5 この子を幸せにしてみせるにゃん!

「あっでも、スフィアさん!

 覚えてることもあるじゃないですか!

 ご自分の名前を「スフィア」だって言ってましたよね!」


「にゃ、確かにそうにゃん!

 スフィア、名前だけは覚えてたんだにゃん?」


「あのね…名前を覚えてたわけじゃないんだ…」


「違うのかにゃん?」


「うん…」


「じゃあ、スフィアさんはどうして名前を…?」


「これなんだ…」


スフィアは自分のつけていたペンダントを首から外して

写真入れの中から折りたたんであった小さな紙切れを出すと

それを二人に見せた、するとその紙切れには文字が書いてあって…


"あなたの名前はスフィア。

 どうか、忘れないで。"


「私はこのペンダントを最初から持っていたの。

 だから、これを読んだ時に私は"スフィア"って名前なんだってすぐ理解出来たんだ…」


「にゃるほど、それでにゃのか…」


「でもなんだか不思議ですね…?

 この"どうか、忘れないで。"って言葉…

 まるで、スフィアさんが記憶を忘れるのをわかっているみたいじゃないですか…?」


「うん、私もそこが引っかかったにゃん?」


「これを書いた人はスフィアさんがなぜ昔の記憶を忘れたのか、何か知ってるってことなんでしょうか?」


「ねぇスフィア?これを誰が書いたかは…」


「わからない、ごめんね…?」


「にゃにゃ!スフィアが謝ることないにゃん!

 記憶が思い出せなくて、一番辛いのはスフィア、本人にゃんだから!」


「そうですよ、謝らなくていいんです。」


「でっでも、迷惑かけてるから…」


「迷惑じゃないにゃん!

 私は自分から進んでスフィアのためにしてあげたいと思ってるのにゃん!」


「私もですよ!スフィアさん、遠慮なく頼ってください!」


「ニーナお姉さん…アンナちゃん…」


「スフィア、聞いてくれるかにゃん…?」


「うん…何?」


「記憶を取り戻すまででもかまわないから

 それまで私と一緒にいよう?駄目かにゃん…?」


「・・・・・いいの…?」


「もうスフィアに寂しい思いや

 悲しい思いはさせたくないんだにゃん!」


「ニーナさん…」


「何があってもスフィアの味方でいる!

 私が絶対にスフィアを守るにゃん!だから!」


「うぐっ…うぐっ…」


スフィアはニーナの言葉を聞いて、涙が止めどなく溢れながら、人間達から逃げている時の事を思い出した。


"怪物を逃がすな!"


"殺せ!誰かが殺される前に殺すんだ!"


『ハァハァ、いやだよぉ、殺されたくないよ…』


追いかけてくる村人達から、泣きながら必死に逃げるスフィア…


『ここまで来れば、だいじょうぶだよね…

 うっう…どっどうしてぇ…どうして誰もわかってくれないの…?

 私はただ人間と仲良くなりたいだけなのに…

 うっう…誰か…私の存在を許して…私と一緒にいて…』


【誰か、私をこの孤独から救い出して!!】


「スフィア…?」


「うっうん…よろしくね…ニーナお姉さん。」


「スフィア!!」


ニーナはスフィアを抱きしめて、涙をポロポロ流した。


「これからよろしくにゃぁ!」


「こっちこそだよ。」


「にゃぁ〜!!」


「ふっふ、ニーナお姉さんったら私より泣き虫だなぁ。」


「これじゃ頼りないかにゃん…?」


「そんなことないよ。むしろ可愛い、天使みたい。」


「にゃはは、からかって。」


「えへへ。」


(絶対にこの子を幸せにしてみせるにゃん。)


私はスフィアの笑顔を見て、心の中で強く誓ったのにゃん。


そして二人の無邪気に笑い合う姿を見て、アンナはというと…


(二人とも絵になるなぁ♡ニーナさんとスフィアさんまるで本物の姉妹みたい♡

 お揃いのコスプレ衣装とか着せたりしたいなぁ♡

 たとえばあれとか…これとか…じゅるり♡

 考えただけで…グヘヘ、グヘヘ♡)


二人からコスプレ衣装のインスピレーションをもらっていたのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る