第3話
優しく接していたのは演技かよ!!
可憐で美しく優しい王女様が俺の婚約者と思って理不尽も耐えて来たがもうどうでも良くなったな。
しかし、死にたくはない。
勇者のお仕事を放棄すれば俺に待ち受けるのは悲惨な最後だと思う。
勇者は曲がりなりにも国の象徴の1つだ。
その勇者が働かず、然も勇者を食い物にしていた事実を知っているってどう考えても暗殺案件では?
背中に冷たいものが走りゾクリとする。
どうすれば・・・このままの状態を維持しつつ逃亡の計画を練るしかないな。
そうと決まればどの様にして逃亡するか?
先ずは資金調達なのであるが、俺の勇者としての仕事で得た分の報酬は殆どが王女に預けられている。
「将来の結婚の為の貯蓄ですよ」と言われていたが妖しいものである。
いや、あの先ほどの出来事自体が気の迷いと言う事は・・・
考え込んでいると今腕に嵌めている勇者の腕輪として渡された勇者封殺の腕輪が目に入る。
まぁ計画的犯行なのは間違いないか・・・
確かにこの腕輪のお陰で九死に一生を得たことは度々あった。
しかし、説明に封殺が抜けてたよね?
LVが30以上に上がらないようにしといてカスとか言われてた訳だし、それを止めるにしても今考えると一テンポ遅かった気がしてくる。
その胸中は王女本人にしか解らないだろうが、今はそう思えてならない。
こんなことをグダグダと考えていても仕方がないことである。
さて、資金はお小遣いとして討伐時の報酬から金貨1枚が渡される。
それをコツコツ溜めて金貨三百枚ほどとなっている。
考えてみると国からのサポートって何かあったかな?・・・
ああ、最初に師匠を紹介してもらった。
武聖とまで呼ばれる武力マシマシの爺さんだったが面倒見も良くて色々と良くしてくれたが、あの爺さんの目的って自分に比する武人を作って死合う事とか豪語して「お前がより強くなることが楽しみじゃ」とか言って俺を鍛えに鍛え捲ったが、LV30から中々成長しないことで最近は疎遠になっている。
何方からともなく距離を取ったので俺が爺さんに遠慮してなのか爺さんが俺に興味を無くしたのかは定かではないが、最近は全く会っていない。
考えが迷子で要らないことを考えてしまった。
さて、国からのサポートとしてはその武術特訓とこの腕輪と金貨二百枚が最初に渡されてそれ以外は・・・無いな・・・更に言えば二百枚の金貨の内で俺が使えたのは最初の装備品に使った二十枚の金貨のみで後の金貨の行方は・・・
まぁゲームの様に金貨十枚渡されて魔王倒して来いと・・・考えてみたらあまり変わらないな・・・
それほどまでにサポートはほぼ無い。
考えれば考える程に「勇者って尊敬されているの?」と言いたくなる。
異世界人を拉致って魔物と戦わせる駒として使うとか鬼畜の所業だとは思うが、異世界へと召喚されたことによって助かったのも事実である。
でもな~今のままだと俺って聞けんじゃないの?とも思う。
少し逃亡計画を考えると共にそこら辺の探りを入れてみよう。
それで具体的に必要な物はお金と力となる。
お金は貯めた金貨の内二十枚を国に返せば貸し借りは無いはずだ。
残り280枚あれば問題無く生活は可能であるが、追手おどうするかだな。
逃げると言う事はお尋ね者になると同義だと思う。
それも国の闇の部分を知る勇者となれば手練れが送られてくることは間違いないだろう。
では如何する?・・・考え込んでいるとお腹が減って来た。
食堂へと行き料理を突きながら思考をするがいい案など思いつかない。
今の状況を確認してみるとことした。
LV30でこれ以上LVが上がらない。
何故上がらないかと言えば勇者の腕輪(笑)が装備されているから。
そう、この腕輪が無ければLVUP可能?
鑑定して再度効果を確認する。
勇者封殺の腕輪:レジェンド級、装着者のレベルの上昇を30で固定する、即死級の攻撃を1日1回だけ無効にする。
なんの為にこの腕輪が作成されたのだろうか?
考えると真っ先に考えられるのは勇者を制御するため・・・
では何故勇者を制御する必要があったのか・・・
先ずこれは調べないと結論は出ないが、何となく予想はつく。
では腕輪を使わない様に出来るか・・・多分は公爵家令息が装着するようにと言ってくるだろう。
だが、どうする・・・そうだ!!
俺はあることを考えてそれを実行することとした。
★~~~~~~★
勇者様PTの一員として選ばれた時には狂喜乱舞した。
私は侯爵家の三女として生まれた。
剣の才能が有り聖剣を使えるまでになりそのお陰で勇者様のPTメンバーとして選ばれた。
「エリザよくやった!!」
「まだ選ばれただけですわ、お父様」
「おお、そうだったな、これから勇者と共に活躍を期待しているぞ!!」
「お任せください、お父様」
家族全員が喜んでくれたが、特に父の喜びようと言ったらなかった。
そんな希望に満ち溢れた私は初めて見た勇者様に少し落胆した。
伸び放題でボサボサの髪に顔は隠れていてよく見えないが体つきは文官と言われても疑わない位にヒョロヒョロで猫背で何だかオドオドしている・・・
イメージの勇者様と違い過ぎて現実を見た気がした。
それでも勇者様は異世界から来たばかりでこれからだと気持を持ち直した。
武聖様に弟子入りしたと聞き期待を持ったのは昔の事。
確かにLV30になる前までは私達を引っ張って進む姿にこれぞ勇者様だと思ったし、奢った態度も無く好感が持てた。
本人から「勇者様とか言われると背中がむず痒くなるから名前で呼んでくれ」と言われPT活動中は「ヒデオ」と呼ぶようになった。
異世界では何でも
勇者なのだから英雄でも間違い無いと私は思ったし、ピッタリな名前だと思った。
しかし、私達のLVが50を過ぎた位からは言っては何だが足手纏いであった。
その頃からであろうか私やプライド公爵家の令息であるアランも彼を侮る様になってきたと思う。
「戦闘では役に立てないから」と言って執事やメイドみたいなことを始めたかと思えば料理人の様な事も始めた。
私の持つ勇者様のイメージは粉々に打ち壊された。
勇者と言うより
確かに戦闘以外の面では凄く助かるが・・・
勇者にそんなものは期待している人間は1人も居ないだろう。
アランは何時の頃からだろうか?ヒデオを「カス」と呼ぶようになった。
ヒデオの家名は「カスヤ」と言うらしいが「カス」と言うのは異世界でもこちらの世界でも侮蔑の言葉らしい。
何故侮蔑の言葉を家名に?と思うが、異世界では普通のことらしい。
変わった文化だとは思うが、他の文化を否定するのも変だと感じそういう物だと理解したが、今となってはピッタリな愛称だと「カス」と勇者を呼ぶアランのネーミングセンスに賞賛を送りたい気持ちになる。
それにしても、LV30から一向にLVUPしない勇者。
最近では王宮でも「ハズレの勇者」だと囁く者が増えて来た。
王女の婚約者ではあるがこのまま行くと追放・・・いや、後の禍根を断つ為に秘密裏に処置される未来が見える。
こんなハズレ勇者のPTメンバーになってしまった私は最近は落胆しか感じない。
早く勇者が戦死なないかとも最近考えてしまう。
勇者の腕輪がある限りは難しいのかもしれないが・・・
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