第12話
「はぁ... はぁ... はぁ...」
「ほっ... ほっ... ほっ...」
皆さん、こんにちわ。成宮海斗です。
今、俺は山の中を走っています。と言うのも......
「どうだい、後輩くん!! 息も上がってきたところだし、気分も上がってきたかい?」
今、俺が仮入部させてもらっているところの先輩、戦道玄音先輩に指導を受けている。何でこんなことになっているのかと言うと先週まで遡ることになる。
〜〜〜
粉々に崩れ、光となっていく、ゴーレムを見上げる。
「何でだ!! 何でここまでして覚醒しないんだ!!」
ゴーレムに向かって言っても何もならない。
そんなことはわかっているが、それでもこの憤りをどこにぶつければいいのか俺には分からない。
「本当にあんたはどうなってんのよ。さっきのもすごかったけど、今回もあんなの倒しちゃうなんてね。」
あぁ、こんな時でも陣条さんは気にかけてくれるのか。だが、俺には足りない、こんなものでは、まだ........
「すごいよ、後輩くん!!」
「うわっ!!」
ゴキッ!!
どこからともなく、飛んできた物体...ではなく、人間によって顔が覆われてしまう。
厳密に言うと、先ほどの弾丸のようなスピードで突っ込んできて、前後逆転した肩車のような状態になっている。
ついでに言うと、多分首の骨の1本や2本も折れていると思うし、何なら地面に頭から少しめり込んでいる。そして、ヘッドシザーズみたいに首を絞められていて....
「ぐっ...ぐっ...ぐっ...」
「いや〜すごいよ、すごすぎるよ!! こんなにすごいなんてびっくりだよ!!」
「ぐっ...ぐっ...ぐっ...」
「おいおいおい、後輩くん。そんな変な声出してないで喜ぼうじゃないか!! 1回目でこんなにできるのはすごいよ!!」
「かっ...かっ...かっ...」
「う〜ん? 何か声が変わったような気がするげと、喜んでるってことかな?…………まぁいいか、喜んでいるぽいね!!」
「いや、見てただけだけど、そろそろ気づいてくださいよ!! こいつそろそろやばいですから。」
「かっ...かっ...かっは! ハァ...ハァ... ハァ...」
呼吸もままならず、意識が朦朧としたところで陣条さんに助けられた。
いやまじで危ない、危ない。と言うか、息できなくてあまり体に力が入らなかったのはあるが.......それにしても力が強すぎないか?
一般的に男女で倍率は変わるのだが、脚力と腕力を比較すると、約3倍位の差になるらしい。
だからこそ、男女で力の差があろうとも、足と腕ではその差は覆すことは難しいだろう。それを踏まえても、首の骨が折れた気がするのは分からないけどな。
「あっ、ごめんね。大丈夫だった? いや〜ちょっと強く絞めすぎちゃったかな。あははは!!」
「あははは、って結構痛かったんですけど....」
「いや〜ごめんね、ごめんね。力加減間違えちゃった。」
「……まぁ、いいですけど。次からは気をつけてくださいね。」
「いや、そんなあっさりでいいの!?さっきやばい音してたけど本当に大丈夫!?」
「まぁ、大丈夫ですよ。こう見えて俺、異能を扱う術者として耐えられるような体づくりは普段からやっていますし。首の骨の1本や2本なんて気にするほどの怪我じゃありませんよ!!」
「いや、それは気にしなさいよ!! 術者になる以前に何か人間として大切なものを失っているわよ!!」
「なるほど、人間を脱することが異能覚醒への第一歩だと言いたいんだな。」
「違うわよ!!そういうことじゃなくて!!........って、もういいわ、あんたにこれ以上言っても頭が痛くなるだけだし。」
何だか呆れられた気がするが、問題はない。今はこのメガネが見せてくれた夢の時間を噛み締めていたい。
「異能覚醒、イェーイ!!」
「異能覚醒、イェーイ!!」
先輩も中々にアグレッシブな人だと思っていたが、こうやって異能についても真剣に考え、喜んでくれる。こんな人はこれまでだったらいなかっただろう。あぁ、本当に高校生活.......
「あ〜そうだそうだ。そこで僕から提案があるんだ!」
「……何ですか?」
気持ちよく叫びたい気分だったが、とりあえずは先輩の話を聞こう。多分、止めたところで言うこと聞かないと思うしな。
「君は見たところ運動神経が高いし、この部活にも入りたいという意思がある。そして、何言切っても最後のゴーレムを倒した時の技ばすごくかっこよかった。だから、」
ごくりっ
何をするのか、何を言うのかも分からない先輩だからこそ、彼女の言葉一つ一つに緊張してしまう。
「君には僕の弟子になってもらおう!!」
「……………えっ?」
「君には僕の弟子になってもらおう!!」
「…………………………えっ?」
「う~ん? 聞こえてないのかな? 君には僕の弟子になってもらいたいんだけど!!!!」
「おわぁ!! 聞こえてますから静かにしてください!!」
〜〜〜
そう言う訳で俺は彼女の弟子となったのだ。そして、弟子となって次の日であり、現在に意識を戻すわけだが.......
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