第9話
最近は公爵家令息が自分の事で余裕が無いのか俺にあまり絡んでこなくなった。
以前の様に馬鹿にして来ることがほぼ無い。
まぁ現状で俺が1番の稼ぎ頭でそのお零れに預かっている状態では文句も言えまい。
しかし、代わりなのかは知らないが侯爵家令嬢が最近はウザ絡みして来る。
公爵家令息のウザ絡みはストレートだったが侯爵家令嬢のウザ絡みはネチネチしているように感じる。
例を挙げれば、俺の作った料理を褒めたかと思いお礼を言うと「褒めてない」と言い上げてから落として来る等々の事をやってくる。
お前は漫才のボケ役ですか?
突っ込み出来ない俺に対してボケ捲っている様な侯爵家令嬢は偶に王女に突っ込まれてシュンとなるが次の瞬間には俺を恨みがましく睨んでいる。
王女も王女で最近は口癖の様に「一応は勇者」「これでも勇者」等々言っている。
「全に化けの皮はがれて来てますよ!!」と突っ込んでやりたいが今は我慢だ。
現状のままの方が都合が良いので侯爵家令嬢のバフも解除することとした。
王女は若しもの時の保険として1.5倍のバフはそのままであるがその内解除してやろう。
回復魔法はマナを大量に使用すると聞くので回復が大変になることは言うまでも無いだろうが使える回数が減ることで窮地が増えることは言うまでも無い。
今はLV帯を落として狩場を選択しているので問題無いが、もし仮に以前の主狩場へと行けば3人で戦うとか無理じゃないかな?
まぁ俺はその場合は手伝う気は無いので3人で切り抜けて欲しいものだ。
今日は狩場を変えさせてもらう事とした。
理由として、欲しい素材を集めるので狩場を変えたいことを申し出ているが、実際は今まで狩っていたエリアでの俺のLV上げ効率が悪くなったからである。
気が付けばLVは5UPしてLV35となった。
まだここでもLV上げをすることは可能であるが効率が悪い。
せめて40までは速やかに上げておきたいところである。
LV40のと言うのには何となく予感めいたものがあるのだ。
狩場は森からジャングルへと変貌した。
相変わらず1人で行動している。
ここまでなら1人で出来ると主張して昨日までと同じく先ずは理由とした素材採取である。
このエリアで取れる物で必要なのは中級回復薬の素材である。
この中級回復薬の凄いのは少しの欠損位なら3分ほどで元通りである。
少しの欠損とはどれ位かと言えば指1本が3分で生えてくる。
腕1本を戻すのには中級回復薬が100本位掛かりそうな気がするが、腕1本ならそれ中級以上の回復薬で元に戻すのでまた別途である。
100本も回復薬を飲むとお腹がチャプチャプいいそうだし試す意味はない。
さて、ここも隠密行動で移動しノルマ分の素材を回収する。
中級回復薬はこのエリアでよく取れるヒール茸と呼ばれる回復効果の高いキノコを使う。
ヒール茸とか言いつつ毒キノコで、普通に食すると河原の一歩手前まで行ける程の猛毒で、魔物も取らない。
しかし、毒を抽出した残りの物が回復効果がありそれを主原料として中級回復薬は作られる。
感覚的に言えば乾燥椎茸で出汁を取るような感じで煮だした物に数種類の材料を混ぜて作る。
最初に作り方を教えて貰った時にはまるで料理だなと思ったものである。
ポーション作りの上手い者には料理スキルが生え易いらしいのだが、理由はそう言うところではないかと思っている。
料理するように作るから料理スキルも生えるのだろう。
「回収はこれ位で良いか・・・」
最近は独り言が板について来てしまったような気がする。
誰かが聞いている訳でもないのについ言葉に出してしまう。
PT内でそれだけ浮いていて人恋しいのかもしれないが逃亡後には仲間を作ろう・・・無理なら奴隷を・・・トラタヌしても仕方ないなと思い直し、次の行動に移ることとした。
次にLV上げの為に狩りをするのだが、このエリアでの注意事項は「油断するな!!」だ。
特にアサシンスネークと呼ばれる蛇の魔物は要注意で、気配を断ち忍び寄って来てがぶりと噛み付き毒で相手を弱らせてから人間サイズ位なら一飲みにする。
現在は気配感知の上位スキルである気配看破を覚えたので気配を断って近付く存在には殆ど気が付く様になった。
勇者と言うより本当に斥候職と言った方が良いんじゃないだろうか?と自分でも思う程にはそちらの分野のスキルの成長が著しい。
攻撃手段もアサシンバッシュと言う背後からの一撃等のアサシン系の物が多くなってしまっている・・・
「勇者が不意打ちとか卑怯ですね」と侯爵家令嬢に冷たく言われたが覚えたスキルを見せろと言ったのはお前だよね?と言ってやりたいが、言っても意味はない事は十二分に解っている。
そんなことを考えている内に2匹の目のアサシンスネークを倒した。
アサシンスキルばかり生えるので自棄になって棒手裏剣作っちゃいました!!
棒手裏剣で相手を仕留めるとか男のロマンですよ!!(※個人差あります)
さて、この蛇さんは皮が人気だ。
光沢のあるブラックの蛇皮は富裕層の人気の皮の1つで高額で取引される。
蛇肉も美味いし、実は骨からも良い出汁が取れる。
PTメンバーの食事に出したが大絶賛された。
蛇出汁と知ったら何と言われるか判らないので勿論秘密であるし、今はまだ教える気は無い。
「よし、良い食材が手に入ったな。これでスープと唐揚げ作ってと・・・」
蛇は額に棒手裏剣の一撃で倒したので血の飛沫を巻き散らしていないが気付かれたのだろうか?
このエリアで1番厄介な存在が近付いて来る。
木の上から相手を見下ろす様にしながら上手く隠れてやり過ごすこととした・・・
俺の隠れる木の下でクンクンと鼻を鳴らしている。
その魔物の名前をストーキングハイエナと言う。
群れで行動し大体5~10匹で狩りをする。
現在、俺の隠れる木の下にいるのは6匹のハイエナちゃんたちである。
アサシンスネークが倒されて寝そべっていた位置で鼻を鳴らしているのであの程度の外傷でも見つける程鼻が利くことが伺える。
如何すべきか考えていい案が思いついたので実行に移す。
先ず取り出しましたのは棒手裏剣!!
そこに~今回回収した素材のヒール茸の抽出しました毒を塗ります。
はい、投擲!!
「キャン」と鳴き1匹のハイエナちゃんが泡を吹いて倒れました。
残りの5匹が警戒しております。
棒手裏剣の傷をフンフンと嗅いで「ガウガウ」言っております。
情報交換でもしているのだろうか?
5匹は警戒しながらも速やかにその場を離れて行った。
あの魔物の厄介な所は遠吠えで仲間を永遠に感じる程呼び出す。
無限湧きじゃないのかと疑う程に寄ってくるのだ。
しかも、名前の如くストーキングされる。
倒せない事は無いのだが1人で相手するには面倒臭い魔物なのだ。
「何とか戦闘は避けれたな・・・」
ストーキングハイエナの戦いたくない理由の2番目は剥ぎ取れる物が殆ど無い。
魔石だけと言ってもいいだろう。
魔石はこのエリアに来るような者にとっては価値の低い魔石で、取り出すのも10匹位の分でないと取り出す手間の方が大変なのである。
そういう訳で棒手裏剣だけ回収してその場を後にした。
その後も魔物を狩り経験値を稼いだ。
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