第6話

魔道具屋で見つけたのは魔眼箱と言う名の小さな箱なのだが、簡単に言うとアクションカメラか隠しカメラって用途で使えそうなアイテムで、本体が金貨20枚で備品や記録媒体で金貨20枚で計40枚の金貨を使いこの魔道具を手に入れた。

この魔道具は前回来た勇者が協力して開発したと言うアイテムであるが、あまり人気が出なくて安い方の魔道具だと店主は言っていたが魔道具だけにいい値段であった。

勇者PTの蛮行の数々を記録媒体に記録しておき逃げた後にでも王城にでも送れば面白いことになるかもしれないな。

逃亡後の資金が目減りしてしまったが後悔は無い。

満足度はそれ以上だと思う。

次に資金を稼ぐ事も考えなければならない。

それと並行してLV上げも必要だろう。

他にも考えると色々有ると思うが、王女の動向も探っておく必要があるだろう。

公爵家令息と侯爵家令嬢の2人はまぁ今は良い。

何故名前を呼ばないのか?不思議に感じるかもしれないが、何時の頃だろうか?そう、俺が足手纏いの様に思われ始めた頃からだろうか?公爵家令息より「カスが名前呼びなど失礼だぞ」など言われたことを機に呼ばなくなったと思う。

最初は何故?と思ったが慣れて来ると意外と何も感じなくなったが、多分は彼・彼女たちに俺が何かを諦めたのだろう。

王女もその頃から名前呼びを止めたと言うよりも接触の機会も減った様な気がする。

休息日は殆どが王女の仕事で別行動だし・・・

まぁ色々と俺に聞かれては拙い事等をしていたのは前回の事で知ることとなったが、それ以前から不審に思っていたのかもしれない。

無意識下で感じていたためにそうなったのだろう。


「今日は如何しますか?」

「今日は・・・」


侯爵家令嬢が王女に今日の行動予定を聞くと王女は公爵家令息をチラリと見てから考え始めた。

ここ最近は公爵家令息の調子が悪いと思われている。

勇者の固有バフを外している状態なので調子が悪い訳では無く本来の実力が今の状態なのであるが、そんな事は知る由も無いのだろう。


「今日は魔の森へと向かいましょう」

「そうですか・・・」


侯爵家令嬢は不満顔である。

流石にランクを落として行くことが納得いかないのであろう。

今までのランクより1つ下のエリアとなるが自分の実量を少しでも上げたいと思う上昇志向の強い彼女にとっては不満だあろうが、公爵家令息はホッとした顔をしている。

俺は顔には出さないがこの判断は望むところだ。

1ランク落としたこの魔の森は俺でも戦える場所となる。

密かにLV上げを行いたい俺としては好都合なのだ。

気持を顔に出さない様にと心掛けていたつもりであったがどうやら顔に出ていた様で公爵家令息から睨まれた。

いや、多分はただの八つ当たりなのかもしれない。

現に何も言ってはこないのでそれが証拠だろう。

俺に何か落ち度か何かあれば小突くくらいは最近はして来るのでそれが無いと言う事は・・・


「何時も通りの場所へ行きませんか?」

「アラン?貴方の調子が悪そうだからランクを落とすのよ?」

「そのような心遣いは無用に願います」

「私の意見するのですか?」

「いえ・・・」

「今日は私に指示に従いなさい、来週から元に戻しますからそれまでに・・・解りますね」

「ハ!わかりました・・・」

「エリザベートも良いですね?」

「わかりました・・・」


不承不承ではあるが自分が原因なので王女に再度言われて引き下がる公爵家令息・・・ざまぁみろである。

侯爵家令嬢も不満を抑えて王女の提案に従うようである。

勿論の様に俺には何も言ってこない。

しかし、俺には好都合なので反対無いし、これでLV上げが出来ると意気込んでしまう。

魔の森、LV45~65が適正のエリアである。

外縁部分はLV45~50の魔物が跋扈するエリアで今の俺のLV上げには丁度良いエリアと言える。

他のメンバーであれば余裕のエリアと言えるだろう。

今回の目的は魔物の駆除と共に魔物の素材回収となるが、それ以外にも色々な素材採取の仕事がある。

魔物の素材回収は基本的に俺の収納魔法で収納することとなるが、採取も俺にしかできない。

何故俺だけが?と思うだろ・・・貴族様には難しいと言えば解るかな?

彼・彼女は採取と言う雑用の様なことを嫌った。

俺は自分で調合したりすることもあり採取は必要不可欠であるので感覚的には山菜取り位の気分で片手間で行っている。

その調合した各種の品物を使うくせに採取を嫌う彼奴ら・・・考えると馬鹿らしくなるので考えるのを止めよう。


「では、別れて行動しましょう」

「あなた一人で大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ、外縁部分しか無理ですけどね」

「そ、そうですか・・・」

「では、私は採取も含め行動します。魔物の素材は後程剥ぎ取りますのでマジックバックにでも放り込んでおいてください」

「わ、分かりました・・・」

「では」


そう言ってPTと別行動を取る。

公爵家令息が薄暗い顔を俺に向けるが気にしないこととした。

侯爵家令嬢は俺の事等ノー眼中の様である。

王女は何か言いたそうな顔をしていたが話し終わると俺がその場を離れたのでその後は知らない。


さて、それでは頑張って先ずはバレない様に採取を開始しますか。

採取は直ぐに終了した。

このエリアの採取地は把握しているので簡単なお仕事だった。

そして、LV上げに移るのだが・・・メインの武器はスコップ・・・いや、スコップに不満がある訳では無いぞ。

スコップは農具と思われがちだが立派な武器である。

またの名を円匙えんし、ショベルとも言う。

二次大戦下では最も人を殺した近接武器だとも言われる。

刺突、殴打、切付と意外と万能な攻撃手段に穴も掘れる優れモノである。

何故これを武器にしたかと言うと、「カスが剣持つとか宝の持ち腐れだ」と言って支給の長剣を侯爵家令息に奪われた。

そして、渡されたのがスコップだった・・・

他の武器を持つと突っ掛かって来るので仕方なく・・・いや好んで使っていたら手に馴染んだ。

ただし、自分でカスタマイズしてミスリル製に変わってはいるがな。


森を歩いていると前方に魔物の発見!!

アサシンウォークのスキルを使い気が付かれない様に背後を取りスコップでブッ叩く。

アサシンウォークと言うのは簡単に言うと忍び足の様なスキルで普通に歩いて移動しても気が付かれ難くなる。

勇者なのにアサシンのスキルを覚えてしまう程斥候をした俺・・・斥候職が居ない以上誰かがする必要があったが今考えても違和感ではある。

ただし、何事も覚えて損はない。

単独で行動する場合は非常に役立つのだが、覚えて思う事であって本来は勇者のやることではないのかもしれない。

さて、戦闘だが相手はハイオークと言う豚の魔物である。

グチャリと音がして敵は何も出来ないままに頭蓋骨が割れて絶命したようである。

首も曲がっているので何方かが致命傷になったのだろう。

豚は捨てる部分が殆ど無いと言うがオーク種の魔物も捨てる所が殆ど無い。

特にハイオークの肉は日本で言うブランド豚並みに美味しく人気の食材である。

過去の勇者が生姜焼きを伝えたようでオーク肉の生姜焼きは酒場の人気メニューである。

トンカツも伝えた様で、高級なレストランなどではハイオークのトンカツが出て来る。

1匹倒すと近くに居たもう1匹が俺の存在に気が付き襲って来た。

「ブヒ~ブブヒ~」と鳴きながらこちらに向かって突進してくる。

手にはこん棒の様な物を持っている。

大きく振り被って俺の脳天目掛けて振り下ろして来た。

またフェイクステップと言うアサシン系のスキルを使い避ける。

避けたのと同時に踏み込んでハイオークの首に向けてスコップの刃先を突き入れた。

ハイオークの首がスコップに乗っかり胴体と物別れして胴体は前倒しに倒れた。

周りにハイオークの血の匂いが広がる前に収納魔法でハイオークを異空間に収納し、周りを見回すと他に敵は居ないようであった。


「探索系の魔法も覚えたいな」


そんな独り言を呟くが聞く者は勿論居ない。

探索系の魔法はサーチと言うレーダーみたいに周りの状況を掴む魔法がある。

斥候・アサシン系の魔法なのでその内覚えるかもしれないとは思っている。

益々勇者から懸け離れて行くが仕方ない。

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