第11話

鍛冶・錬金術を使い防具を新調した。

以前まで使っていた兜よりも勿論のこと丈夫ではあるが、例のカメラを装着し撮影できるような仕様だ。

2日間の休みを利用して何をするか考えた時に一番重要な勇者虐待?いじめ?の証拠集めのための映像を今の所撮れていないことに気が付いた。

折角なけなしの逃走資金の一部を使い購入したのに少し忘れかけていたよ。

それに鎧一式も新調した。

もう開き直ってアサシン仕様の様な黒くて闇に溶け込みそうなデザインだ。

逃げる際に目立たない事は重要なのでそれを念頭にすると、この仕様に行き着いた。

さて、俺はポーターでもあるのだが、収納のスキルがあるので手ぶらに近い。

この収納スキルの収納容量はLV依存のようで、最近のLVUPで容量がUPした。

LV1ごとに2t(2,000kg)の容量UPがあるようで、現在78tと言う膨大な容量となっている。

LV20の時に状態維持の追加条項があった様で収納しておけば熱々の物はそのままに、食材は腐ることも無い。

一家に一人は欲しいスキルである。

話が逸れたな。

要はポーターなのに手ぶらの状態で行動できるのでアサシン仕様はアリと言うことだ。

さて、他にも各種薬やポーションの作成も行ったよ。

数年間、必死に磨いたスキルだけあり、この世界ではこの分野では可成りの上位に食い込めると思う程には熟している。

勇者のいい所なのかもしれないが、全ての分野・あらゆることに特性があるようで、苦手とする分野が無い。

それに加えて、固有スキルの倍化がいい味を出してくれる。

能力2倍の恩恵とは恐ろしい物で、人の半分の努力で熟達し、2倍の効果を生む。

倍化のスキルはスロースターターの様なスキルだと俺は考えている。

LVUPしていくことで恩恵がどんどん得られるので、PTメンバーが俺をはずれ勇者と評してのは間違いだと考え始めている。

確かに呪いの腕輪勇者封殺の腕輪を装備すると使えないPTメンバーと化すと思う。

しかし、それはあくまでも戦闘の際にはと言う枕詞が付く。

それ以外の部分ではPTに大きく貢献していたと思うのであるが、勇者としては評価する部分ではないようで、全く評価されなかった。

考えると気が滅入って来るな・・・集中して残り作業も頑張ろう。


2日間有意義に使えたことで気分良く集合場所に向う。

遅れるとまた文句を言う輩が居るので30分以上前に行って皆を待つ。

15分前に侯爵家令嬢がやって来た。

2日間の休みだったはずなのに目が血走り、徹夜明けですか?と聞きたくなるような状態だ。

うん、何か愉快になって来たけど、俺って性格悪いのかな?

いや、多分、今までの仕打ちから来る物で元々の俺の性格は・・・考えるのは良そう・・・


「おはようございます」

「!・・・おはよう・・・」


何か一瞬、ビクッってなったけど・・・挙動不審過ぎるぞ大丈夫か?

周りをキョロキョロ見たりして情緒不安定過ぎるぞ。

ヤバい薬が切れた人みたいな侯爵家令嬢に背中を預けるとか怖すぎる。

いや、俺の場合はバッサリといつやられてもおかしくなかったかも?

5分前に公爵家令息がやって来た。

こっちはリフレッシュしました感が半端ない。

お!新装備があるね~「これで以前の様に活躍できる」とでも思っているのかもしれない。

しかし、侯爵家令嬢を見てギョッとした。

うん、その気持ち分かるよ。

お前と解り合いたくはないが、多分、俺と此奴は同じ気持ちだと思う。

待ち合わせ時間5分遅れて王女がやって来た。


「あら、アランは休日を満喫できた様ね」

「はい!お陰様で!!」

「そう、良かったわ~」


公爵家令息に声を掛けてその後に侯爵家令嬢を見てやはりと言うかなんというか、ギョッとした顔をする。


「エリザベート・・・大丈夫?」

「はい!大丈夫です!!」


いや、大丈夫にはとても見えない。

然もやたらと挙動不審なのに王女への受け答えの際のテンションが高い事が更に怖いわ~


「そ、そう・・・本当に大丈夫?今日も休みにしますか?」

「大丈夫です!!殺れます!!」


いや、肉体的には大丈夫だろうけど、精神的にヤバそうだよ。

言葉もなんかおかしいような・・・「やれる」が「殺れる」に聞こえたけど・・・気のせいだな・・・多分。

実験も兼ねて勇者バフを戻せるかを試す。

う~ん・・・バフ外す時以上に付与する方が難しい・・・うん、今はもう仲間だと思ってないからかな?

聖女の方を外すと死者出そうな気がして来たよ。

1度外して再付与の敷居が高いのは、多分、心の問題。

もう仲間と思ってないから外すのは簡単だったけど、付与はね~・・・

もう一度試すが無理の様だ。


「勇者様聞いておられますか?」


あ!・・・侯爵家令嬢のバフ付与に躍起になってて全く聞いていなかった。


「す、すみません、考え事をしておりまして・・・」

「聞いていなかったのですね、はぁ~ではもう一度言います」


要はリハビリ的に狩場のランクを落として狩りをするそうだ。

俺としては有り難いので反論はない。

さて、そうなると今回も単独行動だ。

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逃亡勇者 ~勇者として召喚されたけど逃げちゃいます~(仮) 生虎 @221t2

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