能力を消す能力を持つ男、現実世界ではただの凡人。けども、異能少女達には強いようで。

アルケミスト

第1話

 みんなも一度くらいこんなことを考えたことはないか?


 もし、魔法が使えたら。

 もし、錬金術や魔術が使えたら。

 もし、超能力が使えたら。

 もし、摩訶不思議な力が使えたら。

 もし、能力を持った子供が生まれてくる世界だったら。

 もし、もし、もし.....


 考えれば考えるほど夢のあるもしもの話だ。

 でも、現実はそう甘くない。


 どれだけ体内にマナを取り込む呼吸法をしたって、心拍数が安定するだけだったし。


 いくら神との会話ができるブレスレットや魔法が使えるようになるツボを買ったって、お金がなくなるだけであった。


 コップの中に入った水にオーラのようなものを送ったところで、

 水の量が増えるわけでも、

 色が変わるわけでも、

 味が変わるわけでもなかった。

 

 結局、それはただの水に他ならないのだ。


 魔法もなければ、能力者もいない。

 錬金術も使えなければ、妖術も使えるわけがなかったのだ。


 だが、この世にマナや魔力、妖力、霊力などの存在が証明されてもなければ、否定されてもいないのも事実である。


「だからこそ、将来は魔法の研究者になりたいんだ!!」


「あんた高校生になってまで何馬鹿なこと言ってんの!!」


 入学式初日、玄関前で叫び出した俺こと、成宮海斗はいきなり母親から叱責を食らうという失態をしてしまった。

 だが、分かってほしい。この気持ちを抑えることなど俺にはできないのだ。それほどまでに異能と呼ばれるすべてを愛しているのだ。


「……本当に、あんたって子は....恵魔ちゃんに迷惑かけないでよ。」

「大丈夫だ、母さん!! 恵魔も興味持って話聞いてるから迷惑じゃないと思うよ。」

「いや、そういうことじゃないんだけど.....本当に気を付けなさい。あんたには恵魔ちゃんくらいしかいないいんだから。」

「大丈夫だよ、母さん。学校にも友達はいるからね。」

「だから、そういうことじゃ.なくて.....って、あんた、そろそろ恵魔ちゃん来る時間じゃない! 早く行ってきなさい。」


「そうだね。じゃ、行ってくる、母さん。」

「はい、行ってらっしゃい。」


 元気よく母さんに挨拶をし、勢いよくドアを開ける。すると、ちょうどチャイムを鳴らそうとしていた恵魔の姿があった。


「おう、おはよう、恵魔。」

「うん、おはよう。海斗君。」


 彼女の名前は早乙女恵魔、俺の幼馴染だ。髪は茶髪のボブカットで、目はたれ目で学校内では小動物系?と言われていた。どこにも動物の要素などなさそうなのにな。

 あと、言葉ではわからないかもだが、字で書けば、苗字はともかく名前にはあまり使われない漢字が使われていて、一言で言うと...........ものすごくいい!! この『魔』と言う字は魔法や魔術を思わせてくれるようなすごさがある。

 だから、俺はこの恵魔という名前が好きだ。」


「あはは…声に出てるよ、海斗君......でも、ありがとう。」

「うん、気にするな。」


 小さい頃はこの名前の良さが分からない馬鹿ガキ共からいろいろ言われていたが、俺がその良さを教えたことでそれもなくなって、今では楽しそうに過ごせているから良かった。


「……それでだな、この本に依れば、俺が今やっているマイにこそ体内のマナを活性化される効果があるらしくて...」

「うん。それで、海斗君にマナ?がつくならいいと思うよ。」

「だろ!!」

 

 こんなに会話をまともに聞いてくれるのも最近では恵魔だけになってしまった。

 中学に入りたての頃は男ならだれ対して話しても真剣に聞いてくれたし、俺の異能研究の手伝いもしてくれていた。

 だが、次第に、「俺はもう子供じゃねぇんだ。」とか「ガキの遊びはガキの時までにしとけって。あとで傷つくだけだぞ。」とか「お前ももう少し大人になれ。」だとか言われるようになっていった。

 そして、中学を卒業する時には誰もまとも聞く奴なんていなくなっていた。


 だが、高校ではそうはいかない!!


 そう。俺が入学するここ頂が原高校には異能研究部、通称イノ研があるのだ!!

 そう。俺が入学するここ頂が原高校には異能研究部、通称イノ研があるのだ!!

 そう。俺が入学するここ頂が原高校には異能研究部、通称イノ研があるのだ!!


 これは大事なことだから何回でも言おう。


 そう。俺が入学するここ頂が原高校には異能研究部、通称イノ研があるのだ!!

 そう。俺が入学するここ頂が原高校には異能研究部、通称イノ研があるのだ!!

 ~~~


 よし、とりあえずこんなもんでいいか。

 大切なことだからと何度も心の中で叫んでいく内に僕が通う頂が原高校に着いていた。


「よし!! これから……」


 校門前に仁王立ちし、大きく息を吸う。


「これから俺の青春仲間たちとの異能研究が始まるぞ!!」

「うん! 頑張ろうね。」


 まずは異能研究部に入り、同志たちに会う。そして、仲間たちとともに切磋琢磨しながら、俺は、俺の……異能を見つけるのだ!!


 こうして始まる成宮海斗の物語。


 だが、彼はまだしらない。

 彼が能力を消す能力を身に着けていることを。

 彼が通おうとしている高校のことを。

 彼がこれから出会おうとしている本物の異能力者たちのことを......


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