第3話

 あぁ、高校生活万歳!!

 と言いたいところだが、今は少し考えてしまうことがある。


 ……なぜだか、友達ができない。


 昼休みの時に話しかけようとしたが、なぜだかみんな用事あるようで、結局誰とも話せず、昼ご飯は恵魔と食べることになった。


 だが、今日はまだ初日なのだから、みんなも緊張をしていたんだろう。


 それよりも、今は......異能研究部に行かないと!!


 キンコンカンコン。キーンコーンカーンコーン。


 放課後となり、急いで支度をする。


「海斗君、もう準備終わったの早いね。」

「あぁ、早くこの学校に来た理由を果たさなければいけないからな。」

「…うん、わかった。それじゃあ、頑張ってね。」

「ああ。」


〜〜〜


 教室を飛び出し、廊下を駆け抜ける。心臓の鼓動が高鳴り、自分が風になったのかという錯覚にさえ陥る。


 それほどまでに夢見た瞬間だった。


 『異能研究室』と書かれた紙が貼られている教室が見えた。


 あそこだ!!


 最高点まで到達したスピードを落とすことなく、その教室へと突っ込んだ。


「よし!! 1番乗り!!!!」


 深呼吸をし、ゆっくりとコキを整える。


 あぁ〜魔力で満ち、溢れている。ここが異能研究部か。

 爽やかな草木の香りと、古書の心落ち着けるような匂いが漂う空間。だがしかし、

 

「……誰もいないな。」


 そう、この教室には誰もいなかったのだ。


「…うるさいわね。静かに待ってなさいよ。それと、あんたは1番乗りじゃないわよ。」


 だが、教室を見渡し、振り返ろうとした瞬間、その声は聞こえた。


「自己紹介であんなこと言ってたから、来るとは思ってたけど......あんた、こんなところ来るなんて頭おかしいんじゃないの?」


「何を言う。俺はこの部活があったから、この学園に来たし、俺の夢を叶えるために、この部活に来たんだ。何もおかしい事は無いだろう。」

「それにその話で言えば、あなただって頭がおかしいことになるんじゃないか?」


「いいじゃない。そんなの私の勝手よ。」


 ……これは横暴じゃないか?


 そう思ってしまうが、自己紹介の時を思い返す。


 陣条・アリア・ヴァイオレット。


 きれいに輝く金色の髪をツインテールにし、キリッとした目のハーフらしき人物。

 それに、その高貴な態度から、貴族思わせるような人物かと思っていたが......ある意味で想像通りだったか。だが、それよりも何も、

 

 彼女もこの部活に興味があるのか!?


「それであんたはどこ出身なの?」

「…出身ってどういうことですか?」

「いや、出身って言ったら出身でしょ? 日本語だと他の意味でもあるの?」

「…いやないと思いますけど…と言うか、日本語だったって言ってましたけど、やっぱり、陣条さんって海外出身なんですか? ヨーロッパの方ですか?」

「一応、ドイツだけど......いや、そんなこと今は関係ないでしょ!!」

「それよりも出身よ出身!」


 ……出身か。どういうことだろう?

 日本に住んでいると言うことが聞きたいわけではないだろうし、自分の住んでる地域が知りたいというわけでもない気がするんだがな。


「一応ここら辺の地域の出身だが......俺に興味があるのか?」

「いや、そんなこと興味ないわよ!!」


 はぁ、と深いため息を吐きながら、何か考えるように目線を外す。そして、数分の時が経った後、口が開かれた。


「あんた自己紹介の時、異能に興味があるって言ってたわよね。」

「言っていた。男に言はないし、その言葉に俺の人生をかけても良いぞ。」

「いや、いらないから!! なんでそんなことにあんたの人生かけられなきゃいけないのよ。」

「俺にとってはそれだけ大切なことだったんだが...」

「……まぁいいや。じゃぁ、あんたこの学校に来た理由も異能に興味があって、この異能研究部に入りたいからって言ってたわよね。」

「はいそうです!! この学校にしかない研究部で自分の青春を見つけるために来ました!!」

「うるさいわよ。そんな選手宣誓みたいにしなくていいから!」


 また、深いため息をつき、思考に戻った。そこまで考えるほどのことが何かあるのだろうか。


「あんた、ここは異能研究部なのよ。」

「はい、知ってますよ。」

「なら、出身って言ったら何かわかるわよね?」


 結局最初の問に戻ってしまったが、ほんとに何が聞きたいのだろう.......いや待てよ!!


 ここは異能を研究する部活だ。普通の学校ならありえないようなことをしている部活だ。

 そんな場所なのに普通に入部届を出せば、普通に部活へ入れると思っていたなんて俺はどれだけ大馬鹿者だったのだろう。


 そう、これは試験なのだ。


 神聖な領域へと踏み入れさせるかどうかを見極める試練なのだ。

 なら、この問いに対して出すべき答えよは......


「俺は……………魔法、出身だ。」


 そう、何の異能を研究したいのかを問われていたのだ。

 ここで、何の異能を言うのかは重要になる。魔術や錬金術、妖術、降霊術、陰陽術、超能力、はたまた僕がまだ知らない何かか。

 正直、僕の中ではこれと言って決まった何かを学びたいということはなく、ある意味、異能であれば何でもいいとさえ思っている。

 だからこそ今は、本来は 明確に何かということを答えなければいけない言葉ではあるが、その何かはまだわからないため、今日の朝たまたま見ていた魔法アニメのところから魔法ということにしてしまった。


「へぇ〜あんたは魔法なのね。」

「はい、魔法です。」

「そう…なら勝負よ。」


 ………………えっ?


「だから、魔法出身って言うんだったら、私と勝負しなさい。」

「…いや、いきなりどういうことですか? 勝負って全然わかんないんですけど。」

「はあ〜勝負って言ったら勝負でしょ、異能勝負。」


 い、い、異能勝負だと!!………まさかこんなところで出会えるなんてな...

 

 異能勝負ーーそれは俺は幼少の頃からやっている伝統ある勝負だ。互いに自分の異能を見せ合い、迫力や詠唱のかっこよさ、芸術点などを考慮して勝敗を決める勝負である。


 まさか考えていたのが、自分以外にもいたなんてな。


「さぁ、勝負よ。成宮海斗。」

「……あぁ、わかった。勝負だ、陣条・アクア・ヴァイオレット!!」

「アクアじゃなくて、アリアよ!! 人の名前間違えるんじゃないわよ!!」

「あぁ、わかった。勝負だ、陣条・アリア・ヴァイオリン!!」

「だから、名前間違えんなって言ってるでしょ!!!!」


 これから始まる異能研究部、入部試験第二幕。その試験内容は、俺が昔からやっていた異能勝負。これを高校生活でできるなんて思わなかったんだがな...


 あぁ、高校生活万歳!!

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