4 だいじょうぶにゃん!
二人が笑い合っていると、トントンと誰かが部屋の扉をノックした。
「はい?どなたですかにゃん?」
「私です、アンナです。
女の子の様子はどうですか?」
「ちょうど今、起きたところにゃん。」
「それはよかった。女の子、お腹空いてませんか?
おにぎり作って持ってきたんですけど?」
「ちょっとだけ待っててにゃん!
だって、スフィア、おにぎり食べるにゃよね?」
「わっ私、お腹、空いてないよ!」
「本当かにゃ…?」
「うっうん。だから…」
しかしお腹が鳴った。
「お腹空いてるんじゃ…?」
「・・・・・・怖いの…
お姉さん以外の人間に会うの…」
「だいじょうぶにゃん。
アンナちゃんは優しい女の子だから。」
「そうなの…?」
「うん!」
「わかった、お姉さんの知り合いだもん、わるい人じゃないって信じる…
でもいちよう帽子かぶってもいい…?」
「そんなことしなくてもだいじょうぶにゃん。」
「でっでも…私の角を見られたら…きっと…」
「その心配すらしなくていいのにゃん。」
「ほえ?それってどういう意味?」
「にゃはは…会ってみればわかるにゃん…
会えばスフィアも納得するはずにゃん…」
「・・・・・・わかった。」
「うん、アンナちゃん、待たせてごめんね、入ってきていいにゃん!」
「はーい!お邪魔しますね!」
「アンナちゃん、色々と、ありがとうにゃん。」
「いえいえ、好きでやってることなので。
初めましてですね、私、この宿の看板娘をしてます、アンナって言います。よろしくお願いしますね。」
「うっうん…私…スフィア…よろしく…」
「どうぞ、私が作ったおにぎりです。」
「あっありがとう…」
「それにしても何度見ても…」
「ゴクリッ。なっ何?…」
(やっぱり…この角見て…怖がってるんだよね…
そりゃそうだよね…)
「素晴らしいですね。」
「えっ?」
(思ってた反応と違う…?)
「こんなに可愛いらしい容姿をしていらっしゃるのに
少し、いかついその角があるっていう、このギャップがたまらないですね。
最高です!グヘヘっ、じゅるりっ♡」
「えっ…?」
「だから言ったにゃん…?
アンナちゃんなら、だいじょうぶだって…」
「あっあなたは私が怖くないの…?」
「怖くないですよ?むしろ可愛いです!」
「でっでも…私、角があって、普通の人間じゃないんだよ…?敵だとは思わないの…?」
「こんなに可愛い子を敵だと思うわけないじゃないですか!むしろ、仲良くしてください!」
「えっ!はっはい…?」
「よかった〜!」
「アンナちゃん、よかったにゃんね。」
「はい、えへへ。」
(この小さい女の子もニーナお姉さんと同じで
不思議な人間だなぁ…
角がある私を見ても怖がらないなんて…)
「さっ、遠慮せずにおにぎり食べてください。」
「あっうん…いただきます。」
スフィアはおにぎりを一口食べた。
「どうですか?お口に合いましたか?」
「うん、美味しいよ、なんだか、優しい味がする。」
「スフィア、泣いてるのにゃん…?」
「嬉しいの…私のことを受け入れてくれて、こんなに優しくしてくれることが…
今まで会ってきた人達は私のこの姿を見たら、怖がって、怪物扱いばかりだったから…
気がついたら涙が出ちゃった…ありがとう、ニーナお姉さん、アンナちゃん…」
「スフィア…」
「スフィアさん…」
「私、二人になら、心を許せる気がするよ。」
「そっかにゃぁ。」
ニーナはスフィアの頭を撫でた。
「ニーナお姉さん…?」
「それなら私も嬉しいにゃん。」
「私もです。」
「ありがとう…」
スフィアは照れながら笑ったにゃん。
私にはその姿が天使に見えてしかたなかったにゃん。
誰にゃん、この子のことを怪物なんて言ってた奴、絶対に許せないにゃん…
「私、昔の記憶を忘れちゃってるから…
あまり、覚えてはないんだけど…
お姉さん達みたいに優しい人間に
出会えたのはきっと初めてだと思うよ。」
「えっ!?」
「えっ!?」
「聞き間違いかにゃん…?
今、スフィア、昔の記憶がないって言わなかったかにゃん…?」
「ええ、私もそう聞こえましたよ…?」
「そう言ったよ?
私、ここ一週間ぐらいの記憶しかないの。
だから自分がどこで生まれて
今までどこで生きてたかも覚えてないんだ。」
「そっそんにゃことって…?」
私はスフィアの言葉を聞いて
ただ驚くことしか出来なかったにゃん!
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