私にできる
……というかむしろ、この機会にさ、私としてはアッチの要求されたらバッチコイなんだけど。
いいかげんソッチの手段、用いていい?
――――だめでしょ。
(やっぱり? ……しょうがない、ホテル作戦かぁ)
――――フィーデスさん、きょうホテルだってね。いいなぁー。
(こんど感想聞こう。こっちじゃクチコミサイトとかないもんなぁ)
――――つちこ、みさ……? むー、またファオのいじわるがはじまった。
(詳しい人に教えてもらいたいね、ってこと)
――――へえー。
趣味と実益を兼ねた、身体をつかってのアプローチこそ失敗したものの、どうやらエーヤ先輩とイーダミフくんの離反は防げそうである。私イチオシのレーザーソード部門の将来的な人手不足も、どうやらなんとかなりそうだ。
もう一方の、主力商品である多目的輸送機材。こっちの生産体制のほうも問題なく、量産試作1号機の改装作業も順調だといい……まあ、私ができるお手伝いは特に無い。
更にいうと……これから数日、シャウヤからのお客様は連邦国のアチコチでアレコレを視察して回るらしく。
よって、彼女らの帰国日程が決まるまでは、私達は実質的な待機状態といえる。
こうなっては、私に出来ることは……応援とか、肩たたきくらいしか残っていない。
そしてぶっちゃけ
ともあれ……まあつまり、これは。
私は今こそ、いわゆる『代休』を要求してしまうことが、可能なのではなかろうか。
……うん、じつは長いこと「いい加減調整に来い」って言われてるんだよね、私ってば。
怒ってるかなぁ、装具士先生。
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