第8話

不思議な事が起こった。

ある日を境に魔法の威力が落ちた。

原因は解らない本当に今までは魔法の一撃で倒せていた魔物が2発の魔法でないと倒せなくなった。

勿論、倒せないという訳では無く、倒すのに時間を要するだけなのだが・・・

エカチェリーナ王女は最初の頃は心配そうに見ていたが、最近はそもそもの実力が今位だという認識で行動を計画しているようだ。

中型以上の魔物を倒す際のメインになるのは魔法である。

今は中型以下の魔物がメインの狩場である魔の森へと通っている。

以前のメインの狩場としていたエリアは中型の魔物が多く特に魔法での攻撃は有効だった。

お荷物である勇者に変えて他の同レベルの者を入れれば狩れない事も無いが、俺達は勇者PTで勇者を外すことは出来ない。

勇者が居ない勇者PTなど在り得ないからこそあんなお荷物勇者のカスを入れている。

最近はお荷物と思っていたが狩場を落とすことにより単独行動を行いPT内の稼ぎ頭になっている。

カスの集める薬草などの素材は自分たちでも使うが市場に流せば飛ぶように売れる。

それだけ良質な物なのだろう。

勇者が素材集めとか本当に勇者だろうかと疑問に思うが金銭面ではここ最近貢献している。

PT結成時にカスの提案でPTの収入は均等割りとなった。

少し前まではカスの取り分を結婚資金の貯金と言う名目でエカチェリーナ王女がカスの取り分を回収して更に3/4を3人で別ける事にしていた。

つまり勇者の取り分はその日の稼ぎの1/16となるのだが、最近は流石に不味いだろうと言う事で1/4渡している。

勿論、結婚資金としてエカチェリーナ王女が回収しているのは変わらない。

しかし、エカチェリーナ王女も後ろめたいのか毎回お小遣いとしていた金貨1枚を3枚に増やしている。

高々金貨3枚で大喜びしている姿は滑稽である。

休憩中にそんなことを考えているとエカチェリーナ王女が俺に話し掛けて来た。


「アラン、調子はどうですか?」

「はい・・・調子が悪い訳では無いと思うのですが・・・」

「調子が悪い訳では無いのに魔法の威力は落ちてるのは何故でしょうね?」

「それは・・・解りません・・・」

「そうですか・・・」


エカチェリーナ王女は溜息を吐きながら休憩中の会話を打ち切り何かを考えこみ始めた。

聖剣使いのエリザベート嬢は如何にも不満ですと言う様な仏頂面で一瞬俺を見るが何も言わず溜息を吐く。

エリザベート嬢の態度の悪さに怒りは覚えるものの原因が自分にあるので何も言えずただじっと我慢するのみである。

俺は勇者PTの一員に選ばれるだけの実力のある魔法使いだと自負している。

公爵家の四男として産れた俺は公爵家を継ぐ事は難しい為、自分の力でのし上がっていくしかなかった。

幸いなことに魔法の才能が有ったようで国でも上位の実力者となった。

勇者PTに所属してからはメキメキと実力を付けて行き将来は魔法師団の団長間違いなしと言われるほどの実力を付けたはずだ。

同レベルの者よりも魔法の威力が高い事からも間違いないと思っていたがここに来て魔法の威力が落ちた。

今の魔法の威力も弱い訳では無いが先日までの威力と比べるとかなり物足りないと感じる程威力が違う。

何故こうなったのか?考えても考えても、何をしても何を試しても変わらなかった。

如何すれば・・・


★~~~~~~★


アラン様は最近調子を落としている様だが本当に迷惑な話だ。

私はここで停滞している訳にはいかない。

エカチェリーナ様に狩場を元に戻そうと提案したが、勇者を守りながら戦う事を考えるとアラン様の不調は不安要素となるので元の状態に戻ってからと言われた。

一度勇者が死に掛けた。

よく考えてみるとあの次の日位からアラン様の不調が始まった様な気がする。

原因は勿論不明で本人も色々試したりしている様ではあるが効果の程は・・・

中型以上の魔物に対して魔法が有効なのは理解しているが、聖剣での攻撃も十分にあのクラスの魔物にも有効だと私は考えている。

現に魔法が発動するまでは私が攻防を1人で引き受けているのだから間違いない。

勇者はお荷物でアラン様は不調・・・

最近ランクを落とした狩場に来ているが物足りない。

イライラが募る。

先日も勇者に悪態を吐いた。


「本当にあなたの料理はおいしいですね」

「お褒め頂きどうも」


本当に料理の腕は一級品で野営でこれだけの料理を出せるのは一種の才能だと思うが、勇者のやることではない。

それもイライラの原因となる。


「褒めていないわよ?勇者なのに料理人みたいね」

「・・・」


勇者が押し黙った。

困ったような顔をしてこちらを見詰めて来るがそれすらも更にイライラとさせる。


「勇者なんて辞めて料理人にでもなったら?」

「勇者って辞めれるんですか?」


嫌味を言うと勇者を辞めるとか馬鹿な事を言ってきた。


「馬鹿ね~勇者は戦えなくなるまでは勇者よ」

「それって・・・」

「死ぬか年を取って勇退出来れば」

「死か勇退・・・」


表情を硬くし絶句している。

勇者らしくない勇者の最後は1つしかないと思うが敢て本当の勇者様の将来も混ぜてあげた。

鼻で笑っているとエカチェリーナ様から注意された。


「勇者様に失礼でしょ」

「え?」


陰で勇者を認めていないことを知っているし、今までアラン様が何か言っても特に注意もしなかったのに何故今は注意するのか驚いた。


「実情はどうあれ勇者は勇者よ」

「失礼しました」

「解ればいいわ」


注意されたことは少し不満があるがエカチェリーナ様に食って掛かっても私に得は無い。

不満を顔に出さない様に下を向きエカチェリーナ様に一礼した。

盗み見た勇者の顔は不満顔であるが私の方が不満だ。

何でお前の様な使えない者が勇者様なのか?

本当に私の憧れを壊してくれたことに腹立たしさを感じる。

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