第2話
「よろしくお願いします。」
ぱちぱちと拍手の音が教室内に響き渡る。
校門前で大声の宣誓をして先生方から少しお叱りを受けた以外は特に問題もなく、入学式やクラス発表も終わり、今はクラス内での自己紹介が行われている。
「初めまして、早乙女恵魔って言います。好きなことは……」
運が良かったことに恵魔とも同じクラスになれた。人と話すのが特別苦手というわけではないが、こういう新しい場所に知り合いがいるということはそれだけで精神的に幾分か楽になるものだ。
「……です。これから1年間よろしくお願いします。」
うん。いい自己紹介だったな。それにしても、やはり高校 だからと言うべきか、いろいろな人がいるし、何人か気になる人物もいる。例えば......
「
まず一人目はこの人、陣条・アリア・ヴァイオレットさん。黄金に輝くほどと言っていいくらいにきれいな金色の髪をツインテールにし、キリッとした目、海外の人であるのだろうと簡単にわかるほどに顔は整っており、血筋のようなものを感じる。
そして、何よりもその貴族を思わせるようなその風格。と言うか、実際にどこかの国の貴族ではないのかという噂もある。それが本当かどうかはわからないが、そういう噂が作られるだけの人物だってことだから、学校全体から見ても注目されているのは間違いないだろう。
服装も本当に俺らと同じ服なのだろうかと思わせるほどに細かい部分までしっかりと装飾がされており、そういうところからも噂が立っているのかもしれない。
――普通の人から見たら そう見えるのだろう。
「……というわけだから、よろしくね。」
そう今の説明から分かる通り、注目しているのは三つだ。西洋人的な顔つき、高貴な貴族を思わせるような振る舞い。そして、何よりも名前にミドルネームが入っていること。その点を踏まえると彼女はまさしく..............
古き時代から守られ続け、高度に洗練された由緒正しき力……魔術的なものを扱うような存在に違いない!!
「…はい。じゃあ次。」
すると、1人の少女が席を立ち上がり とことこと黒板の前まで歩いていく。そして、
「
次はこの人、田中楓さんだ。ボブの黒髪で、見た目も派手でなければ、服装にも何か こだわりがあるというようには見えず、真面目でいかにも……普通そうな人。
――普通の人から見たら そう見えるのだろう。
「……田中……わざわざ黒板の前にまで来なくても、自分の席でやってくれればよかったんだがな...」
「……そうなんですか。すいません 、知りませんでした。」
「いや、今までの生徒たちもみんな自分の席でやっただろう。」
……そう。この不思議ちゃんぽさがポイント なのだ!!
髪型も普通、髪色も普通、見た目も普通、服装も普通、話し方も普通。なのに、行動が読めないというアンバランスさ。これはまさに…………素晴らしい。
「……では、これから一年間よろしくお願いします。」
彼女の気になった点はただ1つ。この不可思議さ、ミステリアスさ、 Unbalanceさだ。
そんな彼女を表す言葉なら色々あるだろうが、俺にとってはまさしく……この世の原理 や常識に逆らった働きをする超能力者という言葉だろうか。
「…じゃあ次。」
「はい。」
静かだがクラス中の誰にでも聞こえる澄んだ声。
「初めまして、
そして、最後はこの人、菅原朝露さん。黒く長い髪に真ん丸な目。立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花と言わんばかりの日本人形のような美しさの中にも可愛さがある女性。そんな古式ゆかしき女性。
――普通の人から見たら そう見えるのだろう。
「……以上になります。皆様これから一年間仲良くしてくださいね。」
やはりと言うべきか 。名前に、顔つきに、服装に、目つきに、見た目に、話し方に……何をとっても古式ゆかしき女性である。
そんな彼女を表すとするなら俺にとってはまさしく……古くから密かにつながれてきた神の使いを思わせる陰陽師のようなものだろうか。
あぁ、高校生活万歳!!
やはり、高校は違うな 。入学してクラスで自己紹介をしただけなのに もうこんなにも優秀な人たちを見つけられた。
だが、見つけられただけで彼女たちの才能はまだ開花させられてはいないだろう。
なら、ここは異能研究者の一員であるこの俺が導こう!!
「…じゃあ次。」
「はい!!」
勢いよく立ち上がり、 一呼吸をおく。
「俺の名前は成宮海斗!! 好きなもの、好きな食べ物、好きなこと、好きな教科、好きなスポーツ、好きな季節 、好きな服、好きな色、好きな動物、好きな四字熟語 、好きな言葉.........すべてが異能に関することです!! 高校では自分だけの異能を見つけたいと思っていますので、一緒に異能研究をし、切磋琢磨できる仲間を募集しています。もし興味ある人がいたら是非 俺に話しかけてくれ。!!」
「これから一年よろしくお願いします!!」
……クラス内が静寂に包まれる。
――よし、つかみはバッチリだ!!
自分の話をしっかり聞いてくれるのかという気持ちから、少し緊張感がありながらも、臨んだ自己紹介であった。だが、中学とはやはり違うからかクラスのみんなが静かに話を聞いてくれた。人の話は真剣に聞き、呼吸が止まっているかのような錯覚を感じるほどの静寂に包まれる。
あぁ、高校生活万歳!!
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