第2話
最近、斥候職の様に行動していたからだろう。
斥候職のスキルが幾つも生えて来た。
勇者に成り立ての頃は戦闘職でもアタッカーか壁役のスキルが発現したが今や勇者と言うより殺し屋まっしぐらな程に斥候のスキルがニョキニョキと成長している。
主だったスキルとしては「感知」である。
この感知スキルは幾つか存在する。
魔力、罠、気配、等々でまだ幾つもあるが全てを発現させると一括りに「感知」となることが国のスキル研究で解っている。
この全てをと言うのはどうやって判断するのかと言うと鑑定スキルで視るか人物鑑定出来る魔道具で視る事が出来るとのことである。
俺の場合は鑑定のスキルで視たかと言えば・・・物品鑑定のLV上げに勤しんでいて人物はまだ名前しか確認できない。
しかし、俺は感知を全て取得し「感知(ALL)」とでも言えばいいのだろうか?その状態にあるらしい。
確認は魔道具で行った。
「敵を見つけられないとかカスか」「罠見つけられないとかカスめ」等々とPTメンバーからの罵倒の度に頑張っていたら何時の間にか全てをコンプリートしたようである。
このスキルはあまり重要ではない様に感じるかもしれないが、意外と重要だと俺は思っている。
勿論、冒険することにおいてではあるが・・・
他にも気配遮断等々の「誰か殺すの?」とでも言いたいようなスキルが増えたのは魔物から身を守るための実践訓練の賜物であろう。
他にも料理人なのか?とかメイドなの?執事なの?と言いたくなりような戦闘とはかけ離れたスキルがニョキニョキと育っている。
その中でも役立つのは錬金術系のスキルと薬師系のスキルだろう。
何を目指してるの?と自分自身でも言いたくなる現状ではあるが、PTメンバーの我儘を聞いていると何時の間にか生えるので仕方がない。
さて、今日は何をしよう。
本日はPTの安息日となる。
大昔の勇者から受け継いだ慣習らしいのだが、7日に一度休息日がある。
過去の勇者の痕跡は色々残っていて、その一つが曜日だろうか?
7日間の呼び名は1週間と呼び大体5周で1カ月となり12カ月で1年となる。
こちらは420日で1年となるようだが案外解り易いし1年の周期からも丁度良いらしいので過去の勇者が適当に決めただけでもなさそうである。
さて、1週間は月の日から始まり安息日の太陽の日で1週間となるが、月→火→海→木→金→大地→太陽となる。
何故ここまで地球風に纏めたのに水曜が海の日で土曜が大地の日で日曜が太陽の日としてしまったのだ?
海の日が60回もあるって海行き放題だなとくだらない事を心の中で過去の勇者へ突っ込んでおこう。
そんなくだらない事を考えながら街をぶらついていると我が婚約者の王女様がいらっしゃる・・・
今日は教会の用事で聖女として孤児院へと慰問するとスケジュールではなっているのだが・・・
お忍びの様で少し裕福な町娘風の恰好をしているしお供も連れていないと言う事は他人の空似だろうか?
気になるので彼女の後をこっそりと尾行することとした。
彼女は気分が良いのだろう鼻歌を歌いながら歩いて行く。
行先はこの王都の待ち合わせスポットであるパチ公の銅像前である。
この銅像は過去に来た勇者が「待ち合わせと言えばこれでしょ!!」と豪語して作ったとされる史跡らしい。
ハチ公モチーフなのは解るのだが、何故に「パチ公」にした?
まぁパチものなので間違いでは無いか・・・
さて、そんな事はどうでもいい、何故彼女はここに来たのか?
ふとパチ公の所を見るとPTメンバーの一人である公爵家令息の魔法使い似の男が彼女に手を振っている。
空似・・・間違いなく王女と魔法使いだ。
これって浮気だよね?一応俺が彼女の婚約者なのだから・・・いや、まだまだただの他人の空似の可能性がワンチャン残っている。
このまま2人のことを尾行することが確定した。
尾行してて思うが、他人か知り合いかは置いておいてイチャラブカップルの尾行は苦痛だ。
しかも若しかすると王女様が・・・婚約者が・・・
いやいやただの他人の空似だってと自分を勇気付ける。
8時間後、これほどイチャラブバカップルの尾行が苦痛とは・・・世の探偵さんの苦労が今ここに理解できた瞬間だよ。
外は夕闇で2人は良い雰囲気でお酒と料理を食べながら楽しそうに会話している。
俺は尾行しているので気付かれない位置で彼女たちの動向を確認しながら携帯食の干し肉を齧りながら睨むようにその様子を眺めている。
世の張り込みする探偵さんに刑事さんご苦労様です。
そんな事を考えて黄昏ていると2人は良い雰囲気で食事処を出て夜の街を歩く。
そして、連れ込み宿へと入っていく。
連れ込み宿とは簡単に言えばラブホテルで男女が格闘技を頑張るところである。
お互いの性技を駆使して相手を昇天させる大人のジムなのである。
そして、俺は鼠の様に天井裏へと移動してこっそりとその様子を確認しながら血の涙を流す。
いや、まだ王女と侯爵家令息と決まった訳では無いと己の心を鼓舞する。
魔法使いと聖女と言っても戦闘を生業としているだけあり激しい攻防を・・・いや、まだ確定では無かったな・・・
事が終わるとまた楽しそうに会話をしているが、今回は天井裏に俺は潜んでいるので意外と距離が近く会話が聞こえる様なのでそのまま聞いていると、今日のデートの内容を話しながら楽しそうに語らっている。
もういいやと思って引き上げることを考えていると王女と公爵家令息がとんでもない内容を話し始めた。
「それにしてもエカチェリーナ王女も人が悪い」
「あら、何のことかしらアラン」
「いや、勇者にあんなアイテムを持たせてこき使うとか、曲がりなりにも婚約者では?」
「うふふふふ~それを言うなら貴方も勇者に対してカス呼ばわりで貴方のお父様が知ったらどう思うかしら?」
「ははははは~お互い様ですよ、あのアイテムを勇者に装備させてることを国王様はお知りですか?」
「さぁ如何かしら?」
「本当に悪い人だ」
そう言ってまた2人は組体操を始めた。
俺は・・・ここで見つかると大変なことになる事は理解できるので怒りを押し殺しその場を立ち去った。
★~~~~~~★
メインではないのでUP遅めになると思いますが、そう言いつつもある程度までは考慮して頑張って書きますのでお目汚し下さい。
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