第5話
一瞬ドキッとした。
何かを疑うような目で王女は俺を見ている。
まさか俺の行動に何か違和感を感じたのか?
疚しいと言えるかどうかは解らないが、逃亡計画を考えている俺としてはドキドキである。
しかし、それを知られる訳にはいかないので堂々と・・・いや、日頃から俺って堂々として無いから堂々とする方が怪しいか・・・
そんな事を考えていると王女が話し掛けて来た。
「何処に言ってきたの?」
「鍛冶屋に行ってきました」
「お買物かしら?」
「いえ、思いついた物があって作る為に鍛冶場を借りました」
「そうなのね・・・何を作ったの?」
「これです」
爪切りを見せると王女は目を丸くして俺の手の上に乗るそれをマジマジと見る。
爪切りについて説明すると興味を持った様でやはり予想通りの言葉を言ってきた。
「1つ貰うわね」
「あ・・・はい、どうぞ」
そう言ってマジマジと見ていた爪切りを要求して来た。
逃亡計画まではバレていないとは思ったが何か企んでいると疑われたと思って正直びくびくしてしまったが、爪切りを見せるとそちらに興味が移ったのでただ俺の行動を聞いただけなのかもしれない。
ドキドキして損した気分になった。
今日から勇者の腕輪(笑)のレプリカを装着して行動する。
最初はドキドキしながら行動していたが、予想通り誰も何も言ってこない。
予想通りと言えば予想通りなのであるが拍子抜けな程疑われないとそれはそれで不安になったしまうようだ。
しかし、油断して良い事は無い。
油断せずに注意深くPTのメンバーを見ておくこととしよう。
さて、腕輪の件はこれで良いだろう。
次はやはり勇者バフのON/OFFの件だ。
気が付かれない様に色々試したが上手くいっている様には感じない。
心の中で「解除」「OFF」「停止」等々色々言ってみたが全く意味が無かったようである。
若しかすると違う言葉と言う事も考えられるが、100以上の思い当たる言葉を言い続けたがこれ以上考えられる言葉は無いので今は諦め思いついた時にまたその言葉を試そう。
次に同じく声に出して言ってみた。
「何をぶつぶつ言ってるのです?」と王女に変な目で見られた。
婚約者に向ける目じゃないよね?と思ったが言う意味も無いので「独り言です。すみません」と言っておいた。
公爵家令息から「気持ち悪いんだよ、カス」と言われたが、もうそれって悪口だよね?
侯爵家令嬢も溜息して馬鹿にしたような目を俺に向けて来るけどね。
今でも疑ってしまうよ「勇者って尊敬されているんだよね?」と。
後も色々試してみたが上手くいかない。
「PTメンバーと認識した者」と言うのがやはりキーワードなのかもしれない。
意識的にON/OFF出来ないと言う事は無意識下の問題だとすると如何するか・・・
考えてみたが良い案は浮かばない。
無意識でONされているものをOFFにするのは難しい。
これはお手上げだなと思っていたが、あることを切欠に方法が判明した。
「おい、カス、お前本当に使えないな」
「すまない・・・」
「すまないじゃないよ、今日はもうここまでだな・・・お前のせいで!!」
ちょっとしたミスから俺は死に掛けた。
偶々その日は俺的に危険なエリアへ行くと言う事で勇者の腕輪(笑)を装備ていた。
レプリカでは無くて本物の方ね。
案の定、予想的中して俺は攻撃を受けて死に掛けた。
1日1度即死を防いでくれたので本当に九死に一生を得たこととなる。
しかし、ここまでで今日の冒険は終了となり引き返すこととなるので効率は悪くなる。
それを聞こえよがしに俺に悪態を吐く公爵家令息。
心の中で「お前なんて仲間なんて思わないよ。此奴をPTから外したいな~」と思った瞬間に何となく頭にON/OFFが浮かんだような気がしてOFFを選択した。
その瞬間に確かに今まで何となく繋がっていたような感覚が無くなったことに気が付いた。
「PTメンバーと認識した者」の「認識」と言うのがやはり重要だったようだ。
上手くいってほくそ笑んでいると「気持ち悪いんだよ」と言って殴られた。
魔法使いの物理攻撃なのでLV差があっても大した事は無いが痛いしムカつく。
もういいや、此奴の状態はこのままにしておこう。
★~~~~~~★
ある日、何時もの様に勇者と言うお荷物と共に何時もの様に国より依頼を受けている素材回収の為に魔物の
何時もの如く魔物が現れると俺は先制攻撃を試みる。
何時もなら致命傷に近いダメージを与えるのだが少し大きめの怪我に止まった。
今日は調子が悪い様だ。
気が付くと何時もよりも明かに魔法の効果が弱い気がする。
簡単に倒せた魔物も誤差ではあるが瀕死で生きていたりする。
その魔物を勇者が止めを刺しているが、LVが上がらないのに無駄な努力をと思い鼻で笑ってしまう。
しかし、その後も状況は変わらない。
一手間増えることで予定よりも侵攻に時間が掛かった。
今日は偶々調子が悪かったのだろう。
次の日も次の日もそして次の日も・・・1週間同じ状態が続いた。
何かあるのか?いや、特に変わった事は無いと思うが・・・
原因は不明であるが明かに魔法の火力が落ちているのが傍目からでも解る。
エカチェリーナ王女が心配そうに俺を見ているが
王女が何も言わないので侯爵家令嬢であるエリザベート嬢も何も言ってこないが明かに不審な目でこちらを見ることがたまにある。
手に気でもしてる様に見えているのかもしれない。
いや、気のせいでもいい、ムカつくので文句を言いつつ小突いてやった。
しかし、イライラを感じ何時も以上に
何が原因なのか解らないが早急に問題を見つけないことには・・・
★~~~~~~★
効果は
傍目から見ても解るほど公爵家令息の魔法の威力は落ちている。
まぁ元に戻っただけなのだが、それだけ勇者のバフの影響は大きいと言う事だろう。
数値と言う物はこの世界で見える様な物ではないが、数値が見えるとしたら攻撃力150→100と言った感じだろう。
1.5倍の攻撃力と言うアドバンテージは絶大だったようで今まで余裕で倒していた魔物が中々倒せなくなった。
それにスピード、体力その他諸々が落ちているので言うまでも無く今迄の様にはいっていないのは見ていれば誰でもわかるだろう。
現に侯爵家令嬢も苛立ち気味の顔を偶にする。
王女が何となく心配そうにしているのだが声は掛けない様だ。
負ける訳では無いし、適正LV帯の場所での戦闘なのでこれが普通なのだが今まで余裕だったものが普通に戻るって結構来るものがあるようで、公爵家令息の焦りが手に取るように解る。
その分俺への当たりが強いのだが気分は最高潮で今なら文句位何ともない。
ただし、偶にイラついて手を出して来るようになった。
これは今後の為にも何か対策を考える必要があるかもしれないが、先ずは1週間を乗り切ろう。
魔道具店で面白い物を見つけたので今後の為に購入した。
金貨40枚と中々の金額だったが必要経費として諦めよう。
ただし、逃亡資金の残金がかなり減ったのは・・・いや、必要経費だ!!
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