第7話
「それであんさんは何もんや?」
教室の扉を開かれ、その先頭に立っている男に声をかけられる。
白髪混じりの黒髪に俺でも見抜ける位に高い背丈。しかし、手足、体はほっそりとしており、どこか幽霊のような不気味さがある。だが、何よりも1番気になるのは彼の持つ心まで見透かすような糸目である。その目の奥からは何かものすごい圧のようなものを感じる。
まさかここでも試されているのだろうか?
先ほど、彼女から入部する許可をもらうこと自体はできた。
しかし、実際こういうのは位の高い部長さんや顧問の先生などの許可を得るか、部員たちの半数以上から入部の許可を得るか、それとも何か独特な入部条件でもあるのかするものなのだが、ほんとに入れるのだろうか?
「それであんさんは一体何もんなんや?」
そうだ、早く何か返さないと。
「すいません。挨拶もせず、勝手に部室の方で居座ってしまって。」
「ええよ、そんな気にせんでも。そないしてあんさんは何もんなんや?」
「はい。ご無礼を働いたにもかかわらず、その寛容な心に感謝申し上げます。差し支えなければ、この度の出会いを祝してここで1つ.......」
「いや、もうええよ!! あんさんが何もんなのか早う教えてな。」
「あ、そうでしたね。これは失礼いたしました。」
「俺の名前は成宮海斗。異能を愛し、異能に愛される予定の者。今日はこの異能研究部に入部させていただくため、参上させていただいた次第でございます。」
よし、どうだ。俺ができる限りのことはした。あとは彼がどう動くかだ。
「…あーそうなんや。心配して損したわ。」
……そうなんや?
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
……えっ、何もないの!?
「… あっ、あの、それで俺は入部できるのでしょうか?」
「あ〜なんや、そのことか。無理やで。あんさんを入部させるのは。」
えっ、駄目なの!?
「ま、待ってください!! 今会ったばかりでいきなり入部できないなんてあんまりじゃないですか!」
「そないなこと言われても無理なもんは無理やで。」
「なんでだめなんですか?」
「そりゃ、うちの部活は部員全員からの許可が必要だからね。まぁ、見たらわかるよ。」
えっ、そうなの!? それは普通に知らなかった。
「じゃあ、この中で彼を入れたくないと思う人は、手を挙げてな。」
彼の声掛けに対して辺りを見渡すと、先ほど教室に入ってきたここのメンバーであろう人たちは全員手を挙げていた。
……俺ってそんなに嫌われるようなことしたか?
中には俺のクラスで見た人たちもいた。
「やっぱり予想通りやな。けど、意外やわぁ.....」
「アリアちゃん手を上げへんなんてな。」
「別にいいでしょ。どうせ、あんたたちが認めないと入部ができないわけだし。」
「そりゃそうなんやけどなぁ........」
陣条さんが先ほど言っていたのはやはりこのことだったのか。入部を認められなかった事は大変ではあるし、現状が最悪なのは変わらない。それでもこの部活に入ってもいいと思っていてくれる人がいるのは嬉しい。
「そうか、ならええか。」
彼は陣条さんの発言に対して少しだけ考える素振りをしてからこちらを向き、ゆっくりと話す。
「本来なら、反対する人がいるから、入部は許可できないんやけどなぁ。アリアちゃん入れたいなんて言うのは珍しいからね。」
「そこまでは言ってないわよ!!」
「お! 何か反応が初々しくてええなぁ。」
「あんた、マジでキモい!! 何でこの部活にこんなやつがいんのよ。」
「……こんなやつよりかは....ちょっ...ちょっとくらい、まだ...こいつのほうが.......いいかも......」」
「えっ、なんか言ったか?」
「べ、別に何も言ってないわよ!!」
途中から何が言いたかったのかわからなくなってしまったが、とりあえず俺の味方側として発言してくれていた。
「アリアちゃんの心地良い罵声も浴びせられて、機嫌がいいからね。あんさんの扱いは間をとってこうしよう。」
彼は歩き始め、どこからともなく現れた椅子に座り、する粗衣目つきで俺に語り掛けた。
「君はみんなの雑用兼お手伝い係としてここに仮入部してええよ...」
「……えっ、良いんですか!?」
「うん。条件付きでな。」
……条件付き? 一体何だろうか。まぁ、元々は入部できなくなるところだったんだから、多少難しい条件だったとしても問題ないだろう。こんなことで俺の異能への熱意を消すことなどできないぞ!!
「だから君にはこれからの1か月間頑張ってもらうよ。」
「はい、任してください!! この成宮海斗どんなことでも、たとえ火の中でも水の中でもどこにだって行ってみせましょう!!」
「…へぇ、どんなことでも、どんな場所でもね。」
「はい!!」
「じゃあ頑張ってよ。1か月以内に部員全員からの入部許可をもらわんとあんさん退部だからね。」
「…………えっ。」
…………えっ。
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